花の咲く様子こそ変わらないが、外国語が耳に入る回数は大きく減った。海外からの観光客らしき姿は当然ながらほぼゼロ。宴会が禁止されたせいで、敷地内は思いのほか静かだ。
3月下旬、東京都内の桜の名所。花吹雪の下を、人の群れがスマホ片手に通り過ぎる。浮かれムードは控えめで、春らんまんと軽くは言えない雰囲気だ。あれだけ豊かだった国際色も、今年は違う場所かと思うほど薄い。在住者らしき中国語や韓国語を操る一団とすれ違うたび、近隣諸国とのつながりを思い出して謎の安堵(あんど)感すら覚える始末。気がつけばアジアは遠くなりにけり、だ。
次回こそ花見を全力で楽しむぞ。そう心に決めたのは1年前。準備した酒瓶のふたは結局開けられず、今年も願いはかなわなかった。余った酒類を流し込みつつ、散った桜以上にピンク色になった頭で、来年こそはと1人ごちる。春よ来い。(潮)
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