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【アジアで会う】児島大司さん マレーシア三井物産社長 第314回 パーム油で世界を駆ける(マレーシア)

こじま・だいじ 1962年東京生まれ。慶応大学卒。84年三井物産に入社。多機能・高機能な化学品を扱うスペシャリティケミカル畑を歩み、米国、シンガポールの駐在を経て18年4月にマレーシア三井物産社長に就任。20年3月からはマレーシア日本人商工会議所(JACTIM)の会頭も務める。

恰幅(かっぷく)のよさに度量の深さもにじみ出るのか。学生時代に水泳部で鍛えた体は社会人になって20キロ増し、「年を重ねるうちに物事にあまり動じなくなった」と柔らかな眼差しで話す。マレーシア三井物産のトップとして、日本人15人を含む従業員約150人の大所帯を束ねる。

商社マンとして世界各国を飛び回り、中でもマレーシアへの出張は1980年代後半から90年代にかけて100回を超え最も多い。「当時のマレーシアはパーム油産業で世界の中心だった」と振り返る。食用から工業品まで幅広いオレオケミカル(油脂化学)分野の業務を担い、同国での合弁会社設立に奔走した。

独オイルワールド誌によると、85年にマレーシアのパーム油生産量は413万トンと、2位のインドネシア(124万トン)を寄せ付けず、世界全体の6割を占有。90年代もこれら2カ国が世界生産の50%超を握っていた。マレーシアでは原料となるアブラヤシの作付面積が80~90年代は10年ごとに100万ヘクタール上積みされた時代だ。

今でこそ、国営石油ペトロナスが米フォーチュン誌の「世界企業500社」ランキング(売上高ベース)でマレーシアから唯一の常連ともなっているが、同社が力をつけ始めたのは90年代以降。「それより前に乗り込んで生産拠点を立ち上げ、事業基盤を固めた」

強く印象に残るのは、当時すでに高層ビルが立ち並んでいたクアラルンプールと、整地から始め工場を建てた「まさに田舎のど真ん中」とのギャップ。その隔たりに展望を見いだすとともに、原風景としてマレーシアへの親しみがわいた。

■攻守両立こそ仕事

マレーシアへの出張時代を経て、30代半ばで向かったのは米ニューヨーク。駐在員として2005年まで7年間を過ごし、「つくる仕事と守る仕事」を学んだ。取引先などとの会食を終えると自宅ではなく職場に戻り、深夜1時過ぎまで働いた。「心配性なのか、準備に余念がない性格だ」といい、「事業をつくることに専念し、契約は締結まで論拠をもってしつこく粘ることだけを考えていた」と実直な語り口で振り返る。

一方で、訴訟大国・米国の壁にもぶつかった。米国内で事業に関連する業界への批判が高まり、市場シェアが最大だった子会社を持つ米国三井物産が民事訴訟を提起された。「着地点が見えず、最も胃の痛む経験だった」。提示された巨額の賠償金を前に交渉を重ね、和解に持ち込んだ。「会社への負荷をいかに最小限にとどめるかに腐心し、つくるだけでなく、守る仕事を知る契機になった」と述懐する。

大国での試練は思わぬ“副産物”ももたらした。体重増だ。ステーキ1人前が通常で400~500グラムという世界。「30代の負けん気もあって完食するうちに、体重が十数キロ増えた」。唯一の敗北はウィスコンシン州で出された一皿で5人前はありそうなパスタ。「人生で初めて気持ちで負けた」と悔しがるも、半分は食べた。

■「細部」に宿る神

米国での経験から厚みも深みも備え、18年4月にマレーシア三井物産社長として再びパーム油王国の地を踏んだ。20年3月からはJACTIM会頭として日系企業のビジネス環境にも目を配る。「若年人口の多さや安い人件費といった投資先としてのマレーシアの魅力はインドネシアやベトナムの台頭によって相対的に低下したが、なおも十分な優位性がある」とみている。英語を軸に中には中国語も話す言語能力の高さ、エネルギーの純輸出国であること、土地代の安さ、市場が東西南北に広がる地理的条件などが背景にある。

マレーシア三井物産としては、従来の油脂化学分野に加え、18年に病院大手IHHヘルスケアへの追加出資で筆頭株主となったことからも、ヘルスケア分野に力を注ぐ。「先進国入り間近のマレーシアは時代の変化とともに可能性に富む」といい、戦略的に新分野を開拓していく考えだ。

好きな言葉は「神は細部に宿る」。大きな問題に切り込むには、いかに細部に注意を払い、論理を整え、根気よく挑むかが大切だという。ほかにも古今東西の賢者の言葉を自分や部下のためにとってある。「若いころには響かなかった言葉をいま、拾う楽しさがある」。それらの言葉に込められているのは、まぎれもなくこれまでの足跡だ。(マレーシア版編集・久保亮子)


関連国・地域: マレーシア日本
関連業種: 食品・飲料化学農林・水産天然資源社会・事件

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