• 印刷する

【アジアエクスプレス】スラム部屋で昆虫食 隔離壮絶カンボジア

在カンボジア日本大使館が同国への短期渡航を中止するよう、邦人に繰り返し呼び掛けている。新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、医療機関の病床不足が懸念され、感染者用隔離施設のインフラも十分ではないためだ。隔離経験者によると施設の衛生環境は悪く、昆虫食が出されるケースもあるといい、日本人にとって隔離は過酷さを極めるもようだ。(NNAタイ地域事務所 安成志津香)

感染者用隔離施設の様子。隣の人とはパーテーションで区切られていない=6月、プノンペン(提供写真)

感染者用隔離施設の様子。隣の人とはパーテーションで区切られていない=6月、プノンペン(提供写真)

大使館は7月3日、在留邦人やカンボジアへ渡航を計画する人に宛てたメールで、「6月に入り再度、感染者数が増え始め、特に直近1週間は1日の新規感染者数が1,000人を超える日もあるなど、予断を許さない状況が続いている」と説明。

日本政府は現在、カンボジアの感染症危険情報をレベル3(渡航中止勧告)にしており、短期渡航を検討している人には、「渡航をやめてほしい」と呼び掛けた。

実際に隔離を経験した邦人の話を聞くと、状況の厳しさがうかがえる。

ある邦人女性は、子どもと一緒に首都プノンペンにある感染者用の隔離施設に収容された。女性は施設の食事について「子どもが食べられない辛い料理や、脂っこい食べ物ばかりだった。昆虫が入った食事が出されることもあり、栄養があるとはいえ食べることができなかった」と話す。

また「掃除がずっとされず、放置されたごみにネズミやゴキブリがいるような不衛生な場所だった」と説明。「電気は24時間ついたままで、夜中も音楽やテレビの音が流れたままだった」とし、療養が困難な状況だったことを明かした。

施設に医療従事者は常駐しておらず、問題のある場合は電話で話す必要があるが、英語での意思疎通も困難だったという。

感染者用隔離施設で出された昆虫食=6月、プノンペン(提供写真)

感染者用隔離施設で出された昆虫食=6月、プノンペン(提供写真)

■差し入れは制限、炎天下で放置も

大使館は「カンボジア国内で感染した場合、無症状であっても政府が指定した隔離施設に収容される」と説明。PCR検査などで陽性とされた場合、帰宅できずそのまま施設などに収容される可能性があるという。

「こうした施設では大きな空間に簡易ベッドが並べられただけで、入居者同士を隔てるパーテーションはなく、プライバシーが一切ない」とし、「日本人にとっては厳しい環境に置かれることとなる」(大使館)と注意を呼び掛ける。

隔離施設には食事を届けることも難しい状況だ。差し入れなどは制限が設けられ、届けた品物が炎天下で数時間放置されることもある。大使館は「差し入れや物品調達などについて、家族や関係者とよく相談するなど、事前の備えを心掛けてほしい」と呼び掛ける。

5月以降は自己負担による医療機関での隔離も認められているが、感染者数の増加に伴い病床不足が深刻化。医療機関から受け入れを断られることもあるという。

最近は、感染した邦人からの隔離生活に関する相談が増えているが、隔離措置は公衆衛生当局の指導や措置に従う必要がある。「医療体制が逼迫(ひっぱく)しており、柔軟な対応の余地がほとんどなく、当館による支援は非常に限られている」(大使館)

■日系医療機関は利用不可、「十分ご留意ください」

当初、カンボジアは他国に比べコロナの感染状況が落ち着いていた。しかし、2月下旬以降にプノンペンで集団感染が相次ぎ、陽性者が急増。4月から5月にかけてプノンペンなどをロックダウン(都市封鎖)し、外出・事業活動が厳格に制限された。それで一時、感染者数は減少したがロックダウン解除後に再拡大し、6月末には累計5万人の大台を超えた。

政府はその後、再び夜間外出禁止令などの厳格な措置を講じ、8月20日以降の保健省が発表する1日当たりの感染者は500人前後と減少傾向にある。ただ、この数字にはプノンペンなどの主要都市が含まれておらず、現地では正確な感染状況が把握できない状況となっている。足元では中国製を中心とするワクチン接種が急ピッチで進み、1回接種した人の数は同24日に1,000万人に達したが、その効果は不透明だ。

インド由来の変異株「デルタ株」への警戒も強まっている。デルタ株の感染が急拡大しているタイから帰国した労働者からの感染が広まっており、政府は水際対策を強化している。現在は、国境検問所からの全ての入国者に簡易検査を実施し、陽性反応が出た場合はPCR検査を行っている。デルタ株の感染者とその濃厚接触者には、従来より7日長い21日間の隔離措置を取っている。

日本大使館は8月末現在、次のような注意を喚起している。

「新型コロナウイルスに感染した場合には、カンボジア保健省が指定する病院(プノンペンのクメール・ソビエト友好病院や各州の州立病院など)に入院することが求められ、在留邦人の皆様が日頃から利用されている日系医療機関における治療及び入院はできませんので、在留邦人の皆様におかれましては、十分ご留意ください」(大使館)

医療体制がぜい弱なカンボジアでは、新型コロナに感染しても日本と同水準の医療サービスは到底受けられない。当面は大使館の呼び掛けに従い、カンボジアへの渡航を見合わせるのが懸命だ。

※特集「アジアエクスプレス」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2021年9月号<https://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: カンボジア日本
関連業種: 医療・医薬品社会・事件

その他記事

すべての文頭を開く

【食とインバウンド】拡大する「サスティナブルツーリズム」(10/27)

軸受けNTNの競争委調査、違反なしで終結(10/27)

豪、日本やEU注力で海外直接投資を多様化へ(10/27)

オムロン、ロボットの達明機器人に出資(10/27)

日立金属で検査不正、航空機・発電機向け特殊鋼(10/27)

ダイヤモンド電機、アユタヤの子会社を清算(10/27)

シャープが新世代液晶TV、ミニLED国内勢初(10/27)

トヨタ、印工場での100%炭素中立を達成(10/27)

すべての文頭を開く

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。

の記事は有料サービスご契約者様限定記事です。契約すると続きをお読みいただけます。契約されている方は、画面右側にある各種ログインからログインください。
無料トライアルはこちら
購読申し込みはこちら

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン