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【アジアで会う】鵜澤邦泰さん 日本工営シンガポール事務所現地代表 第346回 域内ハブで新規事業を開拓(シンガポール)

うざわ・くにひろ 1983年生まれ。千葉市出身。学生時代に非政府組織(NGO)の活動を通じてフィリピンを訪れた経験から、国際協力に興味を持つ。新卒で総合建設コンサルタントの日本工営に入社。2009年から中南米パナマの子会社に出向し、6年半駐在した。19年にシンガポールに赴任。21年4月からシンガポール事務所の現地代表を務める。休日は2人の子どもたちと目いっぱい一緒に過ごしている。

オフィスに来なくてもいいし、好きな時にバカンスに出掛けてもいいが、その代わりに必ず「結果」を出せ――。かつて、鵜澤さんがパナマで一緒に働いた米国人上司の言葉だ。

仕事のやり方が日本本社と全く違う。初めは困惑したが、必死に順応しようとするうちに、生産性の高い仕事の進め方が身に付いてきた。「上司の合理的なワークスタイルから、多くを学びました」と、鵜澤さんは当時を振り返る。

こうした経験があったため、新型コロナウイルスの影響で遠隔勤務が中心になっても不便は感じていない様子だ。「柔軟な働き方が受け入れられるようになって、むしろ仕事がやりやすいです」と明言する。

■パナマで現地に溶け込む方法模索

鵜澤さんが今の仕事に就くことになったのは、大学生の時にフィリピンの孤児院を支援するNGOの活動に参加したのがきっかけだ。数週間にわたって現地の人たちと生活を共にし、国際協力の仕事をする人の話を聞くうちに「自分もこの分野で働きたい」という気持ちが芽生えた。さらに国際協力機構(JICA)に勤める知人から建設コンサルタントの存在を聞いたことが、将来の道しるべとなった。

日本工営に入社後は、まず本社で経理・財務を担当した。3年目に海外業務部に異動。翌年、中南米・カリブ地域を統括するパナマ子会社への出向が決まった。初めの4年間は、地域全体の経理課長として奮闘。その後、約2年は子会社の米国人社長の秘書を務め、営業と会社経営に従事した。

ただ当時、子会社は米国人社長を頂点に現地人社員約300人で成り立つ組織で、日本人駐在員は鵜澤さんを含めて2人だけ。赴任直後は「どうせ本社の人間だろう」と白い目で見られた。「同じ会社の社員なのに受け入れてもらえないのは、つらかったですね」

それでも鵜澤さんは諦めなかった。当初は話せなかったスペイン語を語学学校に通って習得。サルサダンス教室に参加したり、現地の人が利用する食堂に積極的に足を運んだりした。「なんでここでご飯食べてるの」と笑われたこともあったが、「自分はみんなと一緒だと伝えたかった」。こうして徐々に、現地の人に心を開いてもらえるようになったという。

上司の米国流ワークスタイルへの適応に加え、締め切りに対する考えが異なる現地の部下との関係にも悩んだ。「初めは苦々しく感じていたのですが、ラテンの音楽に合わせて楽しく踊る彼らを見ていると、まあいいかと思ったんです。明るくて、純粋で、無邪気な人たちでやっぱり憎めない」。小さいことは気にしないと決め、根本的な思考やマネジメントを現地式に切り替えた。最終的にはすっかり周囲になじんでいった。

駐在最後の1年で回ってきた大仕事が、域内関連会社の会計システムを統合するプロジェクトだった。本社を含め、自社初の取り組みにマネジャーとして携わることになった。

周りは日本人が一人もいない状況だったが、語学力や現地社員との信頼関係、現地の人たちと同じ目線に立つ姿勢など、これまでに培った全てを最大限に発揮して、無事に任務を完遂した。最後は現地の人たちに別れを惜しまれながら、日本への帰路に就いた。

■ゼロからの挑戦

シンガポールに赴任したのは、今から約2年前になる。今回は、東南アジアのハブである同国で、日本工営が従来から手掛けているコンサルティング事業以外の「新規事業」を生み出すことがミッションだ。

「全く武器を持たずにジャングルに放り込まれて、『生きろ!』と言われているような気分です」と、鵜澤さんは笑う。何もかもがゼロからの挑戦で、手探りの毎日は「今が社会人人生で一番きつい」と語るほどだ。現地のニーズに対し、どの事業体と組んでいかに新しい価値を発揮できるのかと、日々思案に暮れている。

現在は、グループ会社の社員を含む約10人の統括も担う。うち9割超がシンガポール人だ。鵜澤さんは「パナマで現地の人と協業したことを思い出します。当時の経験を生かしながら、またみんなで一緒に大きな仕事を成し遂げたいですね」と、目を細める。

長年海外で働く中で、最も重要に感じているのは「コミュニケーション力」だ。いくら技術力があっても、それを伝える力が劣っていては、厳しい国際競争を勝ち抜くことはできない。「うまく交渉したり、ユーモアを交えて話したり、機械が代替できないスキルこそ今後必要になるでしょう」。シンガポールで多様な人と接する中で、自身の対人スキルにももっと磨きをかけたいと向上心は尽きない。

これまでに何度も逆風を追い風に変えてきた鵜澤さんなら、きっと今回も乗り越えられるはず。新しい事業機会の芽を追い求める鵜澤さんの挑戦は続く。(シンガポール&ASEAN版編集・上村真由)


関連国・地域: シンガポール中南米
関連業種: 建設・不動産社会・事件

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