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【プロの眼】新型コロナの影響(上) スマホ販売に大打撃

スマホのプロ 田村和輝(6)

今年、猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症。日本では一部のスマートフォン(スマホ)の発売延期、販売店の短縮営業や臨時休業などの影響が生じましたが、世界にも広く打撃を与えています。今回は新型コロナ流行が、アジアのスマホ市場や関連企業に及ぼした影響についてお伝えします。

オフラインの強化を重視したオッポやビーボの取扱店 =2019年9月、中国・丹東市(筆者撮影、以下同)

オフラインの強化を重視したオッポやビーボの取扱店 =2019年9月、中国・丹東市(筆者撮影、以下同)

新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい始めた2020年の第1四半期(1~3月)、スマホの出荷台数や販売台数は前年に比べ大幅な減少を記録しました。

各調査機関が調査結果を公表しており、英ガートナーによると世界全体のスマホ販売台数が前年同期比で2割超の減少。メーカー・ブランド別では、トップ5に入る韓国・サムスン電子、中国・華為技術(ファーウェイ)、中国・オッポ広東移動通信がいずれも2割前後の大幅な減少となりました。

アジアの主要国は中国やインドの調査結果も判明しており、米IDCによると、中国では出荷台数が同2割超も減少。トップ5に入るファーウェイ、中国・維沃移動通信(ビーボ)、オッポ、中国・小米通訊技術(シャオミ)、米国・アップルも全て減少しました。

中国については、中国工業情報省(工情省)傘下のシンクタンクである中国信息通信研究院(CAICT)が単月の出荷台数も公表しており、1月は同4割弱、2月は6割弱、3月は2割強の大幅減を記録。中国はスマホの出荷台数が減少傾向にありますが、特に2月は異例の落ち込みとなりました。

ほかに中国で新発売した機種数の調査結果も公表しており、2月は6割強と直近1年間では例を見ないほどの落ち込み。出荷台数と新機種の発売ともに大打撃となったことが分かります。

香港のカウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチによると、インドは出荷台数が4%増と四半期ベースでは増加しましたが、あくまでも2月までの積極的な新機種の発売が貢献したもので、インドでコロナの影響が生じ始めた3月には2割弱の急激な減少に転じました。

韓国は携帯電話キャリアによって内容こそ異なりますが、第5世代(5G)移動通信システムの新規加入件数、累計加入件数、加入率などの年間目標を下方修正しました。

韓国では多くのスマホが携帯電話キャリアを通じて販売されており、5G加入件数などの下方修正は5Gスマホの販売台数の事実上の下方修正に相当します。19年4月の5G商用化からしばらく経過して顧客の獲得競争は穏やかになり、それに伴う成長鈍化は織り込み済みでしたが、新型コロナの影響による下方修正を余儀なくされた状況です。

世界各地で販売される米アップル製のiPhoneも製造は大半が中国=2019年12月、アラブ首長国連邦・ドバイ市

世界各地で販売される米アップル製のiPhoneも製造は大半が中国=2019年12月、アラブ首長国連邦・ドバイ市

■店舗利用を敬遠、不振の引き金に

新型コロナはアジアのみならず、グローバルでもスマホの販売を減少させましたが、その主な要因として世界的な都市封鎖や外出制限、これらに類似する措置によって「オフラインチャネル」を通じたスマホの販売が大幅に減少したことが挙げられます。

オフラインチャネルとは、主に街中の携帯電話販売店の実店舗を指し、スマホの販売は一般的にオンラインチャネルよりもオフラインチャネルの方が多いとされています。

特に、オッポやビーボはオフラインチャネルの拡充が販売拡大に貢献しましたが、都市封鎖や外出制限などで臨時休業や短縮営業が余儀なくされました。厳格な外出制限などが実施されていなくとも、感染予防のため外出を控える心理も働き、オフラインチャネルの利用が避けられたことは否めません。

韓国では高価格帯のスマホほど「実際に手にとって確認したい」と考える消費者の心理や店舗独自の割引を期待し、高価格帯のスマホの70%超がオフラインチャネルで購入されているのですが、20年3月はオフラインチャネルを訪問した消費者が20~30%も減少したと推定されています。消費者がスマホを販売する拠点に出向かず、販売が減少するのは当然の結果と言えるでしょう。

また、経済活動の縮小・停止に伴う収入減少を受けて節約志向も高まり、不要不急の出費を控えるようになった消費行動の変化も容易に想像できます。これもスマホの販売が減少した要因のひとつと考えられます。

シャオミがオンラインチャネルを強化するレッドミブランドのスマホ=2019年9月、中国・大連市

シャオミがオンラインチャネルを強化するレッドミブランドのスマホ=2019年9月、中国・大連市

■販売増のシャオミ、オンラインが奏功

今年の第1四半期、多くのメーカーとブランドがスマホの出荷台数や販売台数を減らしましたが、トップ5のうちシャオミのみがグローバルの販売台数を増加させました。シャオミはオンラインチャネルを強化していたため、オフラインチャネルの機能停止による影響を緩和できたようです。

シャオミは「シャオミ」「レッドミ」の両ブランドを主軸とし、レッドミについてはオンラインチャネルでの展開を重視する方針を業績説明会などで明確にしています。これから新たな日常が提起される中、スマホの販売はオンラインチャネルの整備もより重要になってくると言えるでしょう。

複数の選択肢を用意する重要性は、スマホの製造でも同様のことが言えます。都市封鎖や外出制限などで物流や企業活動が停止すると、部品の製造から物流、さらに完成品の製造から流通まで影響を受けます。

販売需要が低迷した時期でもあるため、供給不足の影響はそれほど大きくなかった模様ですが、一部のメーカーおよびブランドでは供給不足が生じたことは確かで、サプライヤーや製造拠点の分散も重要となるでしょう。

スマホの製造はそのほとんどが中国で行われており、今年2~3月は中国国内の多くの工場が稼働停止しました。

傘下に中国・聯想(北京)および米国・モトローラ・モビリティを擁する香港・聯想集団は、第1四半期の大半の期間は中国・武漢市の工場の稼働が停止していたと明かしました。ただ、従来からインドで製造する体制も整備していたため、インドで代わりにスマホを製造できました。

第2四半期(4~6月)に入ると中国ではコロナの流行が落ち着き、インドでは状況が悪化しました。インドでは工場の稼働が停止・縮小している状況ですが、聯想集団は武漢市の工場を再開できたため、インドの次は中国でスマホの製造を継続できています。中国の代替をインド、その後はインドの代替を中国の工場に任せるというリレーにより、製造機能の停止を回避できました。

聯想集団が傘下企業を通じて中国・武漢市で製造した5Gスマホ =2019年6月、上海市

聯想集団が傘下企業を通じて中国・武漢市で製造した5Gスマホ =2019年6月、上海市

世界的にはスマホの需要の低下に伴い、製造コストを効率化する目的でサムスン電子や韓国・LG電子のベトナム、ソニーのタイなどに製造拠点を集約する動きが見られます。

ベトナムは封じ込めに成功したため、ベトナムに工場を所有するサムスン電子やLG電子は製造面ではそれほど大きな影響を受けませんでした。しかし、複数の製造拠点を維持することの重要性も再確認させられました。

ただ、複数の製造拠点を維持することは財務面で体力が必要となるため、メーカーにとっては悩ましい課題と言えます。製造から販売まで、新たな日常の到来に向けた体制の整備が必要となるでしょう。

<プロフィル>

田村和輝(たむら・かずてる)

滋賀県出身。通信業界ウオッチャー。フリーランスで活動。携帯電話関連のウェブサイトを運営し、アジアを中心とした世界の携帯電話事情を発信。東アジアと東南アジアの全ての国で携帯電話回線を契約した。近年はアジア以外にも足を伸ばす。日本人渡航者が少ない国や地域の事情にも明るく、中東ではいち早く5Gを体験。国内外の発表会や展示会も参加。

※特集「プロの眼」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2020年7月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 韓国ベトナムインド日本
関連業種: IT・通信

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