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中国リスクで供給網見直しへ 電子の輸出・再輸出活況(下)

シンガポールの電子製品貿易は、輸出だけでなく再輸出も好調だ。9月の再輸出額は、1999年の統計開始以来、最高水準に達した。米中貿易摩擦を受け、中国リスクを避けるため企業の間でサプライチェーン(部品の調達・供給網)を見直す動きが広がっていることが背景にある。供給網の混乱を警戒した在庫積み増しも出荷増につながっている。中長期には、第5世代(5G)移動通信システムの導入が電子製品需要の拡大をけん引する見込みだ。【清水美雪】

シンガポールの電子製品貿易は、輸出だけでなく再輸出も好調だ(Photo by Republica from Pixabay)

シンガポールの電子製品貿易は、輸出だけでなく再輸出も好調だ(Photo by Republica from Pixabay)

シンガポールで電子製品の輸出が好調なのは、NODX(石油と再輸出を除く輸出額)だけではない。シンガポールの輸出額全体に占める割合が約6割に上るNORX(石油を除く再輸出額)も大幅に伸びている。

再輸出は、輸入した商品を再び海外に輸出することを指す。輸入品を原形のまま再び輸出する場合と、輸入品を加工・修繕して再輸出する場合がある。

シンガポール企業庁によると、電子製品のNORXは今年に入り、おおむね2桁増が続いている。前年同月が高水準だった反動などで1月、5月は前年同月比でわずかにマイナスだったが、9月は24%増、集積回路(IC)も3割増となった。統計を公開し始めた1999年1月以来、電子製品、ICともにNORXは過去最高を更新した。

再輸出好調の背景には、在宅勤務の拡大に伴うデジタル家電の利用増といったコロナ特需や、5Gの本格導入だけでなく、コロナ下でのサプライチェーンの混乱もあるようだ。

シンガポール半導体業界協会(SSIA)のアン・ウィーセン事務局長はNNAに対し、「米中貿易摩擦を受けて、企業の間で域内のサプライチェーンを見直す動きが広がっている」と指摘。政治的に安定し、ビジネス環境が整備されているシンガポールを、電子製品の取引拠点として活用する動きが強まっているとの見方を示した。

米シティプライベートバンク・アジア投資戦略部門代表のケン・ペン氏は、中国で新型コロナが発生したことで、企業の間で中国を中心とするサプライチェーンに対してリスクを強く意識する動きが広がったと指摘。中国以外のサプライチェーンを強化、拡大する例が増えていると述べ、米国の次期大統領に誰が就任しても同様の傾向は続くと述べた。

電子部品専門商社である千代田電子機器シンガポールの担当者は、「アジア地域のサプライチェーンは引き続き脱中国の勢いが加速していると感じている。東南アジア諸国連合(ASEAN)域内の購買層の増加に伴い、より地産地消に推移していくのではないか」との見解を示した。

■短期的にはコロナ特需収束も

アジアの電子業界では、サプライチェーンの混乱を警戒した在庫積み増しが増えており、これが輸出・再輸出を加速させているとの見方もある。

シンガポール金融管理庁(MAS、中央銀行に相当)が28日に発表した最新のマクロ経済報告によると、電子業界の川下企業の間では将来、米国の対中貿易制裁が深刻化しサプライチェーンの混乱が加速することを見越し、部品在庫を積み上げる動きが拡大。これが電子製品の出荷拡大につながっている。

中国、マレーシア、ベトナムなどでは電子メーカーの生産が新型コロナ前の水準に戻りつつあり、電子製品の出荷増に拍車をかけているという。

MASは短期的な業界の見通しについて、「来年には在宅勤務の普及などに伴うデジタル家電の需要は減退し、電子業界内での在庫積み増しの動きも落ち着く」と予想。電子製品の需要拡大要因が減るため、シンガポールの電子製品メーカーはコロナ特需に沸く現状に比べてより厳しい経営環境に置かれるとみている。

ただ中期的には、5Gの本格導入が電子業界の成長に大きく貢献すると指摘。スマートフォンやビッグデータ、モノのインターネット(IoT)など、多様な機器の買い替え、新規購入が新たなハイテク需要を生むとみており、シンガポールの電子製品の輸出・再輸出を下支えする効果が期待できそうだ。

世界的な電子分野の業況回復も追い風となっている。DBSグループ・リサーチのシニアエコノミスト、アービン・セア氏は28日に発表したリポートで、「世界的に電子製品の市況サイクルは(低迷した19年から)上向きに転じている。これがカタリスト(触媒)となり、今後シンガポールの電子業界の生産、輸出拡大を加速させる」との見通しを明らかにした。


関連国・地域: シンガポール
関連業種: IT・通信マクロ・統計・その他経済

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