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【循環型経済】バイオプラ、車も植物由来に オランダに見るタイの活路(上)

タイ政府が掲げる産業高度化政策「タイランド4.0」に含まれ将来性が有望視されるバイオケミカル産業。とりわけタイは植物由来のバイオプラスチックの一大製造地となる可能性があり、政府が投資誘致に力を入れている。昨年にはオランダ企業がタイでバイオプラ工場を稼働させた。オランダは国家レベルで循環型経済の推進を掲げ、バイオプラを使った植物由来の車も開発されている。循環型経済が広がるオランダの事例を基にタイの活路を探る。

オランダ・アイントホーフェンの街中を走る、車体やシャーシをバイオプラスチックなど植物由来の原料の部品で作った電気自動車「ノア」(TU/エコモーティブ提供)

オランダ・アイントホーフェンの街中を走る、車体やシャーシをバイオプラスチックなど植物由来の原料の部品で作った電気自動車「ノア」(TU/エコモーティブ提供)

タイ投資委員会(BOI)は1月、過去4年間のタイでのバイオプラ製造への投資が15件・161億バーツ(約560億円)だったと発表した。BOIのドゥアンチャイ長官は向こう10年で、タイが世界的なバイオプラ生産拠点になるとみている。その理由はタイが、バイオプラの原料となるキャッサバやサトウキビの世界有数の産地であるためだ。国連食糧農業機関(FAO)によると、2018年の生産量はキャッサバが3,170万トンで2位、サトウキビが6,720万トンで5位だった。

19年9月にはオランダの乳酸製造大手コービオンが、フランスの石油・ガス大手トタルと折半出資で設立した合弁会社トタル・コービオンPLAを通じて、サトウキビを原料とする植物由来のバイオプラであるポリ乳酸(PLA)の生産を開始した。年産能力は7万5,000トンで世界2位。オランダは欧州連合(EU)加盟国の中で近年、タイへの海外直接投資(FDI)の認可額が最も多く、PLA工場もその一つだ。

PLAは食品用の容器や3Dプリンター用の材料、自動車部品などに使われ汎用性が高い。同社の高耐熱PLAは、18年にオランダで披露された車体に鉄と石油由来のプラスチックを使わない、世界初の植物由来の電気自動車(EV)「ノア」に使われたことでも注目されている。

「サーキュラー・カー」とも呼ばれるノアは、オランダのアイントホーフェン工科大学の研究チーム「TU/エコモーティブ」が開発。同チームは毎年、革新的な車両を開発している。

バイオプラのPLAと亜麻の繊維で作ったサンドイッチパネル(TU/エコモーティブ提供)

バイオプラのPLAと亜麻の繊維で作ったサンドイッチパネル(TU/エコモーティブ提供)

ノアでは、3年越しで開発したというPLAと亜麻の繊維で作ったサンドイッチパネルがシャーシや車体に使われた。ノアは2人乗りで重量が360キログラム(バッテリー除く)と、従来型の車の半分以下と軽い。航続距離は240キロメートル。理論上の燃費はガソリン1リットル当たり300キロメートルに換算できるという。同パネルは、アルミや炭素素材といった軽量素材を使うよりも製造時の電力使用量が5~6分の1に抑えられた。シャーシの97%は植物由来のため、車を廃棄する場合、一定の条件下で分解し土壌に返すことができる。

PLAを供給するトタル・コービオンPLAでシニアマーケティング・ディレクターを務めるフランソワ・デ・ビー氏は声明で「PLAが包装材として使うよりも適した使い方があることを証明した」と述べた。

欧州の業界団体「欧州バイオプラスチックス」によると、世界の19年のバイオプラ生産量は211万トンで、PLAは13.9%を占めた。24年には242万トンに拡大する見通し。タイでは、タイ国営石油PTT傘下の石油化学最大手PTTグローバル・ケミカル(PTTGC)と三菱ケミカルの合弁会社であるPTTMCCバイオケムも、キャッサバやサトウキビなどを原料とする「バイオPBS」を生産している。

■他国企業と協業、再生PETで車体開発

再生PETを主な原料として開発しているEV「ルーカ」(TU/エコモーティブ提供)

再生PETを主な原料として開発しているEV「ルーカ」(TU/エコモーティブ提供)

TU/エコモーティブのチームマネジャーを務めるマタイス・ファン・ウェイク氏は昨年12月、NNAに対し、TU/エコモーティブが今年1月から新たなサーキュラー・カーの開発に着手すると明かした。「ルーカ」と名付けて設計した車は、シャーシを再生PET(ポリエチレンテレフタレート)で作る計画で、ノアと同様に亜麻の繊維と組み合わせるという。

シャーシのフロントとリア部分は、リサイクルしたアルミでチューブフレームを作る計画。これで、強度、重さ、持続可能性のバランスを図る。車体に使う素材は、高度な再生プラ技術を持つイスラエルのスタートアップ、UBQと協業して開発する。UBQは、生ごみやプラごみなど全く分別されていない廃棄物から、プラスチックを再生する技術を持つという。今年1月には、ドイツの自動車大手ダイムラーが、循環型経済の一環として、UBQの素材を試験的に使っていることを発表した。

ウェイク氏によると、ルーカを開発する狙いは、家庭ごみと海洋プラごみを減らすこと。「PETは10回程度リサイクルできる。これを車の材料として使えれば、PETの寿命を延ばせる」。既に開発を始めており、今年6月までに車両を完成させる方針だ。

【左】再生PETを原料として作ったサンドイッチパネル【右】「ルーカ」のシャーシのイメージ(TU/エコモーティブ提供)

【左】再生PETを原料として作ったサンドイッチパネル【右】「ルーカ」のシャーシのイメージ(TU/エコモーティブ提供)

■国レベルで循環型経済の目標掲げる

海洋プラスチック汚染問題に取り組むプラスチック・スープ財団の看板=19年12月、オランダ・アイントホーフェン(NNA撮影)

海洋プラスチック汚染問題に取り組むプラスチック・スープ財団の看板=19年12月、オランダ・アイントホーフェン(NNA撮影)

オランダでは、アムステルダムが15年に世界で初めて50年までに循環型経済の確立を目指すと宣言した。まずは25年までに家庭ごみの65%をリサイクルもしくはリユースし、30年までに一次原料の使用を50%削減する。16年にはオランダ政府が、国レベルで50年までに循環型経済の確立を目指すことを発表した。

オランダ政府によると、同国は天然資源が少なく、原料の約68%を輸入に頼っている(オランダ中央統計局、11年データ)。そのため資源を廃棄せず循環させることで、まずは30年までに一次資源の使用を50%削減する。

BOIのドゥアンチャイ長官は1月、「バイオプラのトレンドは製造業の成長だけでなく、農産物の生産と循環型経済の拡大につながる」との声明を出した。欧州市場との親和性を保つために、タイが循環型経済を国策として取り入れるのかどうかは注目に資する。


関連国・地域: タイ欧州
関連業種: 自動車・二輪車食品・飲料化学農林・水産マクロ・統計・その他経済

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