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【農業通信】日本市場は3つのCが重要 NZ貿易経済促進庁 インタビュー

ニュージーランド(NZ)が日本との貿易拡大を目指している。先月開催された、アーダン首相やオコナー貿易相も参加した日本向けのバーチャル・トレード・ミッションを皮切りに、現在でもNZ農産物に関する日本向けウェビナーが毎週のように実施されている。NZのビジネス界はなぜ日本市場を選び、日本市場をどう見て、どうNZ製品の輸入を拡大させるのか。通商関係強化を担うNZ貿易経済促進庁(NZTE)トレードコミッショナー、クレイグ・ペティグルー氏に聞いた。【オセアニア農業専門誌ウェルス編集部】

――日本とNZの貿易の現状は?

日本とNZの2020年の貿易総額は70億NZドル(約5,400億円)を超え、NZにとって日本は4番目に大きい貿易相手国です。NZから日本への輸出品は、「Good For You(健康によい食品)」カテゴリーに含まれる食品の成長が目立ち、キウイフルーツ(前年比20%増)やリンゴ(100%増)、蜂蜜(96%増)が大きく増加しました。

食肉は、新型コロナウイルスによるフードサービス業の停滞でチルド(冷蔵)肉は減りましたが小売り用の冷凍肉が増え、全体では10%増加しました。

また、直接日本に入る魚介類はコロナで減少(25%減)しましたが、日本水産などがNZ産魚介類を買って、ベトナムや中国に送り、加工して日本に入れるというケースも多いです。

そのほかキウイフルーツに次ぎ2番目に日本向けに輸出の多い乳製品は、1%増にとどまりましたが、プロテインが含まれるヨーグルトなど付加価値の高い製品などに注目が集まっています。

林業については、住友林業や王子製紙などと昔から良好な関係を築いていますが、去年はサプライチェーン(供給・調達網)の不安定さなどがあり、木材輸出は減りました(18%減)。ただ長い取引関係の中では必然的に波がありますので心配はしていません。

――青果が増えていますね。理由は何ですか?

日本市場に新たに投入された黄色のゴールド・キウイは、日本を含めたアジアの消費者の嗜好(しこう)に合わせて改良されたものです。また、キウイ・ブラザーズというCMキャラクターを含め、マーケティング戦略は日本の消費者のセンスに合致するように練られています。つまり輸出の増加は、良い商品とその裏にあるストーリーが組み合わさった相乗効果と言えるでしょう。

リンゴは約8年前からマーケティングを仕掛けています。最初は1~2種類の輸出から始まって、今では10種類以上を輸出するまでに成長しました。日本の消費者が、徐々にNZのリンゴの味や大きさを認知してきたことで、需要も拡大したという流れだと思います。

また、蜂蜜はマヌカハニーに注目が集まっています。マヌカという植物を蜜源とする蜂蜜ですが、コロナで日本の消費者間で健康に対する意識が高まったことで、抗菌作用が強いマヌカハニーに需要が集まりました。去年の輸出量は前年の倍になりましたが、蜂蜜といえばNZ、というイメージができつつあり、良いことだと思っています。

「商品に込めたストーリーが重要」とペティグルー氏

「商品に込めたストーリーが重要」とペティグルー氏

――輸出先としての日本市場をどう見ますか

NZTEの金融データでは、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が発生する前の2020年に、日本企業の収益は過去最高水準に達しています。

またコロナ下でも日本の企業は節約の方法を熟知しています。このことは、日本の企業が投資や新規プロジェクトに投下する資金を豊富に持っている、ということを意味しているのです。NZ企業にとって、安定している日本の企業は魅力あるビジネスパートナーだと考えています。

また、日本市場の文化的な特徴として、国民の90%以上が「不確実性(uncertainty)を好まない」という傾向があることが分かっています。これはNZ企業にとって日本市場ではパートナー企業とのコミュニケーションが非常に重要ということを示しています。NZTEはNZ企業に向けて「今何が起きているのか」を日本の取引先とタイムリーに共有することが大切なのだと伝えています。

ちなみにNZはこの項目は50%以下です(苦笑)。多くのNZ人は不確実でもフレキシブルに対応すればいいと考えているのでしょう。

また、日本では「長期的な関係の構築が重要」だと考えている人も90%を超えています。日本とビジネスをするなら、「Play the long game(長期戦で)」、つまり長期的な計画を立て、物事を長い目で見ることが必要だということも、NZ側に伝えています。私自身も長い取引で構築された信頼関係の中から新しいものが生まれると考えています。

――NZ製品は日本の消費者に受け入れられますか

日本の消費者は、新型コロナの影響で以前より生鮮食品にお金をより使う傾向(3%増)がみえます。また、不確実性を好まない性向から、貯金も増えています(18%増)。貯金しておいしい物を食べようという動きですが、この傾向にNZの品質の高い農産物は合致するだろうと考えています。

日本は長期的関係を望む。両国の文化的相違を示すNZTEの資料より

日本は長期的関係を望む。両国の文化的相違を示すNZTEの資料より

私たちの調査で判明したのは、日本の消費者が食品を購入する際の基準は、一番が「健康的か」(30%)です。次に「味が良いか」(24%)で3番目に「新鮮か」(22%)と続きます。オーストラリアの消費者が購入を決める条件は「価格」(23%)が1番で、次が「流行」(14%)でした(苦笑)。つまり日本の消費者には、NZのキウイフルーツや蜂蜜は「健康的」な食品として受け入れられているということになりますね。またこの「健康的か」という基準は、「Good For You」のコンセプトに合致しますが、今後日本でヒットする農産物を作る時や売る時、ストーリーを作る時に、このコンセプトから始めることが必要だと思います。

今年4月にNZTEとNZ政府観光局が実施した合同調査では、日本の消費者の69%は機会があればNZ産食品を「購入したい」と答え、「購入したくない」はわずか3%でした。20年9月に65%だった「購入したい」という層が、コロナの深刻化に伴い増加したことも分かりました。日本人がNZに対して、国として、あるいは食品を生産する場所として、とても良いイメージを持っているということが明らかになっています。

――日本に進出するNZ企業に必要なことは?

NZでは現在、200社の企業が日本に商品を輸出し、うち61社が日本をターゲット市場としてみています。さらに30社が日本支社を持っています。彼らの現在の課題は、コロナによるサプライチェーンの遅延と、コミュニケーションの問題です。先ほど示したように両国は不確実性の受容の違いがあります。

特に日本でのビジネスは、コミュニケーションにより信頼関係を構築し、お互いをよく知る間柄になることが重要だと強調しています。長期的な計画も必要ですね。ただ、渡航ができない現在のコロナ下では、デジタルを使った交渉は日本でも通常のビジネス行為として受け入れられていますね。

日本の小売・外食業界の市場規模は6,000億NZドルと巨大で、電子商取引(EC)も拡大しています。NZTEは今年3月に、楽天とタイアップして、「KIA ORA New Zealand Online Showcase(キアオラ・ニュージーランド)」というネットショップを作りました。NZの40企業が600アイテムを出品していますが、日本のオンライン市場でのNZの認知度を上げることと、NZの企業に対しても対日ビジネスのCapability(能力)を引き上げる教育の機会を提供することを目的としています。

楽天としてはアジア以外の国の政府とのタイアップは初めてだそうですが、KIA ORA New Zealandを経由した場合の売上高は、通常より40%高いというデータが出ています。NZのオフィシャルなサイトとして、信頼された結果だと考えています。

また、NZTEは「Made For Japan」というキーワードを掲げています。これは日本にフォーカスした商品・サービスを強化するということ、つまり日本の消費者のニーズを理解した上で信頼されているNZで商品を作り、日本に輸出するというコンセプトです。このことが日本への輸出を成功させるために重要と考えています。パッケージングやマーケティングを含めたストーリーを日本向けに作ることが大切です。

――NZのテクノロジーについて

NZは農業国でもありますがアグリテック(農業テクノロジー)も盛んです。農場が小さいとか高齢化といった日本の農業の課題に対し、NZのノウハウを提供できるチャンスも多いと思います。

協業の一例ではNZの農業ロボット企業ロボティクス・プラスが、ヤマハ発動機から大きな出資を受けパートナーシップを結んでいます。こういった例が徐々に増えてきていますので、NZTEとしては、ウェビナーやビジネスマッチングを推進し、さらなる展開を期待しています。

再生可能エネルギーに関しては、日本とNZの地形が似ていることから、NZの地熱発電の技術を日本に移転する動きもあります。日本ではここ50~60年間に停滞した地熱発電ですが、NZは開発を継続していました。周囲の温泉などに影響を及ぼさない地熱発電のノウハウなどを提供することが可能です。水素を巡るエネルギー開発も注目度が上がっています。

再生可能エネルギーについては大林組や三井物産などと話をしています。

――対中貿易をどう捉えていますか

ご存じの通りNZにとって中国は一番大きい貿易相手国ですが、NZTEは多くの市場と貿易関係を発展させるという目的を持って活動しています。その中でも、日本との貿易は特に重要です。

先に日本に向け実施したバーチャル・トレード・ミッションは、NZ政府として初めて実施したもので、両国の関係を深めることが今後もますます重要になると思います。

NZTEでは、日本市場でビジネスを進めるに当たり3つのCを重要視しています。日本の文化(Culture)を理解した上で、つながり(Connection)を大事にし、責任をもって関わっていく(Commitment)。そうすることで長期的な信頼関係が構築され、日本とNZ両国に、ウィンウィンの結果をもたらすと考えています。(聞き手=ウェルス編集長・湖城修一)

【7月23日付のオセアニア農業専門誌「ウェルス(Wealth)」より転載】


関連国・地域: ニュージーランド日本
関連業種: 食品・飲料農林・水産電力・ガス・水道マクロ・統計・その他経済

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