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【アジアで会う】小野沢麻衣さん ジェトロ・クアラルンプール事務所長 第273回 両国がWinWinの関係づくりへ(マレーシア)

おのざわ・まい 1972年生まれ、群馬県出身。国際基督教大学(ICU)卒業後、96年に日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。海外貿易開発協会(JODC、現・海外産業人材育成協会=AOTS=)バンコク事務所出向、ジェトロ新潟事務所長などを経て、2018年7月から現職。趣味は登山とスキューバダイビング。マレーシア赴任後は一つしか山に登っていないが、東南アジア最高峰のキナバル山(4,095メートル)登頂を夢見る。

大学では生物学を専攻する傍ら、ネパールの森林回復を支援するボランティア活動に参加した。小学校2~5年をアラブ首長国連邦(UAE)で過ごし、日本とは全く異なる文化や習慣に触れた経験から、アジアや中東への関心が高かったためだ。大学卒業後は、アジアと接点があることを理由にジェトロに入った。

ボランティア活動で「与えるだけでなく、互いにWinWinで発展するにはビジネス関係を作るべき」と考えたことも、入構の動機だ。

ジェトロで最初に携わったのは、輪島塗など石川県の産品を海外に売り出すプロジェクト。ミャンマーにある漆器の一大産地バガンで現地調査を行い、キンマなどの装飾技法を紹介するなど両産地の交流を図った。ただ実になる一歩は踏み出せず、日本の伝統産業に海外へ目を向けてもらうことの難しさを知った。

■ASEANは日本の味方

JODCのバンコク事務所に出向していた03~07年には、日・東南アジア諸国連合(ASEAN)包括的経済連携協定(AJCEP)の締結(08年に実現)に向け、交渉を円滑にするための調整を支援すべく各国を駆け回った。自動車、化学、中小企業などを切り口とした産業協力事業も、ASEAN10カ国と議論しながら同時に展開した。

10カ国を回り感じたのは「ASEANは日本の味方」ということ。どの国の担当者からも「日本から技術を取り込むことで、共に成長していきたい」という意気込みを感じた。域内最貧国であるカンボジアやラオスにも「日本とのビジネス促進のために投資環境や制度の改善をしてほしい」と日本の要求をしっかり伝えた。

また、統合に向かっていたASEAN各国の政府関係者と交流する中で、中国とインドという大国の間に挟まれたASEANが一つにまとまることで、アジアの中のパワーバランスが保たれることの意義も強く意識した。この3年半により、小野沢さんの中で、ASEANの存在はぐっと身近になった。

■日本製品アピールにまだ余地

マレーシアでは、日本の地方の中小企業の製品のPRや、日本企業の進出支援に取り組む。マレーシアは人口が3,200万人と市場は大きくないものの、年率5%前後の経済成長で生活レベルが向上し、食品、アパレルなど日本製品が持つ機能やデザインなどが求められる時代を迎えつつある。そんな中、まだ知られていない日本のブランドは多く、アピールの余地はあるとみている。

現地の事業者からも、経済成長で消費市場が変わったことで、日本の商品を売りたいという直接的な要望だけでなく、コールドチェーンを導入したい、商品の多様化が必要といった日本の流通ノウハウを導入したいという声も聞かれるようになっているという。

一方、マレーシアに進出する日系企業数は約1,400社で横ばいが続く。2億7,000万人の市場を持つインドネシア、人件費が安いベトナム、約6,000社の日系企業が進出するタイに比べ、「マレーシアでなければいけない決定打が分かりにくくなってきているため」といわれる。ただ小野沢さんは「進出企業の半数を占める製造業の約4割は電気電子分野で、同産業の裾野が広いため、ASEAN域内では『小ロット多品種』の生産に最も応えられるのがマレーシアといわれる」と指摘する。このほか、◇域内で唯一、自然災害がほとんどない◇英語力が高い――といった実はあまり知られていないメリットを、ジェトロとして日本企業へ周知していく。

また、マレーシア政府に対し、ジェトロはこうした利点を引き出す政策の必要性を訴えかけていく。昨年5月にマハティール政権が誕生してから、「日本側の声をよく聞いてくれる体制になった」という声が増えたという。他方、頻繁に行われる制度変更などで投資環境が不安定になっているのも事実だ。小野沢さんは、日系企業とマレーシア側が常にWinWinの関係を築けるよう、しっかりとした対話の場を作っていきたいと考えている。(マレーシア版編集・大谷聡)


関連国・地域: マレーシア日本
関連業種: マクロ・統計・その他経済社会・事件

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