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【アジアで会う】アフマド・アリスさん パティシエ・洋菓子店経営 第355回 ジャワの田舎町からおいしいケーキを(インドネシア)

Achmad Aris Chakim Badrut(アフマド アリス チャキム バットルット) 1979年、東ジャワ州ンガンジュク生まれ。フランスに本店を持つ「ピエール・エルメ・パリ」の東京店などで修業した経験を持つ。2014年に、同州クディリ市に洋菓子店「パティスリー・アフマド・アリス宇田川」を開業。妻の宇田川朋美さんと二人三脚で経営する。

お店のショーケースを前にアフマド・アリスさん(本人提供)

お店のショーケースを前にアフマド・アリスさん(本人提供)

結婚を機に暮らし始めた日本でイチゴのショートケーキを食べて、そのおいしさに感動した。当時インドネシアにはあまりなかった、フルーツをたくさん使ったケーキの魅力にとりつかれた。インドネシアの甘すぎるケーキは好きになれなかったからだ。「インドネシアの人たちにも、いつかこんなおいしいケーキを届けたい!」と奮起し、パティシエ(洋菓子職人)を目指して専門学校で学んだ後、東京の洋菓子店で修業を積んだ。

インドネシア第2の都市、東ジャワ州スラバヤから南西に約100キロ離れたクディリ市。市中心部の目抜き通りから少し入った場所に、お店を構えて7年になる。店内には、日本の洋菓子店かと見まがうようなショーケースに、色鮮やかなフルーツをふんだんに乗せたケーキなど、見た目も日本で売られているような、おいしそうな生ケーキが並ぶ。

妻の朋美さんが「ジャワの田舎町」と言う、素朴なクディリの町。ベーカリー店は市内に3~4軒あるが、洋菓子専門店は他にない。開店当初は、しゃれた店構えのガラスドア越しに中のようすをうかがうだけのお客さんが多かった。まずは店内に入ってもらって、ケーキを試食してもらうことから始めた。

■「焦げた?」ケーキ、今は人気一番

インドネシアには保守的な味覚の人が多い。ブリュレのように表面に香ばしい焼き目をつけたケーキを見て、「この焦げはなに?」と不思議がるお客さんにも、丁寧に説明した。今ではそのケーキ「フレジールシュクレ」は、人気ナンバーワンの商品だ。

最も人気が高い「フレジールシュクレ」(右)などケーキ3点(提供写真)

最も人気が高い「フレジールシュクレ」(右)などケーキ3点(提供写真)

ケーキづくりに欠かせない生クリームやバター、チーズは、国産品がほぼないので輸入品を使っているが、できるだけ地元の材料を活用したいと考えて、地元で取れるハチミツや、その日に搾ったばかりの牛乳を使っている。ケーキを飾るイチゴやマンゴーなどのフルーツも国産のものが多い。

ケーキを食べるためだけに、スラバヤから片道4時間もかけて来店してくれた日本人客もいた。スラバヤとクディリを仕事などで往来する地元の人も少なくなく、道中立ち寄ってくれるお客さんなどの口コミで、客層はどんどん広がった。スラバヤ在住のお客さんのニーズに応え、2~3カ月に1回の頻度で、予約注文を受けた商品を配達するようにもなった。

■自家製「冷蔵車」で18時間の輸送

高速道路が数年前に開通し、スラバヤまでの所要時間は短縮したとはいえ片道2時間の距離。新型コロナの流行拡大で人々が外出を自粛する時期だからこそ、「おいしい物を食べたい」というお客さんは多いという。

首都ジャカルタで開かれる在留邦人向けのバザーに出店したときは、陸路を車で18時間かけてケーキを運んだ。ケーキの鮮度を保つには温度管理が不可欠。現地には冷蔵車両が少ないので、自家用車に業務用冷凍庫を積み込んだ。車のバッテリーから電源を引き込み、休憩時に寄るモスク(礼拝所)で温度管理しながらバザー会場にたどり着いた。

お店で得た利益は、家族で私財を投じて設立した学校の運営費にも充てている。幼稚園児から中学生まで約120人が、授業料無料で学んでいる。「貧しい子どもたちが学問の道を閉ざされないように、教育の機会を提供したい」と話すアリスさん。「田舎町のクディリからおいしいケーキを届けたい」。かつて見た夢を実現させた後の次の目標は、次世代を担う子どもたちの夢にもつながっている。(聞き手=インドネシア編集部・山本麻紀子)


関連国・地域: インドネシア日本
関連業種: 食品・飲料社会・事件

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