国連の持続開発、日本語版企業事例が発刊

国際連合が2030年までに目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に向け、企業の取り組みを紹介した日本語版事例集がこのほど刊行された。SDGsへの取り組みが投資判断の基準となるケースが増えているが、日本企業はSDGsをCSR(企業の社会的責任)活動の一環としか考えず、ビジネス機会と捉える動きはまだ鈍いようだ。発刊を記念したシンポジウムがこのほど、東京都内で開催され、こうした課題や企業の活動事例が紹介された。

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SDGsの取り組みが紹介されたシンポジウム=東京(NNA撮影)

SDGsは、01年に策定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継とされる。格差や人権、自然環境といった地球的な課題に対して、発展途上国のみならず先進国や企業が取り組むもので、15年9月に国連で採択された。今回発刊されたSDGsの手引き書とも言える事例集は、「SDGインダストリー・マトリックス」と名付けられ、日本や世界各国の企業の取り組みが紹介されている。

■「SDGs、経営からの取り組みを」

持続可能な開発を目指す企業・団体が加盟する一般社団法人、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の有馬利男代表理事は10日に開催されたシンポジウムで、「日本企業の決算報告でESG(環境、社会、ガバナンス)が話題に上がり、企業も持続可能な社会・環境を意識しつつある。しかし、CSRの部署の取り組みという認識が根強く、経営企画や営業部での認知度はまだまだ低い。各社はライバル企業との価格競争を強いられる中で、持続成長と両立できるのか。SDGsを経営の観点から捉えるべきだ」と訴えた。

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富士ゼロックス元社長でもある有馬氏は、SDGsなど持続可能な開発に関する取り組みを行う国連グローバル・コンパクト(UNGC)のボードメンバーを兼ねる。国連グローバル・コンパクトには世界中の企業・団体1万3,000以上が参加。人権、労働、環境、腐敗防止の4分野を軸に活動している。この日本組織であるGCNJには今年2月時点で、241企業・団体が加盟している。

■印スズキは現地調達、インベブは有害アルコール低減

SDGsには貧困削減や製造・消費の責任、衛生など17項目の目標がある。KPMGあずさサステナビリティの渡辺敦子氏は、SDGインダストリー・マトリックスに掲載された各社の事例を紹介。「自社の事業で関われそうなところから目標を決めて取り組めば良い」と語った。

ビールのアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は25年までに全市場でアルコールの有害な利用を10%低減する目標を掲げる。このほか、販売するビールの20%を低アルコールまたはノンアルコールにするといい、アルコールがもたらす害悪を低減しようとしている。

同業のハイネケンは農村支援を目的に、20年までに農業原料の60%を現地で調達する目標を掲げる。SDGsのスキームを通じて、同業との横のつながりが高まるメリットもあると、渡辺氏は指摘する。

自動車業界は、温室効果ガスの削減以外にもSDGsに関われる。インド自動車最大手マルチ・スズキは、金額ベースで78%の部品を同社から100キロ圏内で調達。現地調達率向上によって、貧困レベルの高い地域で雇用を創出し、現地サプライヤーの能力開発に寄与するという。

インテルはシリコンウエハーの洗浄に大量の水を使うため1998年以降、同社の節水事業に2億2,000万米ドル(約253億円)を投資し、480億ガロン(約1,824億リットル)を節水した。このように、SDGsが策定された2015年以前の取り組みについても、企業のSDGsの取り組みとして発表しても構わない。

SDGインダストリー・マトリックスの日本語版は以下のウェブサイトからダウンロードできる。現時点では「食品・飲料・消費財」「製造業」「気候変動対策」「金融サービス」の4分野の事例が紹介されている。

http://www.ungcjn.org/activities/topics/detail.php?id=204

シンポジウムは国連広報センターとKPMGあずさサステナビリティなどが主催し、約260人が参加した。企業の取り組み事例として衛生用品のサラヤのほか、MS&ADインシュアランスグループ、LIXIL(リクシル)、旭化成の4社が発表した。

<関連ウェブサイト>

・シンポジウムのプレゼン資料(4社の取り組みを含む)

http://ungcjn.org/activities/topics/detail.php?id=205

・GCNJ加盟の日本企業のリスト

http://ungcjn.org/gcjn/state/index.html

・SDGsの17項目と詳細について

http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sdg/post-2015-development-agenda/goal-17.html


関連国・地域: 日本
関連業種: 経済一般・統計自動車・二輪車食品・飲料製造一般電力・ガス・水道社会・事件

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