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【「スポーツ×アジア」の新時代】タイの英雄 ティーラシン in HIROSHIMA

アジアのサッカーファン呼び込め

2018年のシーズンを2位で終えたサンフレッチェ広島。惜しくも優勝は逃したものの、J1残留チーム中最下位だった前シーズンから大きく躍進した。その立役者の一人となったのが、18年から新たに加入したタイ人フォワードのティーラシン選手だ。同選手の活躍を見ようと、広島を訪れるタイ人も増えた。「タイの英雄」がピッチ内外でチームと地域にもたらしたものは大きい。

タイから応援に駆けつけたファンと記念撮影

タイから応援に駆けつけたファンと記念撮影

広島の外国人観光客は欧米人が目立つ

広島の外国人観光客は欧米人が目立つ

■開幕デビュー戦でタイ人初ゴール

18年2月24日のJリーグ開幕戦。ティーラシン選手は、同じくタイ出身のチャナティップ選手が所属する北海道コンサドーレ札幌戦に先発出場した。前半28分、左サイドからのクロスにティーラシン選手が頭で合わせ、ボールはゴール右隅に突き刺さった。J1でタイ人選手が初めて得点を挙げた瞬間だった。チームは1―0で勝利し、ティーラシン選手はこれ以上ない鮮烈なJリーグ・デビューを飾った。

18年シーズンを出場32試合、6得点で終えたティーラシン選手について、サンフレッチェ広島の山本拓也社長は、「得点以外のチャンスメークを含め、パフォーマンスには大いに満足している」と語る。「獲得はあくまでチームの戦術の観点から。集客などの運営面を考慮してのことではない」と説明するが、ピッチ以外でティーラシン選手がもたらしたものも大きい。

例えば、同選手の加入を機に、リーグ開幕前のトレーニング・キャンプをタイで行い、現地で子供向けのサッカー教室も開催するなど、広島とタイの結びつきは確実に強まった。

また、大塚グループでタイで健康飲料・食品事業を展開する大塚ニュートラシューティカル(タイランド)は、「ポカリスエット」のCMアンバサダーにティーラシン選手を起用。日本への観戦ツアーが当たるキャンペーンも行った。

広島でもティーラシン選手の活躍をアジアからの旅行者増加につなげようという機運が高まった。広島県には、年間118万人(16年)の外国人が訪れる。旅行者の国・地域別割合は米国が15.9%で最多。オーストラリアが11.7%で続き、中国9.1%、香港8.6%、台湾6.7%とアジアからは1桁台にとどまる。アジアへの訴求力を高めれば、さらなる観光客の増加が見込める。

山本社長は、「まだまだ雑談レベル」としながらも、「タイ人向けに日本への観戦ツアーや日本語留学を組み合わせたインバウンド観光につなげられないか行政とも話している」と語った。

■広島市が新スタジアム検討

一方、広島市は、サンフレッチェ広島を盛り上げようと、新たなサッカー・スタジアムの建設を計画している。広島市スポーツ振興課の山本将矢課長は「プロ野球の広島カープは新スタジアム建設がひとつの起爆剤となり、チームが強くなり、観客動員数も飛躍的に伸びた」と説明。新たなサッカー・スタジアムがスポーツを通じた国際交流の場になるとの見通しを示した。

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■ティーラシン選手インタビュー

「Jから学びたい」

──欧州でのプレー経験もある「タイの英雄」が日本のJリーグを選んだ理由は何ですか。

欧州とJリーグを比べたことはない。日本のプロリーグでプレーすること自体、決して簡単なことではない。個人的にはJリーグでのプレーを通じて、日本式の練習やサッカーに対する考え方を勉強したい。また、Jリーグでのプレーは自分の実力を試す機会とも考えている。

──昨シーズンを振り返って、ご自身のパフォーマンスをどのように評価していますか。

フォワードとして、得点機に決めきれたゲーム、決めきれなかったゲームがあるが、総じて非常に幸せなシーズンだった。Jリーグでのプレーを通じて、さまざまなことを吸収できた学びの多い1年だったと思う。

──日本とタイのサッカークラブの違いは何でしょうか。

「プロフェッショナル精神」「規律」「練習の濃さ」の3つが挙げられる。Jリーグに比べて、タイ・リーグの歴史は浅い。選手の意識もJリーグの立ち上げ当初の状況に近いのではないか。日本人選手の自己管理への意識は高く、オフも含めてサッカーを中心に据えている。

──ティーラシン選手のようにJリーグで活躍するタイの選手は今後増えると思いますか。

日本でプレーするタイ人が増えてほしい。そのためには各選手がもっとクオリティーを向上させる必要がある。タイ人は日本人選手にはない付加価値を発揮できないとJリーグのチームに所属するのは難しい。時間はかかると思うが、日本人にはない特長を持った選手が増えてくれればいい。

──広島での生活はいかがですか。

広島は大きな街ではないが、静かな環境が気に入っている。バンコクに比べると、日本の冬はかなり寒いが適応していくつもりだ。一緒に暮らす妻と2歳の息子も広島の生活を楽しんでいる。休日は家族と外食に行ったり、散歩したりして過ごす。飲食店や子供を遊ばせることができるプレイ・ルームが完備されたショッピングモールが気に入っている。日本食はすし、お好み焼き、うな重、鉄板焼きなどが好きだ。

<プロフィル>

1988年6月6日生まれ。身長181センチ、体重76キロ。タイ代表国際Aマッチで95試合に出場し42得点を誇る同国サッカー界の英雄。2018年にタイのムアントン・ユナイテッドFCからサンフレッチェ広島にレンタル移籍。シーズン終了後、期限付き移籍期間満了により広島を退団した。

※特集「『スポーツ×アジア』の新時代」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年1月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: タイ日本
関連業種: 社会・事件

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