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浦和レッズ、地元クラブと提携 筆頭株主の三菱重工は商機に期待

Jリーグの浦和レッドダイヤモンズとタイのプロサッカークラブ、ムアントン・ユナイテッドは16日、マーケティングや人材交流などで提携すると発表した。浦和レッズにとってはアジア展開の第一歩となり、Jリーグの認知度が高いタイでファン層の裾野を広げる狙いがある。また、筆頭株主でメインスポンサーの三菱重工業はタイでの発信力を高め、地場企業向けの営業を拡大するきっかけにしたい考えだ。

提携文書を交わす浦和レッズの立花洋一社長とムアントン・ユナイテッドのウィラック社長=16日のオンライン会見より

提携文書を交わす浦和レッズの立花洋一社長とムアントン・ユナイテッドのウィラック社長=16日のオンライン会見より

ムアントン・ユナイテッドは首都バンコク北郊ノンタブリ県に本拠地を置き、メディア大手サイアム・スポーツが2007年に買収した。同社は、タイでJリーグの放映権を持つ。ムアントン・ユナイテッドは国内1部リーグ「タイリーグ1」で優勝4回を誇る、屈指の強豪。北海道コンサドーレ札幌で主力として活躍するタイ代表のチャナティップ選手や、横浜F・マリノスに所属するティーラトン選手などは同クラブ出身で、育成にも定評がある。

両クラブの提携期間は5年間。フレンドリーマッチ開催のほか、トレーニング参加による選手の交流、アカデミーでの育成などを通じて、両クラブのレベルアップを目指していく。国際的なマーケティング推進や企業のマネジメント強化などでも意見交換やノウハウを共有していく。

ムアントン・ユナイテッドのウィラック会長は「浦和レッズは小野伸二選手や長谷部誠選手、原口元気選手など、世界的な選手を輩出してきた。今回の提携は、タイのサッカーに新たな歴史を刻むことになる」と期待を語った。浦和レッズの戸苅淳フットボール本部長は「成長のスピードを上げるには、自分たちだけでなく学び合う姿勢が必要と考えた」と提携に踏み切った背景を説明。若手選手やコーチ陣が異なる文化に触れ、力をつけていく機会にするとともに、有望なタイ人選手の獲得も視野に入れる。

浦和レッズは日本でトップクラスの人気と実績を誇るビッグクラブの一角だが、他のクラブよりも入場料収入が大きいことで、新型コロナウイルス感染症の影響が強く出た。Jリーグが今年5月に発表した「クラブ経営情報開示」によると、20年度の浦和レッズの売上高は前年度比29.8%減の57億7,100万円。入場料収入は4億2,300万円と、8割以上減った。クラブにとってはファンの裾野を広げていくことが急務になる中、サッカー人気とJリーグの認知度がともに高いタイが「進出先」となった。

浦和レッズは07年の「AFCチャンピオンズリーグ(ACL)」出場を契機に、アジア17カ国・地域でサッカーをはじめとするスポーツの楽しさや大切さを伝える「草の根交流」「青少年の健全な育成」を目的に「ハートフルサッカー」の活動を展開してきた。これまで開催した35回のうち12回をタイで開催しており、ムアントン・ユナイテッドとの提携を機に、タイでの活動を強化し、知名度を上げていくことを目指す。

■三菱重工、社内外への訴求に期待

日本とタイの強豪クラブ同士の提携は、浦和レッズのトップパートナー(最上位のスポンサー)で筆頭株主でもある三菱重工にとっても期待は大きい。

泰国三菱重工業の田久保亮社長は両クラブの提携について「浦和レッズが収益を拡大することが最も重要で、三菱重工への影響は間接的なもの」と前置きし、「発信力を強化することでブランド認知度を向上させる一方、タイ国内の従業員6,000人のエンゲージメント(企業への信頼・貢献意欲)を高める効果を期待している」と語る。社内外への訴求効果に加え、サッカーを通じた社会貢献を推進し、プロサッカーリーグに関わる地場企業との接点を作り、新たな事業機会を創出できれば理想的だ。人のつながりがビジネスに大きく影響するアジアであれば、サッカーを入り口にできることの利点は大きい。

三菱重工グループはタイで1970年代から40プラント超の発電所の建設に携わっており、現在も天然ガス焚きガスタービン・コンバインドサイクル火力発電設備の建設プロジェクト3カ所のサイトで進行している。今年8月にバンコクで開業した首都圏鉄道「レッドライン」では、レールなどに関わる軌道設備や信号設備などの設備を納入すると共に、プロジェクト全体に関わる技術の取りまとめ役を担った。このほか、タイでは傘下企業9社がエアコンやコンプレッサー、ターボチャージャー、フォークリフトなどの生産を手掛けている。同社が「中量産品」に分類するこれらの生産拠点として、タイの存在は大きい。

タイ・バンコクの首都圏鉄道「レッドライン」の建設で三菱重工は、レールなどに関わる軌道設備や信号設備などの設備を納入するとともに、プロジェクト全体の技術取りまとめ役を担った(同社提供)

タイ・バンコクの首都圏鉄道「レッドライン」の建設で三菱重工は、レールなどに関わる軌道設備や信号設備などの設備を納入するとともに、プロジェクト全体の技術取りまとめ役を担った(同社提供)

田久保氏は新型コロナの事業への影響として、技術者が入国できなかったことや、同社の取引先工場がクラスター(感染者集団)となり、サプライチェーン(調達・供給網)の一部に乱れが生じたことがあったと話す。ただ、自動車生産はコロナ前の水準に戻ってきており、エアコンも「巣ごもり需要」でむしろ好調という。

■電力や交通インフラで新たな商機探る

タイ政府は電力開発計画(PDP)や、各種交通インフラの開発に関する基本計画の見直しを進めており、投資の呼び込みを目指している。田久保氏は「電力関連でいえば、すでにタイで実績がある天然ガス火力発電をこれからも基本に据えつつ、脱炭素やエナジートランジション関連の商機を探っていく」とし、交通インフラについても「空港の拡張事業などに関する動向を注視していく」と語る。

同社はゴムタイヤが付いた小型・軽量の電車を自動制御するAGT(自動案内軌条式旅客輸送システム)に強みを持ち、アジアではシンガポールのチャンギ空港などで納入実績がある。シンガポールではスマートシティー関連のシステムとして、次世代型の自動料金徴収システム(ERP)も納入しており、渋滞が深刻なタイでも長期的にはチャンスがあるとみる。

多くのタイ人選手が活躍していることで、タイでJリーグの人気は高い。20年にはバンコクで高架鉄道(BTS)のラッピング広告を展開した。タイ国内で浦和レッズの認知度が高まれば、三菱重工だけでなく、同じくスポンサーである三菱自動車などへの好影響も期待できそうだ。


関連国・地域: タイ日本
関連業種: 電機その他製造メディア・娯楽社会・事件

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