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【アジアで会う】佐藤寛太郎さん 埼玉・蕨市の日本語ボランティア 第279回 移民2世に教育の場を(日本)

さとう・かんたろう 1935年生まれ。東京都出身。

早稲田大学経済学部を卒業後、機械メーカーに入社。50歳ごろから鉄切断機など自社機械の営業で世界各地を飛び回るうち、国際交流に興味を持つ。退職後、埼玉県蕨市公民館主催の日本語ボランティア養成講座を受講し、「日本語ボランティアわらび中央」のスタッフに参加。現在は、教育問題を中心に在留外国人の生活環境改善に向けた支援活動に力を入れている。

佐藤さんは蕨市の中央公民館を拠点にした「日本語ボランティアわらび中央」でボランティアスタッフの中心メンバーとして活動している。開講日は毎週火曜と水曜の数時間ずつで、受講者の参加費は1人1回50円だ。ボランティアスタッフはほぼ全員が定年退職者。「創設当初、スタッフは12人いた。だけど頭のいい人から抜けちゃって、要領の悪い2人が残ったの」。新しいスタッフは入ってくるが、今も現役で活動を続けている同期は坂田良介(83)さんの1人だけだ。

機械メーカーに勤めていた佐藤さんは、50歳で海外営業を命じられ、合弁会社設立のため欧州やアジア、南米やアフリカなど世界中を回った。「当時は欧米人による有色人種への差別がひどくへきえきした」。外国人嫌いだった佐藤さんだが、海外で交渉を続けるうち好奇心旺盛な性分が顔を出した。定年退職後、68歳で蕨市が主催する日本語ボランティア養成講座に足を運んだ。「サラリーマン時代も身振り手振りでコミュニケーションをとっていたから何とかなるだろうと思った」。その頃、同市が市内に定住する外国人向けに地域ボランティアの日本語学習団体を作ろうとしていたという。1回3時間、90回のボランティア向けカリキュラムを終えてスタッフを任された。「実際教えていると、いかに自分が日本語を知らず日本文化に疎いかを痛感した。『こりゃ駄目だ』と思い、県内のカルチャーセンターにある420時間の日本語教師養成講座に通いながらスタッフを続けました」

しかし佐藤さんが活動を始めた翌年、市主催のスタッフ養成講座が打ち切られてしまう。当時は地域に外国人向けの日本語講座が少なく、佐藤さんのいた教室ではスタッフ1人が同時に3人以上の受講生を教える状況だった。スタッフ育成の必要性を感じた佐藤さんは、有志で外部の日本語ボランティア養成の専門講師を招致した時期もあった。「今は文化庁の受託事業として、国から団体に年間14万円の活動費援助があるが、ほとんどは講師代に消える。そのため今でも講師の人には“サービス価格”で教えてもらっている」という。

■公立の夜間学校設立に向け奔走

「両親の都合で来日した子供たちを放っておけない」。佐藤さんが今最も気に掛けているのは移民の子供たちだ。蕨市に住む外国人は現在7,234人とされ、隣の川口市にも3万8,246人の外国人が住んでいる。特に蕨市はクルド系移民の多い土地として有名で、川口市も含めると2,000人以上が住むと推定されている。「大人は諸々の事情も覚悟して日本に来ているが、問題はその子供たち。何も知らないまま親に連れられて来た子ばかりだ」

佐藤さんたちボランティアの仲間が市の教育委員会に掛け合った結果、外国籍でも義務教育期間の年齢であれば、ボランティアによる夜間学校や日本語研修を受け、授業についていけると判断されたのち公立の小・中学校への入学が認められるようになった。佐藤さんの仲間も、数年前からボランティアで週2回(火曜・金曜)夜間学校を続けており、今も公立の夜間学校設立に向け働きかけている。

深刻なのは義務教育期間を過ぎた高校生以上の2世たち。彼らは今の日本では学校での受け入れができない。佐藤さんによれば、中東では進学の概念が薄く、13歳になれば仕事を始めるのが一般的。親が子の進学に積極的でない場合が多く、説得が難しいという。「彼らは母国語しか話せないまま同郷の仲間と駅周辺にたむろしている」

彼らに教育の場を作ってあげたい一心で奔走する佐藤さん。「われわれが行っているのは行政が本来やるべき仕事で、一介のボランティアがやるべきことではない。活動よりも制度改正の提言で時間をとられてしまっている」と憤慨する。蕨市の現状を示した意見書も政府へ提出予定だ。「ここまで言ったけど、われわれは日本の政治にがっかりしているわけじゃない。むしろ大いに期待している。まだまだ道は遠い」(東京編集部・片岡野乃子)


関連国・地域: 日本
関連業種: 社会・事件

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