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【外国企業の日本戦略】木村隆之ボルボジャパン社長 「一番のプレミアム」で生き残り

国産車も含めた「日本カー・オブ・ザ・イヤー」で、スウェーデンのボルボ車が「輸入車」としては初の2年連続本賞を受賞した。2018年に同賞を受賞したスポーツタイプ多目的車(SUV)「XC40」は10カ月近い納車待ちだ。「ボルボ車に乗ると日本車には戻りたくない人がほとんど」と話すボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長は、日本メーカーで東南アジア諸国連合(ASEAN)現地法人社長を務めた経歴を持つ。プレミアム商品強化がメーカー生き残りの鍵だと説く。

日系メーカーのASEAN拠点長を務めた経験のあるボルボ日本法人の木村社長=東京(NNA撮影)

日系メーカーのASEAN拠点長を務めた経験のあるボルボ日本法人の木村社長=東京(NNA撮影)

――ボルボカーズ株を米フォードが中国企業の浙江吉利控股集団(吉利集団)に売却した2010年以降、ボルボは世界的に販売を拡大させてきた。

箱型で頑丈という質実剛健のイメージから、安全性はそのままに「北欧テイスト」のデザインを前面に出したことがヒットした。出資関係がなくなったフォードの車台(プラットフォーム)を使用するという制約から解放され、自社車台でデザインの自由度が高まった。

エンジンのラインアップを整理し、排気量2000cc以下4気筒モデル以下とし、従来そろえていた5気筒、6気筒、V型8気筒などの製造を中止。ニッチなメーカーとして生き残るための「選択と集中」がやりやすくなった。資本は中国でも、経営はボルボとしての独立性を保っている。

デザインに関してはドイツ人が最も多く参加している。日本の良さを外国人が発見するのと同じように、北欧テイストをスウェーデン人以外のデザイナーが体現している。

車とインターネットをつなぎサービスを提供する接続性(Connected)、自動運転(Autonomous)、共同所有(Shared)、電動化(Electric)の「CASE(ケース)」時代になると、「保有」のプレミアムブランドと、「共有」のカーシェア用車(小型車・軽自動車)という二極化が進む。後者しかないブランドは生き残れない。

2010年以前のボルボは「準プレミアム」で、二極化の時代には生き残れなかったはずだ。しかし、今ではプレミアムのカテゴリーに位置づけられる内容と価格となった。

――「日本カー・オブ・ザ・イヤー」で、ボルボ車が17年にSUV「XC60」、18年に「XC40」と2年連続本賞を受賞した。

全体市場は頭打ちの日本だが、成熟市場でもある。よりプレミアムな自動車のニーズは輸入車を中心に強く、ボルボにとっては悲観する市場ではない。

メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのドイツ高級車御三家のユーザーは、黒い内装色を比較的好むようだ。しかし、ボルボは北欧の淡い太陽光の中で培われた色使いが特徴で、繊細な日本人にも受け入れられている。シートやダッシュボードも明るい色が好まれている。

日本では、買い替え時に日本車から欧州車に乗り換えると、再び日本車に戻るケースはほとんどない。私自身も日本車ばかりだっただけに、ボルボの走りや内装の質の違いに驚いた。

■「安全」が売れる時代に

――20年までに新しいボルボ車に搭乗中の事故における死亡者または重傷者をゼロにする「ビジョン2020」のテレビCMを行っている。

安全対策はボルボの強みだ。

スウェーデン本社から約100キロメートル圏内で起きた事故に関してはボルボの事故調査隊が事故検証を行うほか、けがをした人の追跡調査(けがの状況や回復)も保険子会社を通じて行い、より安全性を追求した開発につなげる。例えば高速道路などで車間距離を一定に保つ「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」など、安全装備や運転補助機能ではグレードでオプションにすることもなく、日本では一律標準装備だ。

この業界では30年前「安全では、売れない」と言われていた。今のボルボのCMは、数年前だったら「響かない」CMだっただろう。しかし、日本では高齢者による悲惨な暴走事故が大きく報道され、安全への関心が高まっている。壊れない、ぶつかっても被害を最小限にする、という開発に加え、この数年では「ぶつからない車」の開発にも力を入れている。

ボルボでは、各車に速度制限を自由に設定できる「ケア・キー」を20年の夏以降標準装備する。免許取りたての子どもを持つ親向けとして開発されたが、日本では高齢者向けとして注目を集めている。

――日本での販売計画は。

安定的に年間約2万台の水準を目指す。大幅な販売拡大計画はない。現在の約100店舗のディーラーを増やす計画もない。工場のあるベルギーやスウェーデンからのタイムリーな輸入や納車が喫緊の課題だ。

――電気自動車(EV)の米テスラなどの新興メーカーがディーラー不要論を唱えるなど、ディーラーのあり方が問われている。

車は必ず壊れる。なのでディーラー不要論や直販という考えには違和感がある。ディーラーとユーザーの関係は「売ったらおしまい」にはならない。ボルボでは購入3年内に6回の無償メンテナンスを行っている。ユーザーとディーラーの付き合いの中から、ブランドへの信頼感や愛着が醸成され選ばれる車を目指す。

――小型SUV「XC40」は日本で10カ月近い納車待ちだ。

納車期間の空白を埋めるため、日本独自のサービスとして「ブリッジ・スマボ」というサービスを展開した。納車待ちの間、別の新車をつなぎ車として利用してもらう。初期費用を別にすると、月額は車両価格の1%だけだ。ユーザーにとっては2台の新車のボルボを楽しめるほか、ユーザーの使用後、認定中古車になるので、ボルボにとっても「1台の販売で2台売る」ことになる。

■外資も日系もプレミアムで生き残り

――木村社長は、日本でのレクサブランド立ち上げや日産自動車のタイ、インドネシア法人社長を歴任した。

CASE時代に必要なのはプレミアム車やブランドをどれだけ持っているかだ。中国で日本車のシェアはまだ低いが、プレミアムブランドで売っているので生き残れる。

一方、ASEANは日本ブランドの牙城という状況が続いている。ただ、「いいものを安く」という日本車のコンセプトに「飽き」がでていないのかが気になる。 「一番のプレミアム」と呼ばれる抜きんでた商品を出し続けることが今、ASEANでも求められていると思う。(遠藤堂太)

<プロフィル>

木村隆之ボルボ・カー・ジャパン社長

1987年 大阪大学工学部卒、トヨタ自動車入社。以後トヨタ・ヨーロッパなどの商品企画、レクサス国内事業立ち上げ担当などを歴任後2006年に同社退職。その後、ファーストリテイリング(営業支援統括部長兼ユニクロ大学部長)を経て、09年4月からインドネシア日産自動車社長、12年4月からアジア・パシフィック日産自動車兼タイ日産自動車社長。

14年7月からボルボ・カー・ジャパン初の日本人社長として現職。


関連国・地域: 中国香港台湾韓国タイベトナムミャンマーカンボジアマレーシアシンガポールインドネシアフィリピンオーストラリアインド日本欧州
関連業種: 自動車・二輪車

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