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【外国企業の日本戦略】自家用車不要の都市をアジアで 欧州のMaaSグローバル

シェア自転車や鉄道など複数の移動手段の経路検索・予約・決済を一つのサービスとして捉える「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」。携帯電話やインターネット料金のような定額制(サブスクリプション)を人の移動にも適用させ、公共交通機関の利用を促すサービスによって、自家用車を持たなくても市内の移動を快適にする環境を整える。この概念を2016年にフィンランド首都ヘルシンキで事業化したMaaSグローバルは、日本とシンガポールでサービスを開始する計画だ。同社のサンポ・ヒエタネン社長に聞いた。【取材・写真=遠藤堂太】

「自家用車の稼働時間はわずか4%なのに維持費は月約7万円かかる」と話すMaaSグローバルのヒエタネン社長=ヘルシンキ

「自家用車の稼働時間はわずか4%なのに維持費は月約7万円かかる」と話すMaaSグローバルのヒエタネン社長=ヘルシンキ

――年内にも日本でサービスを開始する。

MaaSグローバルは検索・決済アプリ「Whim(ウィム)」を英バーミンガムやベルギーのアントワープでも展開している。現在は日本法人立ち上げと年内のサービス展開を準備中だ。Whimの究極の狙いは都市部で自動車を保有する必要がない社会をつくること。渋滞や排気ガスなどの環境対策だけではなく、市民は自動車を保有するコストを他のことに充てられる。そもそも移動が目的ではなく、移動先で何を行うかが大事な問題なのだ。

――フィンランドと日本の都市では規模も交通機関の複雑さも違う。

はっきりいってフィンランドはテストケースのようなものだ。複雑な交通網がある日本でのサービスは、われわれにとってもチャレンジだし、チャンスも大きいと考えている。一方、日本は他の国と国境を接しておらず国内ですべてが完結できる。意外かもしれないが、我々から見ればシンプルに映る。

路面電車を降りてすぐにシェア自転車に乗れる=ヘルシンキ

路面電車を降りてすぐにシェア自転車に乗れる=ヘルシンキ

――フィンランド企業が日本のMaaSを支配しようとする、といった論調の報道もある。

日本ではいろいろな業界と連携していく。日本企業を打ち負かすのではなく、オープンな存在でありたい。電子商取引(EC)サイト米アマゾン・コムのように価格の主導権を握る「プラットフォーマー」になるつもりは毛頭ないし、独占的にコミッション(手数料)で稼ごうとは思わない。

同業他社と競合する中で、当社のサービスが最も良いという状況になればうれしい。

「どの都市でも、Whimが経路検索や決済をワンストップで使いやすく」というのが理想だ。東京や名古屋など地域ごとにそれぞれの地域アプリを入れたりするのは利用者にとっては好ましくない。MaaSに取り組む企業(運輸・車両メーカー・不動産・金融など)はまず、独占・寡占による収益ではなく、オープンさがもたらす相乗効果・公共の利益を考えるべきだ。

■ノキアショックが生んだ発想

――「都市に自家用車は不要」というMaaSの発想はどうして生まれたのか。

ヘルシンキでの温室効果ガス削減や渋滞解消の目的で、行政当局は自家用車の乗り入れをゼロにする目標を打ち出したのがきっかけだ。そのために公共交通機関の利用を促進する仕掛けが必要だった。

フィンランドでは自動車産業がないこと、2012年の通信大手ノキアの携帯端末工場の閉鎖ショックが、MaaSという新しい発想がフィンランドで生まれるきっかけになった。当社にも元ノキアのエンジニアが多数いる。Whimは経路探索や決済だけにとどまらず、運輸当局や各事業者との交渉で定額制も実現した。

■日本の次は東南アジア

――日本の次は東南アジア展開を考えている。新興国は自家用車の保有意欲が高いが。

シンガポールでは近くサービスを開始する。都市交通が発展しているから展開しやすい。

バンコクやジャカルタなども、先の話になると思うが検討している。もし展開するなら、公共交通機関が発展していないから日本以上にハードルは高い。しかし、渋滞や環境対策という観点からもWhimが最も必要な地域だ。

突然のスコールや熱暑があるため、エアコン付きの自家用車を所有したいという気持ちは分かる。見えを張るためということも多い。しかし、いつもトヨタの「カローラ」で移動するのではなく、平日はタクシーを含めた定額制のWhimで安く移動し、週末はレンタルでリラックスしながら高級車「レクサス」に乗った方が総コストは安く満足度も高いのではないか。

■次の狙いは住宅

――次のチャレンジは。

Whimの中国語広告。「外国人観光客も狙うが、在住者の利用がほとんどだ」とヒエタネン氏は話す=ヘルシンキ空港

Whimの中国語広告。「外国人観光客も狙うが、在住者の利用がほとんどだ」とヒエタネン氏は話す=ヘルシンキ空港

人間が生活していくうえで、一番コストがかかっているのが住居費、次いで自動車の購入・維持費だ。なので、次の狙いは住居費の低額・定額化だ。アイデア段階だが、自家用車が必要ない住環境を提供するのはもちろん、最寄り駅までのバスやシェア自転車などを含んだ住居費サービスとなるかもしれない。このほか若者向けには各地の住居に定額制で住み放題というサービスも考えられる。

<メモ>

■MaaSグローバル

2015年にヘルシンキで設立。16年にサービスを開始。トヨタファイナンシャルサービス、デンソー、三井不動産、三菱商事など日本の大手企業が出資。自転車シェア、鉄道、タクシーなどのルート検索から決済までを一つのアプリで済ませるWhimを世界で初めて開発したとされる。ヘルシンキでのアプリダウンロード数は約10万件。


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関連業種: 自動車・二輪車建設・不動産運輸IT・通信サービスマクロ・統計・その他経済

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