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【アジアで会う】アライン・ブンジャミンさん 社会起業家 第321回 工芸職人の手仕事に敬意を(インドネシア)

Alain Bunjamin 1992年、ランプン州出身。2016年、西ジャワ州バンドンの国家工科大学(itenas)でプロダクトデザイン学科を卒業。同年12月、大学の友人2人と竹細工の台所用品を手掛けるスタジオ・ダプール・ヌサンタラを立ち上げる。同州タシクマラヤ県の村落に住む職人と協力し、作り手の生活や付加価値の向上による持続可能な生産体制を目指す。

右からスタジオ・ダプール・ヌサンタラ共同創業者のアライン・ブンジャミン氏、メガ・ピトリアニ・プスピタ氏、マウラナ・ファリドゥディン・アブドゥラ氏(NNA撮影)

右からスタジオ・ダプール・ヌサンタラ共同創業者のアライン・ブンジャミン氏、メガ・ピトリアニ・プスピタ氏、マウラナ・ファリドゥディン・アブドゥラ氏(NNA撮影)

スタジオ・ダプールは伝統的な竹細工の技術を再解釈し、現代的で実用的なデザインに落とし込む。優れた手仕事に対する敬意が足りず、適切な対価が払われていない状況を変えたいという理念がある。環境に配慮し、厳選した材料を使う。

バンドン市北部の標高900メートル近い高原地域、住宅街の曲がりくねった坂の途中に、彼らが拠点とする一軒家がある。取材に訪れると、共同創業者の3人とインターンが作業部屋で顔をつきあわせていた。新製品のデザインを練っている最中で、休日返上で働いている。この地から週2回、車で片道3時間弱かけてタシクマラヤ県の村落に暮らす職人のもとを訪ねる。

■作り手との出会い

始まりは竹細工職人、トト氏との出会いだった。トト氏はこの道30年以上のベテランで、彼のような職人が持つ技術の付加価値を高め、次の世代につなぐための支援をしたいと考えた。いまではトト氏が製品開発の助言から生産管理までスタジオ・ダプールの生産体制の中核を担う。アラインさんが「もしトトさんが陶器職人だったら陶器を扱う企業になっていたかもしれない」と言うほどの出会いだった。

現在はトト氏の親族を中心に17人がスタジオ・ダプール専属の作り手として働いている。職人の収入は、スタジオ・ダプールと提携する前と比べて平均52%上がった。

アラインさんによると、インドネシアではかつて台所用品の多くが竹製品だった。今やプラスチックなど安くて耐久性の高い素材に取って代わられた。アラインさんは「竹製品は安かろう悪かろうのイメージを持たれている。人々の意識を変えることが大きな課題の一つ」と話す。安きに流れる風潮が作り手にも伝わってしまい、粗雑で低価格な製品が出回る悪循環に陥っているという。

■社会起業家になる夢

自身を一言で表すと「情熱的」。情熱こそが凡人を非凡たらしめると考えている。他人の立場に立ってものを考えることは得意だが論理的思考は苦手。直感で物事を決めてしまい、失敗から学ぶことも多い。

そんなアラインさんの思考は高校生時代の読書体験が大きく影響している。伝統や環境問題に関心を持つようになったのもこの時期だ。中でも、貧困地域の子どもたちのために図書館を設立する非政府組織(NGO)「ルーム・トゥー・リード」を立ち上げたジョン・ウッド氏の著作は、人生を決定づけた。巨大企業の幹部という地位を捨てて世界中を奔走する社会起業家になるまでを描いた一冊を読み、「彼のように多くの人のためになる組織をつくりたいと夢見るようになった」。

■日本でも好評

スタジオ・ダプールの売り上げはこれまで、首都ジャカルタとバリのレストランや五つ星ホテルへの特注品が9割を占めていた。需要が順調に伸びていた矢先、コロナ禍による観光需要の激減で注文は止まった。これを機に小売り中心の営業に切り替え、今は売り上げ全体の6割がオンライン販売だ。ジャカルタでは高級商業施設「プラザ・インドネシア」内のインテリア用品店で扱っている。

昨年から海外市場も開拓しており、米国、韓国、日本など6カ国に輸出している。日本ではインドネシアの工芸品を販売するRIRI&Dot(リリ&ドット、東京都目黒区)が代理販売している。同社の高野りりこ社長はスタジオ・ダプールの魅力について「ほかのインドネシアの竹細工に比べてデザインも品質もずば抜けて高い。竹編みが美しく、お客さまからの反応も良い」と話す。

まもなく設立5年を迎える。まだ走り出したばかりで、新たな職人探しや生産性の向上など課題は多い。若年層は村にとどまらず街に出て工場の従業員などになる人が多い状況を打破するため、徐々に若い作り手の育成にも力を入れている。

将来はタシクマラヤ県以外の村の職人との提携も構想している。西ジャワ州マジャレンカや中ジャワ州クラテン、東ジャワ州バニュワンギなど竹細工で有名な地域はジャワ島だけでもたくさんある。各地の技術が持つ特色の数だけデザインの幅も広がる。アラインさんは「スタジオ・ダプールをインドネシアの竹細工のパイオニアに育てたい」と熱を込めた。(インドネシア版編集・多田正幸)


関連国・地域: インドネシア
関連業種: その他製造マクロ・統計・その他経済社会・事件

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