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【アジアで会う】上野圭司さん 「アットイーズ」CEO 第372回 くつろぎの空間を提供(タイ)

うえの・けいじ 1978年生まれ。兵庫県出身。中学卒業とともに上京し、早稲田大学の附属高校に入学。同大学を卒業後、外食企業に就職した。2007年にタイに移住し、首都バンコクで洋食店「マイポーチ」を創業。タイ古式マッサージ・スパ「アットイーズ」を展開するリビング・アットイーズを立ち上げ、現在バンコクに3店舗展開している。タイ人の妻と子どもたちと暮らす。

サワディカー――。ドアを開けると、タイ人従業員たちがワイ(合掌)をしながら笑顔で迎え入れてくれる。英語で「安心して、くつろいで」という意味を持つ「アットイーズ(at ease)」と名付けた店舗では、タイ古式マッサージやスパ、米ぬか酵素風呂といったメニューを提供する。

タイに移住したのは14年前。外食産業一筋で、東京で独立しようと考えていた時、父親を介して知り合ったタイ人の実業家からバンコクに店を出さないかと誘われたことがきっかけだった。久々に訪れたバンコクは、学生時代に旅した時とは見違えるほど発展していたが、外食産業の競争は東京ほど激しくなかった。商機を確信し、洋食店を創業。食事時には行列ができるほど繁盛した。

洋食店の経営で忙しい日々を送る中、知り合いの代わりに偶然訪れたマッサージ店のオーナーから店を買い取ってほしいと依頼を受けた。当時は、冷房が効きすぎていて寒い、清潔感がない、接客態度が悪い、ひそかに性的サービスを提供するといった店が今よりも多く、「マッサージ店に対して良いイメージを持っていなかった」と振り返る。独りでも安心して入れる店をつくりたいと思い、このマッサージ店を居抜きで買い取った。

■コロナ禍で店舗半減

洋食店の「副業」として始めたマッサージ店は、予想を上回る勢いで客足が伸び、徐々に「本業」となっていった。そのような中、2010年にタクシン元首相を支持する「赤シャツ隊」による反政府デモ、翌11年には大洪水が発生。幸い店舗を構える地域では大きな影響はなかったが、「異国の地でビジネスをするリスクを痛感した」という。

政情不安や自然災害の恐ろしさを目の当たりにしてきたが、それよりも影響が大きかったのは、新型コロナウイルスだ。マッサージ店は長期にわたり営業が禁止され、売り上げが激減した。

タイ政府からの助成金はほぼなく、金融機関からの借り入れも難しい中、マッサージ以外で売り上げをつくろうと、従業員たちと協力して、布マスクを製造したり、自社のエンジニアを活用して修理や内装工事を請け負ったり、観葉植物の販売に乗り出したりした。

しかし、バンコクの店舗数は新型コロナ前の6店舗から3店舗に半減。帰郷する従業員も多く、人員も100人から60人程度まで減少した。タイ国外で唯一展開していたベトナムの首都ハノイの店舗は閉鎖に追い込まれた。

■ハーブ製品の対日輸出拡大目指す

タイでは経済・社会活動の制限が段階的に緩和され、10月に条件付きでマッサージ店の営業再開が許可された。客足は徐々に戻りつつあり、ようやく黒字化の兆しが見え始めた。

一方、新型コロナ収束後も店舗網は拡大せず、既存店の運営に注力していく計画。妻の出身地である北部スコータイ県の自社農園で栽培するオーガニック(有機栽培)ハーブを使った製品の日本への輸出拡大を目指す。コロナ禍においてタイで集中的に事業を展開するリスクを実感したため、リスクヘッジのために日本でも売り上げが確保できる体制を目指すという。

「将来は、引き続きタイをベースに、日本と行ったり来たりしながら事業を展開していきたい」と話す。来年には、小学4年生の息子を連れて中長期的な帰国を計画している。ビジネスのためだけではなく、息子の教育や、日本に暮らす両親のことを考慮した結果だ。「15歳で上京し、両親とずっと離れて暮らしてきたので、また一緒に暮らせたらと思っています」。経営者であると同時に、ひとりの息子、父親として、仕事と家庭の両立を図る。(タイ版編集・本田香織)


関連国・地域: タイ日本
関連業種: サービス

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