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【外国企業の日本戦略】日本IoT市場にまだ伸びしろ 【第7回】台湾アドバンテックが見据える成長

台湾に本拠を置く産業用コンピューター世界大手の研華科技(アドバンテック)は、1997年に日本へ進出。2010年からモノのインターネット(IoT)関連事業に注力している。従来のハードウエアに加え、ソフトウエアプラットフォームの提供やパートナーとの協業加速で「IoTカンパニー」として頭角を現しつつあり、日本法人の売上高は過去5年で約3倍に増えた。アドバンテック日本法人のマイク小池社長は、スマートシティー化推進や安倍政権によるインダストリー4.0(第4次産業革命)の後押しなどを背景に「日本市場はまだ大きな可能性を秘めている」とみる。

「ハード・ソフト両方を含め、IoTソリューションとして提供できるのが圧倒的な強み」と語るマイク小池社長=東京(NNA撮影)

「ハード・ソフト両方を含め、IoTソリューションとして提供できるのが圧倒的な強み」と語るマイク小池社長=東京(NNA撮影)

1983年に設立されたアドバンテックは、主に製造業向けの組み込み型コンピューターや工業自動化(FA)設備などを手掛けており、産業用コンピューター分野での世界シェアは約3割。2010年にインテリジェント・システムの普及を目指す「インテリジェント・プラネットの実現」を方針に掲げ、本格的にIoT関連事業に参入した。

収集したデータをクラウドサービスで活用するソフトウエアプラットフォーム「WISE―PaaS」などを提供する傍ら、自社のハードと他社のソフトなどを組み合わせて新たなソリューションを生み出す事業にも力を入れている。

16年には日本IBMと、IoTプラットフォームやソリューションの提供における協業を発表。さらに独ボッシュグループの子会社ボッシュ・センサーテック、スイスのセンサー大手センシリオン、日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)とIoTセンサープラットフォーム「M2.COM」で提携したほか、米マイクロソフトから「マイクロソフト・グローバル・IoTバリュード・パートナー」の認定を受けた。

今年に入ってからも三菱電機のFAパートナープログラム「e―F@ctory Alliance(イー・ファクトリー・アライアンス)」への加盟や、京セラコミュニケーションシステム、日本ラッドなどとの協業を相次ぎ決めている。

工業自動化の波に加え、IoT化の加速を追い風に、アドバンテックの16年売上高は前年比10.5%増の420億200万台湾元(約1,508億円)となり過去最高を更新。日本法人単独の売上高は非公開だが、伸び幅では国・地域別で最大を記録したという。

■売上高、5年で約3倍

マイク小池社長が就任した12年以降、日本法人の売上高は約3倍となり、従業員数も約2倍に増えた。「市場開拓を進めた関西での売り上げ増やサービスセンターの設立により、日本の大手企業が品質や技術、サポートを高く評価してくれるようになったことも大きい。品質面でも日本企業が要求する基準に応えられる体制になっている」。また本社がセクタリード体制(事業部制)を採用したことに合わせ、マイク小池社長がこれまでのグローバル企業での経験を生かして「それぞれ違うバックグラウンドの強みを発揮し、スピード感を持って仕事ができる“グローバルスキル”を持った人材の育成に努めた」ことも業績の伸びを支えたという。

マイク小池社長は、日本市場にはまだ成長性があるとして、ビジネスチャンスの多さを強調。「日本の国内総生産(GDP)は伸び悩みがささやかれているが、それでも約500兆円と国として見れば規模は大きい。東京五輪を前にしたスマートシティー分野の成長に加え、安倍政権が成長の課題にインダストリー4.0を挙げていることも追い風になる」と指摘する。

「中小企業が多く、地方財政が困窮する今の日本でこそIoTは解決策となり得る。IoTを活用しやすい監視や予知・保全などの分野で、これまで人手が必要だった工程を遠隔操作できればコスト削減につながる」。さらに日本の少子高齢化によって「人がいなくても仕事ができる環境を作る、もしくは人の生産性を上げる必要性が高まる」ことも、IoT化を後押しするとみる。

このほか製造業向けでは、設計・量産受託サービス(デザイン&マニュファクチャリングサービス、DMS)事業の拡大にも期待を寄せる。

「ものづくりの分野で日本企業が、デザインやコストパフォーマンスだけでなく、地政学的にも優れた台湾企業の能力を活用しない手はない。これまで日本のメーカーで主流だった『全て自前で一貫生産する』考え方は、IoT化の中で転換期を迎えつつある。少し前の米国では、企業がサービスとサポートに特化し、ハードは可能な限りデザインサービスを使う流れがあった。日本でも同じような流れが生まれてくるのではないか」。実際、DMS事業は年20%程度のペースで伸びているという。

「台湾には、明治維新の頃から日本を強くした精神、日本の伝統的な良さがまだ残っている。日本と台湾の連携はもっとPRされていい」

■「匠」重視の日本

IoTによりアジアの製造業が大きく変化する一方、日本市場が持つ独自性も浮き彫りになっている。中国やドイツ、米国と比べて日本はIoT化の遅れがささやかれるが、マイク小池社長は「後れを取っているというより、アプローチが異質だと感じる」と指摘する。

ビッグデータを重視する米国、工場そのものが持つ力を重視するドイツなどと比べ、「日本はエンジニアのノウハウこそが他を制する、という見方が強い」。匠(たくみ)の技が重視される日本ならではのやり方で、業界ごとに蓄積された知識に基づき、IoTを活用して技術者のノウハウをどう開花させるかが課題になっているという。

マイク小池社長は「企業が持っていても、表に情報として出てこないノウハウがある。どこも『カイゼン』の延長の中で多種多様な経験を積み重ねているだけに、今後はそれをどうIoTにつなげていくかが鍵だ。IoTはやってみなければ分からない“アクティブラーニング”の世界。経営者はノウハウを持っているエンジニアなどの人材に、新しいチャレンジの場を与えてほしい。アドバンテックはプラットフォームやスターターキットを用意しており、いつでも応じる準備はある」と、声に力を込める。

■47都道府県で「種まき」

アドバンテックはIoT市場の成長段階を、ハード中心のフェーズ1、ソフトやクラウドが加わったプラットフォーム中心のフェーズ2、システムインテグレーター(SI)を中心に事業領域ごとに焦点を当てたクラウドサービスのフェーズ3に分けて定義している。「今後はフェーズ3がどう起こってくるかがポイント。この分野においてパートナーとのコラボレーションをさらに進めていくことになる」。その中で事業領域ごとのIoTサービスを実際にどう行うか、能動的に取り組んでいく計画という。

マイク小池社長は今年2月から、47都道府県全てを訪れてIoTに関するセミナーを開催する「IoT47」プロジェクトを始めた。過疎化や産業の衰退、企業の海外進出の遅れなど、地方が抱える問題は深刻さを増している。その一方、長年にわたり活躍する企業も多く存在することを視野に、IoTを取り巻くテクノロジーの最新情報やIoTソリューションを地方で紹介し、新たなビジネスの創出につなげるのが狙い。

アドバンテックは世界23カ国・地域の94都市に拠点を展開。東京本社は昨年12月に自社ビルを購入した=東京(NNA撮影)

アドバンテックは世界23カ国・地域の94都市に拠点を展開。東京本社は昨年12月に自社ビルを購入した=東京(NNA撮影)

石川県金沢市を皮切りに、これまで長野、静岡、兵庫などのほか、6月には横浜市でも実施。「アイデアの種をまいて回る仕事だが、反応は大きい」という。「例えば新たにビルが建った場合、建物をどうIoT化するか。小売りであればIoTをどう活用して最新の売り場を作るか。各地に現場の人間しか分からないアイデアの種が眠っており、見方を変えれば可能性は無限にある」。今後は四国や九州での開催も視野に、日本各地の企業との連携を強めていく方針だ。

日本法人設立から今年で20年。本社の日本法人に対する、向こう20年への期待は大きいという。今後は東京本社のほか名古屋、大阪の拠点でそれぞれ人員を増やしていく予定。新拠点の設立も視野に入れている。アドバンテックグループ全体の売上高に占める日本の割合は今のところ6~7%。マイク小池社長は「まずは、この割合を約2倍の12%まで引き上げたい」としている。(菅原湖)


関連国・地域: 中国香港台湾韓国タイベトナムミャンマーカンボジアラオスマレーシアシンガポールインドネシアオーストラリアインド日本
関連業種: IT・通信

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