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《ワイドリポート》NNA編集長が語る「アジアはTPPをどう見るか」

エヌ・エヌ・エー(NNA)は9月29日、汐留メディアタワーでNNA倶楽部アジア会~広報編~を開催した。企業の広報担当者、約40人が参加した。

第2部「アジアはTPPをどう見るか」では、横断企画「TPP アジアは大貿易時代にどう向き合うのか」の担当者がパネルディスカッションを行った。本企画は、7月に第1部の「各国の経済への影響」を8回、8月に「小売り編」を3回掲載。9月28日から「繊維・東アジア編」を掲載中。

参加者

モデレーター 竹内知則(編集部長)

パネリスト 長野雅史(編集委員室長)、小堀栄之(ベトナム版編集長)、齋藤眞美(マレーシア版編集長)

竹内:この企画の発案者の小堀編集長から経緯について。

小堀栄之編集長(NNA撮影)

小堀栄之編集長(NNA撮影)

小堀:15年10月にベトナムに赴任した時、TPPの大筋合意があった。驚きだったのが、ベトナムがTPPにより一番利益を得て経済成長が促進されると、地元メディアが大きく報じていたこと。日本では「TPP亡国論」という論調が多かった。TPPに対する違う姿、期待のされ方があることが分かった。マレーシアやシンガポールはどんな反応なのかを探るのが企画のきっかけ。

齋藤:マレーシアにはペトロナスなどの国有企業が多くあり、また所得の低いマレー系住民を保護するブミプトラ優遇政策があり、TPPに入ることで規制が緩和されてしまうと反発があった。貿易には積極的で、日本とはEPA、ASEANやオーストラリア、ニュージーランドとはFTAを結んでいる。経済成長のためにはTPPに入ることが不可欠と当局が強く動き、反発を押して16年の年明けに国会で批准に向けた動議の可決まで持っていった。

長野:中華圏は、TPPは中国なしではどうなんだ、という見方をしているのが本音のよう。台湾は非常にTPPに入りたいと考えている。台湾は貿易立国だが、FTAに加盟している国が少ない。現状はシンガポールなど7か国。これは、台湾と国交を結んでいる国が少ないことと、他の国とFTAを結ぼうとすると中国が圧力をかけてくるためだ。そこにメガFTAであるTPPができたのでぜひとも参加して、世界の貿易自由化の波に乗りたいと。台湾がTPPに入れるかは、中国とアメリカの支持が重要で、ここは不透明。

小堀:TPPに参加していないインドネシアはベトナムをライバル視しており、焦りを感じている。インドネシアは第二陣として参加したいという強い意向を持っている。

斎藤:シンガポールは関税をほとんど撤廃しており、TPPに入ることによる恩恵はないようだが、タイがもし入った場合は、競争相手として脅威になるという声が聞かれた。

小堀:タイはシンガポールに比べるとオフィスを構えるコストが低いので有利に働くのではと言われている。

竹内:米大統領選の候補者がTPPに反対を表明しているほか、各国共、批准がずれ込むとの見方があるが。

小堀栄之編集長(左)と齋藤眞美編集長(右)(NNA撮影)

小堀栄之編集長(左)と齋藤眞美編集長(右)(NNA撮影)

斎藤:マレーシアは貿易産業省の次官が当初の予定の18年の批准に向けて必要な国内法の改正を進めると明言している。

小堀:ベトナムは現時点の予測は、18年は無理でも20年くらいの発効を目指すという見方をしている人も結構いた。

竹内:規制緩和という部分では各国はどういう反応か。

斎藤:日本の利点は、マレーシア国内への事業参入が一部の分野で規制緩和されること。例えば、コンビニの出資が上限30%まで可能になった。ただ、出資先はコンビニを経営する企業であってはいけないという縛りがある。

小堀:ベトナムでは小売店の2店目以降の出店は、「エコノミックニーズテスト」で地域に与える影響を政府が審査するという悪名高い規制があるが、TPPへの加入で規制がなくなる。

竹内:特集第3部で扱った繊維業界の動きはどうか。

小堀:数年前から韓国、台湾、中国から繊維の大型の投資がベトナムに集まり、アジアのハブになりつつある。TPPの原産地規則は、原料から洋服を作るまで3工程を参加国の中で行わなければならないという縛りで、非常に厳しい。中国産の原料を排除する狙いがあると言われている。

長野:繊維産業は中国からベトナムにシフトしており、それに引っ張られて台湾もベトナムに来ているという状況がある。

竹内:日本でTPPの報道と言えば農業分野だが、台湾ではどのように扱われているのか。

長野雅史編集員室長(NNA撮影)

長野雅史編集員室長(NNA撮影)

長野:台湾がTPPに入ったら農業生産は7%ほど落ち込むのではと言われている。農業はGDPの2%以下に落ち込んでおり、米国などから豚肉などがどんどん入ると、台湾の農産物は壊滅するのではと懸念されている。政府の農業予算の多くが農民向けの福利厚生に使われ、割と保護されている。それを打開するために、逆にTPPに入ったらもっと付加価値のある農業を育てていこうというきっかけになるのではという議論もある。

小堀:韓国、インドネシアも農家からの反対は非常に大きいと言われている。アメリカのメジャーと競争することになるので、そこの保護はどうなるんだと反対が強い。

齋藤:マレーシアは米だけは自給率を守ろうと保護してきたが、TPPの発効後10年をかけて今の40%の関税を0%まで下げると言っている。日本食の人気でマレーシアの日本米の需要が3年間で10倍以上伸びている。関税の撤廃で日本米の需要がさらに高まることが予想される。それを睨んで販売のライセンスを取ろうという日系の事業者もたくさんいると聞いている。

小堀:ベトナムの農家は古い設備で、小規模な農家が多い。これから競争になった時にタイなどに勝てないことから、高付加価値化で勝負していくしかないのでは。日本の農機具メーカーの商機が大きいのではないか。

齋藤:マレーシアはTPP発効に伴って、日本からの米だけではなく、ベトナムから来る米も関税撤廃となる。最近ベトナムでおいしいジャポニカ米が栽培され、それが既に輸出されてマレーシアに来ているという情報もある。それが日本から輸入されるコシヒカリなどのコンペティター(競合)になっているような状況も起きつつある。

竹内:日本の報道では農業分野で悲観的な見方が多く、コンペティターとしてベトナム産ジャポニカ米も出てくるなど難しい面もあるが、そうした現象こそが日本ブランドが強いという証明だろう。NNAとしてもTPPの農業分野を注視していきたい。


関連国・地域: 日本
関連業種: マクロ・統計・その他経済

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