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【アジアで会う】中村哲さん 法務法人・和友専門委員 第371回 人と会い、関わることの大切さ(韓国)

なかむら・さとる 1958年、大分県生まれ。93年に渡韓して以来、現地で約18年以上にわたり日本語教師として働く。その後、地場大手の新韓銀行で営業スタッフとして活躍。その傍ら、韓国の主なニュースを個人的に毎日配信する「今朝のニュース」を提供するなど、多くの日本人駐在員からの信頼も厚い。今年6月に新韓銀行を退職。現在は、法務法人・和友の専門委員として業務をサポートしている。

日本では外車の並行輸入業者として働いた中村さん。渡韓のきっかけは、韓国人の奥さんの誘いだった。実家の大分に帰ろうと思っていたところ、奥さんに「実家に戻る前に韓国で暮らしてみないか」と言われたそうだ。それが93年のこと。以来約30年間の長きにわたり激動の韓国を体験してきた中村さんは、まさに「知韓派」の人材だ。

■人脈づくりに奔走

韓国での初の仕事は日本語教師だった。ソウル・鍾路にある日本語学校で8年、韓国貿易協会で8年、さらにサムスングループで社員向けに2年、現地の人々に日本語を教えてきた。そして2011年、日系企業向け営業スタッフとして新韓銀行に就職する。

「銀行の営業は初めてで右も左も分からなかった。そのため、まずは人脈をつくることが大事と思い、初めの頃はどんな集まりにも参加しようと奔走しました。ソウルだけでなく、忠清南道の天安市や大邱市、釜山市などさまざまな場所の多種多様な会に入りました。その結果、25の会のメンバーになったんです」

日本人駐在員らが出身地ごとに形成している「県人会」にも多数在籍。中村さん自身は大分県出身だが、「何かと理由をこじつけて他県・地域の会にも顔を出し、韓国国内の日本人駐在員と知り合っていった」という。

その努力の結果、中村さんは誰よりも駐在員に顔が利く人材に。韓国で十数年前に始まった「退職年金制度」を巡る新規顧客の発掘では、それまで一度も取引のなかった日系企業からも「中村さんがいるから」という理由で大型契約の受注にこぎつけたことも少なくない。

■ニュース配信で駐在員の情報源に

日韓両国の企業に顔が利く中村さんは、「情報屋」としての顔も持つ。「アンニョンハセヨ(おはようございます)」の一言で始まるメールがそれだ。毎日配信される現在の「韓国ニュースプラス」は、その日の新聞から重要なニュースや面白い出来事の記事をピックアップした簡単な内容だ。

中村さんがこのメールの提供を始めたのは、約10年前の12年1月のことだ。「最初は為替ニュースの提供だけだったが、しばらくして面白そうなニュースを含めて配信してみたところ、とある企業の社長から『もっとニュースを充実させてほしい』と依頼があり、今の方式に落ち着いた」という。現在は政治・経済や事件、芸能など最大10個のニュースや新型コロナウイルス情報、それに中村さんお得意のジョークも交えて配信している。

利用者からは「内容が簡潔にまとめられて分かりやすい」と好評だ。韓国での駐在期間を終え、帰国した人からも「引き続き読みたい」と言われるほどニーズは大きい。

ある時、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「南北が統一すれば経済的に一気に日本を抜く」という発言に突っ込んだジョークを書き添えたところ、その話が行内で広がり問題視されてしまったという。「それが癪(しゃく)で、1カ月ほどジョークを盛り込まずにニュースと為替だけ淡々と配信した」という中村さん。ところが、普段載せているジョークや面白いエピソードを楽しみにしている読者からは「なぜ、ジョークがないんだ!」と逆にお叱りを受けてしまったとか。

また、19年に日韓関係が悪化し、韓国国内で不買運動が始まった時のこと。中村さんは、新韓銀行の副部長のある体験談をメールに書いた。その内容はこうだ。

バスに乗車した際、日本人らしき女性が1,200ウォン(約116円)の運賃のところ、5,000ウォン札を出そうとしていた。韓国のバスでは、お釣りが大きい場合は運賃を受け取ってもらえないため、副部長が交通カードでその女性の運賃も一緒に支払った。女性はとても感謝し、副部長に5,000ウォンを払おうとしたが副部長は受け取らなかったという。

すると、「読者でもある新聞社の記者がこのエピソードを記事にしてくれた。あれはとてもうれしかった」。楽しそうにエピソードを語る中村さんからは、約10年の積み重ねから来る深みと面白さが感じられる。

■「私は運が良かった」

現在は新韓銀行を退職し、法務法人・和友で日系企業の営業を担当する専門委員として活躍する。

「30年間を振り返るなら、私は運が良かった」と、中村さんは語る。「日本で有名大学を出たわけではないが、韓国に来たからこそ銀行員になれたし、法律事務所でも働くことができた。妻の後押しが大きかった。そして働き先の人々にも恵まれた」と照れくさそうに笑う。

今後の目標については「あと10年間は頑張ろうと思っている。そして、少しでも日系企業の方々の助けになりたい」と力強い言葉が。中村さんの人生年表には、まだまだ新しい歴史が刻まれていきそうだ。(韓国編集部=清水岳志)


関連国・地域: 韓国
関連業種: 社会・事件

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