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【アジアで会う】河野純さん 亀田製菓インド合弁会社副社長 第368回 迷ったら顧客に戻れ(インド)

こうの・じゅん 1975年6月生まれ、46歳。川崎市出身。米大学院を経て、2001年9月にソニー(現ソニーグループ)入社。17年5月に亀田製菓へ転職し、20年5月からインド合弁会社ダワット・カメダ副社長。柿の種のインド版「カリカリ」(60グラム入り50ルピー=約75円、135グラム入り99ルピー、27グラム入り20ルピー)の販売に奮闘している。特技は柔道。家族は日本に住む妻、長男。

カリカリを持ち、笑顔を見せる河野さん(本人提供)

カリカリを持ち、笑顔を見せる河野さん(本人提供)

「迷ったら顧客に戻れ」――。前職のソニー時代から一貫して大切にする哲学だ。オフィスの椅子に座り、メールを眺めているだけでは客の本音は分からない。店頭に行けば、あらゆる情報が手に入る。店は客にどんな商品を勧めるのか。自社の商品を試食後、客はどんな反応を示すのか。「店頭でこそ、お客さまの本音が聞け、新しいアイデアが生まれる」。若かりし頃、ソニーの先輩から受け継ぎ、亀田製菓のインド合弁副社長になった今でも自身に言い聞かせている。

■いつかは経営者に

いつかは経営者になりたい。学生時代にそんな夢を抱き、大学卒業後は米大学院で経営学を学んだ。26歳でソニーに入社。工場勤務から社内システム開発、マーケティング、ドバイ(アラブ首長国連邦)駐在など、多くの仕事を経験した。そして何より、「顧客の声を聞き、商品開発に生かす」という、ものづくりの基礎をたたき込まれた。

40歳を過ぎた頃、日本の電機メーカーは中韓勢に押され、厳しい時代に突入していた。花形のテレビでさえ、差別化が困難に。ある程度のやり切った感に加え、ソニー製品の先見性や楽しさを届ける感覚を自分の中で失いつつあった。そんな中、亀田の話が舞い込んできた。売上高の海外比率は、ソニーが5割を優に超える一方、亀田は1割程度。海外経験を生かし、「日本食品の文化を広めたい」。思い切って転職を決めた。

入社7カ月後に早速、タイ駐在となり、子会社の再建や新事業の音頭をとった。見通しがついた19年3月、亀田の田中通泰(みちやす)会長から電話を直々にもらった。「インドに行ってくれないか」。ソニー時代にインド人従業員と働いたことはあったものの、駐在経験はない。いろいろな思いが頭を一時よぎったが、赴任を決意。5月からインド駐在、1年後に合弁副社長に就き、「いつかは経営者に」の夢をついに叶えた。

■インド版「柿の種」

20年1月、柿の種のインド版「カリカリ」の発売にこぎ着けた。一番苦労したのは事前の市場調査。インド人にアンケートやインタビューを何度も繰り返し、顧客の声を徹底的に聞いた。その結果、種は日本より大きく、ピーナツの割合は35%(日本は30%)に。「カリッ」という音と食感が出るように生地を厚くし、味は辛めかつ濃いめとなった。「日本人には辛い。僕も汗がダラダラ出るぐらい」

発売後、予想を覆す事実もあった。4種類の味「スパイス・マニア」「ワサビ」「ソルト&ペッパー」「チリ・ガーリック」のうち、当初はインドの香辛料をふんだんに使ったスパイス・マニアが一番売れると考えていた。実際は、売り上げ1位がソルト&ペッパーで、2位がチリ・ガーリック。スパイス・マニア、ワサビは3位で並び、売り上げ全体の1~2割ずつだった。

「この結果は4種類の役割の違い」。さまざまな情報や状況を分析し、そう受けとめている。つまりはこうだ。まず、客の目を引いたのはスパイス・マニアとワサビ。他の2種類も食べたところ、ソルト&ペッパー、チリ・ガーリックが万人向けでおいしいと感じた。ところが、そもそもスパイス・マニアとワサビがなければ普通の商品に過ぎず、手に取らなかった。「スパイス・マニアとワサビはいわばトリガー(引き金)だった」。

■インドを第2拠点へ

ダワット・カメダは現在、25年3月期に売上高10億円を目標にする。直近1年では、アラブ首長国連邦とオーストラリアへの輸出を始めたり、インドの零細・個人商店向けに小袋(27グラム入り)と新しい味(ハラペーニョ・チーズ、スイート・タイ・チリ)を追加したり、事業拡大に力を入れている。

ものづくりは、電機でも食品でも、「誰のためにつくるか」が大事だと思う。新型コロナウイルスの影響で、顧客と間近で接する販売促進スタッフを店頭に配置しづらいなど困難もある。それでも、客の声をなんとか拾いつつ、味の追加や亀田の別製品投入など新展開を常に考えている。

「インドを、亀田の日本本社に次ぐ、第2拠点にしたい」。かつて大志を胸に米国へ渡った青年は、新しい夢を見つけ、再び歩み始めている。(インド版編集・鈴木健太)


関連国・地域: インド
関連業種: 電機食品・飲料農林・水産小売り・卸売りサービス社会・事件

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