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半導体人材の不足深刻に 大学は育成へ「学院」設置

台湾の半導体産業で深刻な人材不足が問題となっている。人工知能(AI)や第5世代(5G)移動通信システム、メタバース(仮想空間)など新しい技術の普及・進展に伴い、半導体への強い需要が続いていることが背景にある。台湾の大学は「半導体学院」を相次いで開設し、専門人材の育成を図っているが、短期的に解消は難しい状況にある。台湾の半導体人材を取り巻く現状を報告する。【卓吟錚、安田祐二】

清華大が開設した半導体学院=新竹市(NNA撮影)

清華大が開設した半導体学院=新竹市(NNA撮影)

台湾の人材紹介サイト大手「104人力銀行」が発表したリポートによると、2021年第4四半期(10~12月)の台湾の半導体産業における月間平均求人件数は3万4,000件に上り、7年来で最高水準に達した。半導体産業の有効求人倍率は19年12月が2.3倍、20年12月が2.6倍、21年12月が3.7倍で推移。21年12月時点の求職市場全体の有効求人倍率は1.7倍となっており、半導体関連企業の採用意欲が高いことが分かる。

半導体人材の不足に直面する中、昨年10月以降、台湾大と清華大、陽明交通大、成功大は半導体学院を相次いで開設した。半導体学院では半導体の設計や製造プロセス、封止、材料などの分野を取り扱うが、特に重点を置いているのが半導体産業の将来を担う高度人材の育成だ。

このうち成功大の半導体学院はAIやビッグデータ、環境、持続可能性、スマート製造などに関する内容を学習課程に組み込む。半導体製造における温室効果ガスの排出削減の重要性が増しているためだ。成功大半導体学院の許渭州執行副院長は「いかにエネルギーを効率よく使用するかは半導体産業にとって非常に重要なテーマとなっている」と強調する。

一方、清華大はリーダーとなる人材の育成に注力する。協力やコミュニケーション、調整など組織運営で求められる能力を高めることを目指しており、清華大半導体学院の張世杰副院長は「学生は特定の研究テーマを深く究める能力を持っている。ただ、上司に注目や投資すべき事項を説明し、理解を得るには個人の論述能力が求められる」と強調する。

このほかに半導体学院ではハイテク産業の幹部による講義を行い、学生に設備や製造プロセスの進展について理解を深める場を提供するほか、実習の機会なども設ける。

■需要に追い付かず

清華大半導体学院の張世杰副院長。同大はリーダーとなる人材の育成に力を入れる(NNA撮影)

清華大半導体学院の張世杰副院長。同大はリーダーとなる人材の育成に力を入れる(NNA撮影)

もっとも、半導体学院はこうした高度人材を短期間で大量に育成できるわけではない。1年間に輩出する人材は4校合わせて約400人と、需要には追い付かないのが現実だ。台湾の少子高齢化という社会構造も踏まえ、人材に関する長期的計画の策定は喫緊の課題となっている。

ただ、求められているのはこうした高度人材だけではないようだ。許氏は「確かに人材不足は深刻だが、求められるレベルはさまざま。中には研究開発(R&D)を行う人材もいるが、半導体大手が多く雇用しているエンジニアはそうした高いレベルの仕事を求められるわけではない」と話す。

こうした中、成功大はさまざまな業務に対応できる人材を育成しようと、南台科技大や崑山科技大、高雄科技大などと共同で半導体課程を開設。学生は受講を通じて単位の証明を取得できるだけでなく、技術職系人材としての素養を高めることができるという。

台湾の半導体企業が海外に工場を構えることで不足を補う方法も指摘されるが、許氏は海外での工場建設はコストを一層増やす可能性があり、必ずしも企業ニーズには合致しないとの見方を示す。現地のインフラ建設に当たって支援を受けられるか、現地で専門人材を確保できるかなど考慮しなければならない事が多いといい、「会社の状況に基づいて評価するべきだ」と述べた。

成功大半導体学院の許渭州執行副院長。同大では環境や持続可能性などに関する内容を学習課程に組み込む(NNA撮影)

成功大半導体学院の許渭州執行副院長。同大では環境や持続可能性などに関する内容を学習課程に組み込む(NNA撮影)

一方、台湾の半導体業界では近年、中国企業による人材の引き抜きが取り沙汰されてきた。台湾の集積回路(IC)設計大手に勤めるエンジニアによると、数年前に一部の同僚が中国企業に引き抜かれ、年収は最高で同社と比べて5倍程度に増えたという。台湾の半導体封止・検査大手の関係者は「能力のある人が転職をすることは悪いことではない」と理解を示す。

ただ、半導体業界の関係者は「ここ2年ほどこうした状況は落ち着いている」と明かす。中国企業は好待遇で人材を引き付けるものの「中国では政策がたびたび変わり、不確実性が高い」と指摘。中国企業に転職した後、台湾に戻ろうとしても「台湾企業は情報の漏えいなどを警戒し、採用しようとしないだろう」と明かした。

■「日系も採用苦戦」

台湾の半導体業界では好調な業績が続く中、人材を引き留めるため大幅に賃上げをする動きが出ている。ファウンドリー(半導体の受託製造)世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の劉徳音董事長は今年3月、例年4月に行う賃金の見直しについて、「今年の上げ幅は誰もが喜ぶ水準になるだろう」と話した。

台湾のIC設計大手に勤めるエンジニアによると、同社は今年の賃上げ幅を例年と比べて高水準に設定したという。給与面での競争力を維持するためだ。

台湾で事業を行う人材紹介会社の関係者は「半導体需要が高まる中で、日系、台湾系、外資系を問わず企業は採用を増やしたい状況にあると思う。ただ、日系企業は給与面で台湾企業との差が大きく、採用に苦戦している」と明かす。

清華大の張氏は新興ハイテクがもたらす商機によって半導体不足は続き、人材不足を2年以内に改善するのは難しいとみている。「企業は海外人材を雇用する以外に、異なる分野の人材を雇用し、内部で研修を行う方法も考えるべきだ」と提言する。成功大の許氏はスマート製造やAIなどを導入し、省力化を進めることも、企業が将来取り組まなければならないことの一つだと指摘した。

成功大の半導体学院が入る建物=台南市(NNA撮影)

成功大の半導体学院が入る建物=台南市(NNA撮影)


関連国・地域: 台湾
関連業種: IT・通信マクロ・統計・その他経済雇用・労務社会・事件

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