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日系企業に業績改善の兆し 4~6月調査、国安法に懸念も

香港に拠点を構える日系企業のうち、4~6月の業績が前期(1~3月)と比べて改善した企業は22.6%と、前期から13.8ポイント拡大したことが、日本貿易振興機構(ジェトロ)香港事務所などが15日発表した調査で明らかになった。香港と中国本土での新型コロナウイルスの新規感染者数が減少したのに伴い、内外需が一定程度回復したことが寄与したとみられる。6月末に制定された香港国家安全維持法(国安法)については8割超の企業が懸念を示した。

調査は、ジェトロ香港事務所と在香港日本総領事館、香港日本人商工会議所が共同で実施した。7月2~8日、同商議所の正会員(515社)と香港日本料理店協会会員(48社)、香港和僑会会員(35社)の計598社にアンケートし、304社から回答を得た(有効回答率50.8%)。

4~6月の業績について、「改善した」との回答の比率が上昇した一方、「悪化した」または「大幅悪化した」を合わせた比率は48.1%と、前期から17.4ポイント縮小した。

業績改善の理由(複数回答)に関しては「香港市場での売り上げ増加」が52.3%で最多。次いで「中国本土への輸出拡大による売り上げ増加」が31.8%で続いた。

一方、業績悪化の理由(同)は「香港市場での売り上げ減少」が47.8%で最多となり、取り扱う商品やサービスによって販売実績の明暗が分かれたとみられる。

業績の動向を主要8業種で見ると、「改善」と答えた企業は「運輸・倉庫」が40.8%(前期比25.4ポイント拡大)、「飲食・小売り」が45.4%(同34.3ポイント拡大)に上り、それぞれ4割を超えた。運輸・倉庫は貨物取り扱い量の回復、飲食・小売りは市民の外出増加が改善を後押ししたとみられる。

一方、「悪化」または「大幅悪化」の比率が高かったのは、「精密および電気・電子機器」(計70%)、「情報・通信およびメディア・広告」(62.4%)。新型コロナ感染防止対策として入境制限が続く中、「ホテル・観光」は「大幅悪化」が100%となった。

業績悪化の要因として「新型コロナ」「貿易摩擦など米中の対立」「中国の景気低迷」「デモ・抗議活動」の四つの項目に順位を付けてもらったところ、新型コロナを1位に選んだ企業が87.1%に達した。米中対立は5.8%、中国の景気低迷は5.0%、デモ・抗議活動は2.1%にとどまり、ほとんどの企業が新型コロナの影響を強く受けたことが浮き彫りとなった。

7~9月の業績見通しに関しては、4~6月よりも「悪化」(26.9%)または「大幅悪化」(6.0%)するが32.9%と、4~6月の実績より15.2ポイント縮小した。一方で「横ばい」は44.5%となり、15.2ポイント拡大した。業績の悪化が一服するとみている企業が多いようだ。

■香港拠点のあり方「検討」が2割

調査では国安法についても尋ねた。制定について「大いに懸念している」(32.7%)または「懸念している」(48.7%)との回答は合計で81.4%となった。「あまり懸念していない」は12.7%、「全く懸念していない」は1.0%にとどまった。

法制定の影響に関して、59.4%が「現時点では分からない」と回答。31.4%が「マイナスの影響が生じ得る」とした。「影響は生じ得ない」は8.3%、「プラスの影響が生じ得る」は1.0%だった。

国安法に懸念を抱く理由(複数回答)は「情報に制限がかかる恐れがある」が70.5%で最多だった。「香港の『法の支配』『司法の独立』が失われる恐れがある」(62.4%)、「米国の制裁措置や米中関係の悪化を招きかねない」(61.5%)、「国際金融センターとしての地位に変化が生じる恐れがある」(59.5%)が続いた。

政府などへの抗議デモなど一連の香港情勢を踏まえ、香港拠点の今後の活用方法に関する方針を尋ねたところ、35.1%が「これまでと変わらない」と回答。一方で、22.2%が「今後検討する可能性あり」と答え、「香港拠点の規模縮小」(9.6%)や「統括拠点としての機能の見直し」(3.6%)、「香港からの撤退」(1.3%)もあった。事業移管先の候補には本土やシンガポール、東南アジア、日本が挙がった。

香港のビジネス環境の優位性(複数回答)を問うと「簡素な税制・低税率」(61.5%)が最多。中国広東省と香港、マカオで一体的な経済圏を目指す構想「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」への参画も34.7%に上り、商機獲得へ期待感を抱いている企業が多いようだ。

■出入境制限の影響続く

新型コロナ感染防止対策に伴う日常業務上の懸念(複数回答)は「香港の出入境制限」が96.1%で最も多かった。次いで「日本の出入国制限」(83.9%)、「顧客訪問など営業活動の制限」(61.5%)の順だった。

新型コロナによる駐在員の赴任などへの影響では、日本に一時帰国し、香港に戻っていない駐在員の家族がいる企業が、回答企業の約1割に当たる36社あった。香港に新規・交代で赴任できない駐在員がいる企業も26社あった。

業務上困っていることとして「出入境制限に伴う海外顧客への訪問機会・営業活動の減少」や「顧客である日系企業の香港からの撤退・規模縮小」、「香港の全体的なモチベーションの低下・ネガティブイメージの常態化」などが目立った。

今後の経営上の課題(複数回答)は「売り上げ減少」が77.6%で最多で、「営業規模の縮小」(37.8%)がその次に多かった。

香港政府による経済対策で役立った措置については、75.5%が賃金補助制度と回答した。今後必要な経済対策には、同制度の継続や家賃補助制度の新設を望む意見が寄せられた。


関連国・地域: 香港日本
関連業種: 医療・医薬品マクロ・統計・その他経済雇用・労務

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