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【プロの眼】送り出した海外駐在員をフォローする“仕組み” 定期的に電話で声を聞く、早期発見が大事

渡航メンタルヘルスのプロ 勝田吉彰(5)

日本本社の担当者からルーティンとして連絡をとっていく中で、対処すべき事例の早期発見、そして大事に至る前に対策を取ることも可能になる

日本本社の担当者からルーティンとして連絡をとっていく中で、対処すべき事例の早期発見、そして大事に至る前に対策を取ることも可能になる

海外駐在が決まると、出国までの間は多忙を極めます。ビザやワクチン接種などの渡航準備と並行して、業務の引き継ぎや転勤先業務の把握、連日連夜続く送別の宴――。しかし、いざ現地に着任すると“去る者日々に疎し”とばかりに、仕事上の指令を除いて連絡が途絶えます。なんとなく見捨てられたような感情を抱き、孤独に苛まれることも。そんな中、着任して数カ月間のメンタルの危機(https://www.nna.jp/news/show/1902876)、気候風土の変化から体調が本調子ではない、アルコール問題、メンタル疾患の初発、希死念慮(死にたいと思うこと)――などさまざまな問題が発生しても早期のサインがキャッチされないという問題も発生します。

海外勤務者を派遣する企業には、送り出した後にフォローする“仕組み”が必要です。まずは定期的に会社の人間が電話をかけて本人や家族の様子を聞く。“仕組み”というのは、相手によって対応を変えないという意味を込めています。「あの人は棒で殴られても平気そうな頑丈な人だから大丈夫だろう」と思って気に掛けないということではなく、海外勤務という特殊な環境では誰でもが日本国内とは異なるストレスがかかるという視点で、「決まり事」「ルーティン」としてコンタクトして声の調子を含めて耳を傾けます。

ただ直属上司の電話では、即、仕事の話になってしまいがちですから、総務なり人事なり産業保健スタッフなり、その作業の担当者を決める。「あの人は鋼のメンタルの持ち主だからOKだろう」などといった主観的考察は一切抜きにして、一律「決まり事」としてコンタクトする。「あの人は本社から気に掛けてもらっているが、自分はないがしろにされている」といった邪推を呼ばないためにも、一律に必ずコンタクトします。そうして決まり事として、仕組みとしてルーティンに連絡をとっていく中で、対処すべき事例の早期発見、そして大事に至る前に対策を取ることも可能になります。

■海外派遣の成功を左右する現地事情の把握

社員の海外派遣が成功するかどうかは、本社側が現地の環境、ストレス要因、インフラ、人的要因などをきちんと把握できているかどうかにも大いに左右されます。例えば、筆者はこれまで海外在留邦人のメンタルヘルス研究の中でアンケート調査を行ってきました。「日本の本社/日本社会に知って欲しいこと」の設問に対して書き込まれたものの、ほんの一部を紹介します。

いかがでしょうか。このような内容を、本社で把握しているでしょうか。

安全配慮義務を確保するためのコスト、治安が良いと思われている国でのリスク、一般報道と実際の違い、限界――さまざまな問題が凝縮されています。経営層、総務人事関係者、産業保健関係者はぜひ、現地を訪問して、こういった要素についてしっかり自分の目で把握し、また社内でも情報共有していただきたいと思います。

<プロフィル>

勝田吉彰(かつだ・よしあき)

臨床医を経て外務省医務官としてスーダン、フランス、セネガル、中国に合計12年間在勤。重症急性呼吸器症候群(SARS)渦中の中国でリスクコミュニケーションを経験。退官後、近畿福祉大学(現・神戸医療福祉大学)教授を経て関西福祉大学教授。専門は渡航医学とメンタルヘルス。日本渡航医学会評議員・認定医療職、多文化間精神医学会評議員、労働衛生コンサルタント、医学博士。

ブログ「新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~」<https://blog.goo.ne.jp/tabibito12>、「ミャンマーよもやま情報局」<http://www.myanmarinfo.jp/

※特集「プロの眼」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年6月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 日本
関連業種: 医療・医薬品雇用・労務

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