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【アジアで会う】加藤芳之さん 加藤ビジネスアドバイザリー代表 第290回 オカンが道標、公認会計士に(マレーシア)

かとう・よしゆき 1968年生まれ。兵庫県尼崎市出身。関西学院大学商学部4年生の時に公認会計士試験2次試験に合格。91年に監査法人トーマツ・大阪事務所に入所。アジアを盛り立てたいとの想いから、97年と2005年の2度、デロイトトーマツグループのデロイト・マレーシアに赴任。07年にはラッセルベッドフォードマレーシアに転職し、日系企業に特化したサービス展開に力を入れた。マレーシア生活が23年目となる今年1月、個人事務所を立ち上げ、独立を果たす。

マレーシアの税制を分かりやすく解説する弊紙のコーナー「税務会計実務」を隔週で執筆している。登場人物の加藤とN子の軽妙な掛け合いは、目の前の加藤氏そのもの。聞き役のN子が時おり質問に絡めて発するボケを丁寧に拾いながら、笑いをまぶす。

「ヤンチャな子が多いアマ(尼崎の地元での呼称)で生まれ育って、オカン(母親)が心配したんやろな。地元の私学で中高大一貫のとこ受けてみって」。母親の勧めで受験した関西学院中学部に進学し、その後、会計士になるまでの道を母親の助言が支えた。

実家は米や酒の小売店を営んでいたが、母方の大伯父(祖母の兄)が公認会計士だった。大伯父の時代は2桁台だった公認会計士の登録番号は、今では万桁の台になることからも、当時いかに珍しい職業だったかが分かる。それだけに母の伯父への憧れは強く、「おっちゃんは中元も歳暮もたくさんもらってるで」とけしかけられながら、「いつの間にか母親の線路に乗っかってた」と子ども時代を振り返る。

妹が2人いる長男としての期待も自覚しており、反抗期はなかったが、反骨精神は強かった。オカンの敷いた線路で関西学院大まで進み、2年生の時に自身でエンジンをかけた。公認会計士を目指し、猛勉強を始め、4年生の夏に2次試験に合格。在学中に監査法人トーマツの大阪事務所に飛び込んだ。公認会計士は2次試験に受かった後、会計士補として3年間の実務経験を経て正式に登録できる。大学卒業後の91年、トーマツに入社し、6年後の97年にアジアへの扉を開いた。

■通貨危機、中国台頭がバネに

トーマツが当時、シンガポール、香港に次いでアジアの戦略市場の一つに位置付けていたマレーシアに赴任となった。「周りの会計士仲間は欧米志向が強かった分、これからはアジア」と意気込んだ。が、着任して間もなく、成長過程のアジアに潜むもろさを目の当たりにした。タイの通貨バーツの暴落をきっかけとしたアジア通貨危機だ。マレーシアでも通貨リンギの価値は一時半値近くまで急落し、「為替差損で借り入れが倍近く膨らんだ企業がいくつもあった」。親会社の連結決算に対しても、多大な影響を与えたという。

2度目のマレーシア赴任となった05年にはアジアの熱波が押し寄せた。中国の台頭だ。経済成長に伴って、中国での会計士需要が高まり、「給与水準がマレーシアより2倍程高い大国に優秀な人材が流れた」。マレーシアを離れたわずか2年余りで、古巣の環境は変わっていたという。と同時に、デロイト・マレーシアの日系グループ長として戻ったが、40歳を前に、新たな挑戦への意思が芽生え始めた。

元同僚の華人2人が設立したラッセルベッドフォードマレーシアに移り、日系企業向けサービスの基盤づくりに力を注いだ。入社時はわずか2社だった日系クライアントは12年間で200社を超えた。今年1月に独立し、クアラルンプール郊外のスランゴール州シャアラムに事務所を構えた。製造業を中心に日系企業が集積する場所だ。「クライアント30社でスタートしたばかり。来年度の監査では50社を請け負いたい」との目標を掲げる。

「会計士は、12月期、3月期の決算に合わせて上半期(1~6月)が繁忙期。下半期をどう過ごすかが重要」と自身に念押しする。独立に合わせたかのように、春には息子が巣立つ。日本の高校に進学することが決まり、「マレーシアを拠点に2カ月に1回、息子に会いに行く」新生活も始まる。「親子でニュースの話をよくしてたからかな。教科では『社会』が得意な子で……」と目を細めつつ、「やりたいことやったらええんちゃう?」。息子には、オトン(父親)のレールは敷かないつもりだ。(マレーシア版編集・久保亮子)


関連国・地域: マレーシア日本
関連業種: 社会・事件

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