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【食とインバウンド】コロナ下でのハラール対応の現状

第32回

新型コロナウイルスの感染拡大に対し、WHO(世界保健機関)が緊急事態宣言を出してから2年が経過しました。その間、本コラムでは特にプラントベース(植物性由来)食品に注目してきましたが、今月はハラール(イスラム教徒も消費できる)を考察します。間もなく始まる今年のラマダン(イスラム暦の9月)を前に、日本と海外の状況について見てみましょう。

■海外では日本への評価が変化

昨年7月、ムスリム(イスラム教徒)旅行市場でちょっとした話題がありました。近年高かった日本への評価が大きく落ち込んだのです。GMTI(グローバルムスリムトラベルインデックス)(※1)は、世界140の国と地域を対象に「ムスリムフレンドリー度」をランキングするもので、昨年2年ぶりに発表されました。その中で日本は、OIC(イスラム協力機構)非加盟国カテゴリーで13年の23位以来上げ続けてきたランキングを初めてダウン、前回の3位から7位に沈みました。

GMTIは4カテゴリー・11項目について40のデータを用いてランキングを算出しています。これまで日本はアクセスや環境などが高く評価されてきた一方で、サービスやコミュニケーションが他国に劣ると評価されてきました。それが21年はランキングで抜きつ抜かれつの状態にあった台湾や英国の後塵を拝する結果となりました。ムスリム旅行者にとって人気の旅行先であった日本ですが、他国に劣る部分を克服できないうちに評価を落としてしまったのです。

順位が落ちてしまったのは仕方ないとして、問題はここからどう巻き返すかです。GMTIでは「ムスリム旅行市場は23年までには新型コロナ前の19年の水準へ戻る」と予測していますので、まだ時間はあります。そんなムスリムを含む訪日旅行客が最も楽しみにしているのは食です(※2)。ムスリムの食と言えばハラール。数年前まで対応が声高に叫ばれたハラールですが、コロナ禍を経てどういう状況にあるのでしょうか。

■国内ではハラールが定着してきたか

日本在住および訪日ムスリムがハラール対応している店舗を検索するのに使っているのがウェブサイト「ハラールグルメジャパン」です。同サイトおよびアプリは「ハラール認証を得ている店舗」だけでなく、「(認証は得ていないが)豚由来の食材は使っていない店舗」や「ベジタリアンメニューを提供している店舗」などを見つけることができます。

図は17年2月と今月の同サイトおよびアプリに登録されている店舗の内訳を示しています。飲食店はコロナ禍で厳しい経営環境が続いていますが、全ての数字が増えているのが確認できます。実際いくつかの店舗にヒアリングしたところ、訪日客が多かった店舗はコロナの影響が大きいものの、もともと在住者の来店が多い店舗の影響は少ないとのこと。もっとも、そうした常連客でもイートインで来店される方は少なく、代わりにデリバリーやテークアウトでの利用が増えているそうです。

こうした「客足はそれほど減っていない」という店舗には共通点があります。それはお客様のリクエストに柔軟に対応している点です。具体的にはハラールやベジタリアン(菜食主義者)メニューを特別食扱いしない。予約制ではなくいつでも注文できる。人数制限なく何人からでも注文OKといったもの。お客様からしてみれば当然の対応ですが、残念ながら「ハラールやベジタリアンは外国人の方が召し上がるもの」と考えている店舗が今でも少なくありません。それゆえ、上記のような制約条件がないムスリムにとってフレンドリーな店舗は、ハラールでもベジタリアンでも(中にはアレルギー対応も)といった、いわばダイバーシティ(多様性)対応ができているのです。

■インバウンド回復中のドバイ

コロナ禍で強力な入国制限を続ける日本をよそに、観光客を積極的に受け入れているのがドバイです。ドバイでは一年遅れで始まったドバイ国際博覧会(万博)が佳境を迎えており、近隣の中東諸国のみならず欧州からも訪問客を集客しています。万博は3月で終了しますが、同地のホテルは今年一年を通じて現状の80%稼働が続くと予測しています。4月にはラマダン、11月にはサッカーワールドカップがカタールで始まるからです。

ラマダンといえば日本では飲まず食わずの苦行をイメージしますが、ムスリムにとっては真逆です。一年で最大の行事で、中には「神様を最も近くに感じる期間だ」と言う人もいます。そうした神聖な期間をかつては家族と共に過ごしていましたが、昨今は海外で過ごすラマダン旅行が人気になっています。それがコロナ禍を経て海外で過ごしたいニーズが増えており、ドバイはそのニーズを取り込んでいるのです。

私は日本でラマダン旅行をPRしている例を知りません。一方、日本へラマダン旅行に行ってみたいというムスリムの声はよく聞きます。その理由は「イスラムではない国でのラマダン体験」だそうで、それには「食とお祈りスペースとちょっとした配慮」で十分だそうです。サービスとコミュニケーションが改善点とされる日本ですが、飲食店舗がそうであったように、いち早く対応した事業者は新たな市場を獲得する機会にできるでしょう。ちょっとした配慮については改めて解説したいと思います。

※1:Mastercard-Crescent Rating, Global Muslim Travel Index 2021

※2:「訪日外国人の消費動向 2019年年次報告書」観光庁

<プロフィル>

横山 真也

フードダイバーシティ株式会社 共同創業者

プラントベースジャパン株式会社 共同創業者

キャリアダイバーシティ株式会社 共同創業者

ヨコヤマ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役

2010年日本で独立開業後、12年シンガポール法人を設立。14年ハラールメディアジャパン株式会社(現フードダイバーシティ株式会社)、19年フリーフロム株式会社(現プラントベースジャパン株式会社)、20年キャリアダイバーシティ株式会社を共同創業。
日本と海外での500社以上のプロジェクトマネージメントが評価され、16年シンガポールマレー商工会議所から起業家賞を受賞(日本人初)。著書に「おいしいダイバーシティ~美食ニッポンを開国せよ~」(ころから株式会社)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科修了(MBA)、同大学および東洋大学非常勤講師。


関連国・地域: マレーシアインドネシア日本中東
関連業種: 食品・飲料サービス

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