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【アジアで会う】安藤一郎さん 和装小物総合メーカー社長 第338回 変わることで伝統守る(ラオス)

あんどう・いちろう 1946年9月京都市生まれ。23年創業の和装小物総合メーカー・アンドウ(京都市)の社長。78年、3代目社長に就任。一度は退いたが、2016年に再度、社長に就任した。タイやラオスでOTOP(一村一品)の製品開発指導にも当たった。

安藤さん(写真前列中央)とラオスの従業員たち=2016年(アンドウ提供)

安藤さん(写真前列中央)とラオスの従業員たち=2016年(アンドウ提供)

「革新の継続こそが伝統」――。安藤さんが大切にしている言葉である。伝統的な和装製品が売れないなら、カジュアルな製品にかじを切り、日本で伝統技術の継承が難しいなら、世界に目を向ける。時代は絶えず変化する。伝統を守り続けるためには、変わり続ける必要があるという。

■根底にある先代からの教え

大学卒業後、大阪府の商社で働いていたが、2代目社長の父・圓蔵さんが病気で入院したため、1970年に副社長に就任。78年に圓蔵さんが亡くなり、社長職を引き継いだ。

先代からは「毎日が新しい日だと思いなさい。今日は昨日の続きではないし、明日も今日の続きではない。新しい商品を出していかないと消費者に飽きられる」との教えを受けた。この精神が今も根底にある。

社長就任後は、中国の3カ所に工場を設立して海外拠点を築いた。2010年ごろから、中国が特恵関税制度(GSP)の対象国から外れる恐れが出てきて(19年4月に全面卒業)、「いつまでも中国には頼れない」と、新たな海外進出先を模索し始めた。候補先は東南アジア。各国を2年ほど自分の足で歩き、最終的にラオス南部の都市パクセーを新たな拠点に選んだ。

アンドウは日本国内や中国に工場を持っているが、どれ一つとっても同じことをしていない。浙江省の工場は縫製専門、山東省の2工場はそれぞれ織物、木工品といったように、役割を分けている。「ラオスに工場を作る時も、単なる中国や日本の代替とは考えず、新しいジャンルの商品を作りたかった」と、安藤さんは言う。

■「ガラ紡」製品、ラオスで復活

そんな折に出会ったのが、和製紡績機「ガラ紡」だ。明治初期に考案された日本で最も古い紡績機で、動かす時のガラガラ騒々しい音から、その名が付けられた。ふっくらと空気を含んで紡ぎ、綿の柔らかさを最大限に引き出すので、新式の機械では再現が難しい、独特な風合いを生み出すことができる。半面、手織りに近いので生産スピードが遅い。西洋式紡績機に押されて、現在は国内で数軒の工場しか使用しておらず、伝統技術が途絶えつつあった。

安藤さんは、愛知県の廃工場で30年以上眠っていたガラ紡を譲り受け、修復した。速度を調整するインバーターも付け加え、13年に設立したラオスの工場に移設。日本の伝統技術をただ復活させただけでなく、カジュアルな製品の生産に活用した。

ガラ紡で紡いだ糸から制作されたタオル(NNA撮影)

ガラ紡で紡いだ糸から制作されたタオル(NNA撮影)

安藤さんがカジュアル路線を意識したきっかけは、08年~09年ごろ、米アップルの共同創業者、故スティーブ・ジョブズさんがジーパンに黒いTシャツで新製品発表会を行っているのを見たことだったという。「これは時代が動くなと感じた。その瞬間から、自分たちも美しさを全面に出したフォーマルな織物から、単価の安いカジュアル製品へシフトせねばと思った」

ラオス工場には、現在48人のラオス人が在籍。タイ産のオーガニックコットンを使用し、ガラ紡で紡いだ糸からタオルやハンカチ、バッグなど(ブランド名「fuwa・fuwano」)を制作している。

「昨年の会社の業績は、コロナで壊滅状態だった」と、安藤さんは話す。それでも「ハンドクラフト」「安心安全」「サスティナブル(持続可能)」を3本柱に掲げ、絶えず新しいものづくりを模索し続けている。厳しい状況が続く今こそ、伝統を守るのではなく、変化することで次の時代につなげていく。(東京編集部・濱田慎平)


関連国・地域: ラオス
関連業種: 繊維その他製造社会・事件

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