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【アジアで会う】VKバルマさん ヒンディー語教師 第248回 言語を通じて「インド大使」育成(インド)

ビムレーシュ・カンティ・バルマ。1943年、北部ウッタルプラデシュ州アラハバード生まれ。64年にアラハバード大学で博士号を取得。翌65年から首都のデリー大学で教壇に立つ。専門は、インド古典手稿の本文批評。

インドの公用語であるヒンディー語の習得は、インドを知る入り口の一つだ。語学学校に通う、留学する、もしくはオンラインで学ぶなど、語学習得には需要に応じてさまざまの方法がある。ところが、そのどれもがなかった1970年代の社会主義体制下のブルガリアで、初めてヒンディー語を教えたインド人がいる。

■英語が通じないブルガリア

バルマさんは、インドとブルガリア両政府の最初の文化交流事業として、74年から78年までブルガリアの首都にあるソフィア大学でヒンディー語を教えた。妻ディーラさんとブルガリアに着いてすぐに、言葉が通じないことに気がついた。空港の案内板のキリル文字が読めず、英語で話しかけても誰も理解できない。空港に迎えに来たブルガリア人のメイドをしているという中国人の女性が、片言の英語で「ここでは英語はほとんど通じない」と教えてくれた。

困ったのはヒンディー語の授業。「ブルガリア語を知らない自分が、英語もヒンディー語も通じないブルガリアの学生にどうやって教えればいいのか……」。最初のうちはヒンディー語と身ぶり手ぶりで説明。学生からのブルガリア語の質問は内容を推測してヒンディー語で返答した。

ブルガリアで最初のヒンディー語習得者となる1期生は6人いた。学生といっても、地理学者や哲学者などインドに関する何らかの研究者たちだ。そのため、質問はヒンディー語のみならず、ヨガやガンジス川についてなど多岐にわたった。ブルガリア政府の厚意で、妻と共に1日6時間、ブルガリア語を習ったが、ソフィア大で教え始めて1カ月が過ぎた頃、新たな課題に直面した。

■教材をゼロから作成

ブルガリアで最初のヒンディー語教材(NNA撮影)

ブルガリアで最初のヒンディー語教材(NNA撮影)

ソフィア大での任期は4年間だったが、帰国後も講義が続けられるようにと教材の出版を依頼された。妻と協力し、文法、発音、語彙(ごい)の分野でそれぞれ1冊ずつ、3年間で3冊を出版した。大変だったのは、ヒンディー語部分を手書きした1冊目。バルマ氏が当地で最初のヒンディー語教師だったように、当時のブルガリアにはヒンディー語の文字(デーバナーガリー)を印刷する機械がなかった。650ページに及ぶヒンディー語部分を自筆し、言葉での説明が難しい項目には妻ディーラさんの手描きのイラストを添えるなど工夫した。2冊目以降は、インド政府から届いたタイプライターで書いた。この時に発行された最初のブルガリア語―ヒンディー語辞書は、今でもブルガリアで使われているという。

任期満了が近づいた頃には、ブルガリアを代表する作家アントン・ドンチェフ氏の小説「別れの時」や、ブルガリア政府高官が執筆に携わった「ブルガリアの歴史」をヒンディー語に翻訳して出版する依頼を受けた。責任の重い仕事ではあったが、数年かけて実現させた。その功績が認められ、両国の絆を強めたとして、ブルガリア政府から81年と2004年に2度表彰された。

■定年後も精力的に活動

1984年から87年にフィジーでインド系移民の使うヒンディー語の研究に携わった後、88年にデリー大学に戻った。2005年に定年退職してからも、外国人にヒンディー語を教えている。教え子の中には、自国でヒンディー語の教師になった人や、ヒンディー語と自国語の辞書を出版した人もいるという。「教師の仕事は、バニヤンツリー(ガジュマルの木)を育てるのに似ている。種を植え、水をやったり太陽に当てたりすることで、日々新たな成長を見ることができる。ヒンディー語を学んだ学生たちが成長し、世界でインド大使の役割を果たしてほしい」。精力的な活動の裏には、そんな思いがある。(インド版編集・福井円香)


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関連業種: 社会・事件

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