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【アジアで会う】福田渉さん 静岡県東南アジア駐在員事務所長 第258回 デジタル技術で観光資源をPR(シンガポール)

ふくだ・わたる 1974年静岡県浜松市生まれ。名古屋大学法学部を卒業後、同大学の大学院国際開発研究科に進み修士号を取得。2000年に静岡県庁に入庁する。09年から2年間、日本政府観光局(JNTO)東京本部に出向。県庁の文化・観光部を経て今年4月、東南・南アジア、オセアニアを管轄する静岡県東南アジア駐在員事務所の所長に就任。趣味はサッカー。日本でプレーしていたフットサルをシンガポールでも続けたいと思っている。妻と一男二女を日本に残し、単身赴任。

4月に静岡県東南アジア駐在員事務所長としてシンガポールに赴任した福田さん。県庁への入庁以来、海外勤務は初めてだが、シンガポールやマレーシア、タイは思い入れのある場所だ。

静岡県庁に入庁後、公共、総務部門での勤務を経て、JNTO東京本部に出向した際に担当したのがこの3カ国だった。インバウンド(訪日外国人)誘致のため各国の観光フェアなどを訪れ、現地の「業界の空気」にじかに触れた体験は、今の仕事に生かせると考えている。「当時交流のあったシンガポールの業界関係者とも再会しました。またこの国に戻ってこられて幸運です」と話す。

JNTO時代に感じたのは、日本の受け入れ側と外国人旅行客側の目線の違いだ。温泉地として有名な伊豆地方を抱える静岡県は、旅館の数が日本の都道府県の中で一番多い。伝統的な旅館から「ベッドがないので外国人に来てもらうのは困る」といった声が聞かれたが、実際には「日本の生活文化を体験したい」と考える外国人は多い。無理に旅行客に合わせるよりも、今ある施設でどう楽しんでもらえるかが重要だと気付いた。「あれから10年近くたち、シンガポールに赴任して日本と海外の現場の声をつなぎ合わせる大切さをあらためて感じます」と語る。

シンガポールを含む東南アジアからの訪日旅行客が増加基調にある中、静岡県を訪れてもらうには、「シズオカ」の名前を全面に出すよりも、「富士山が見えて楽しい体験ができる場所」という観光資源としての価値をPRしたいと考えている。そのための取り組みとして、同駐在員事務所では、域内の若者向けに会員制交流サイト(SNS)を通じて県内のレジャー・遊び体験スポットを紹介するなど、情報発信力を高めていく意向だ。

SNSなどデジタル技術を活用して情報発信する重要性を意識した背景には、米国での留学体験がある。JNTO出向から県庁に戻り数年たった頃、米スタンフォード大学アジア太平洋研究所に県から派遣され、研究員として2年を過ごした。デジタルメディアを使った観光誘客を調査するのが目的だった。同大学があるシリコンバレーには観光分野を含む多様な新興企業が集まっていた。米民泊大手エアビーアンドビーが台頭してきた時期で、デジタル技術の有用性を肌で感じた。

■県内企業の人材獲得に貢献したい

同駐在員事務所にとっては、観光客誘致だけでなく、域内進出を目指す県内企業の活動支援や、県産品の輸出拡大、静岡と域内各国・地域政府間の交流促進も重要な「任務」だ。

県内企業の活動支援については、静岡で盛んな自動車・二輪車産業の関連企業が東南アジアに多く拠点を設けている。域内進出が一巡した今、ビジネスセミナーなどを通じて企業同士の横のつながりの構築を後押ししている。

最近気になるのは、県内企業の人手不足だ。中小企業からは「若手後継者がいない」と嘆く声が聞かれる。問題は深刻で、海外の優秀な人材を採用したいという相談も受ける。県内企業の人材獲得に貢献できるよう、域内で人材獲得につながる「チャンネル」を増やしたい考えだ。

■自転車を新たな観光資源に

今期待を寄せているのは、県内での新たな「観光資源」の創出だ。2020年の東京五輪・パラリンピックでは、静岡県内で自転車競技が開催される。もともとロードレースのコースには含まれていなかったが、国際自転車競技連合の関係者から「富士山を見ながら走りたい」との要望が挙がり、ゴール地点に静岡が選ばれた。

県内には、日本で初めて自転車トラック競技の世界標準仕様を導入した自転車競技施設や、国際レース対応の富士スピードウェイがある。新しい自転車の聖地として、シンガポールを含む東南アジアからサイクリング目的で静岡を訪れる人が増えることを願っている。

「今後は観光で静岡を訪れるだけでなく、仕事や勉強などで滞在し、生活者となる外国人も増えてくれればうれしい」と話す福田さん。シンガポールから静岡の経済活性化に貢献したいという熱い思いが伝わってくる。(シンガポール&ASEAN版編集・清水美雪)


関連国・地域: シンガポール日本
関連業種: 社会・事件

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