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【アジアで会う】飯田光孝さん 3Rコンサルタンシー代表 第232回 再起をかけた経営人生(タイ)

いいだ・みつたか 1956年生まれ。愛知県名古屋市出身。東京大学工学部卒業。トヨタ自動車の在籍中にタイへ赴任。退社後は自動車部品メーカーのフコクでタイ子会社2社の社長を兼任した後、医薬品メーカーの広貫堂社長などを歴任。現在は独立し、タイで経営コンサルティング会社3Rコンサルタンシーの代表を務めるほか、日本食店「大の樹」のオーナーとして知られる。生活の4割をビジネス、6割を奉仕活動にささげる。

「毎日必死ですよ、本当。今日はもうだめかな、という日があるもんね」。経営に人生をささげてきた30年以上。振り返れば、アジア通貨危機、労働争議の勃発、独立の失敗と、人生の挫折は幾度も経験し、そのたびにはい上がってきた。それでも、「いまがどん底だ」と笑う。

これでは人生終われない。新たに設立した3Rコンサルタンシーの「3R」には「リストア(復活)、リバイバル(再生)、リベンジ(復しゅう)」の意味を込めた。人生の絶望に直面したいま、新たな挑戦に立ち向かっている。

絵に描いたようなエリート人生を歩んできた。東大卒業後、当時まだ国内市場が中心だったトヨタの海外事業を担うエースとして、研修で訪れたのがタイとの出会い。2年間の研修を終える頃には「自分の道はこの地域の専門家になることだ」と確信した。帰国してから数年後、本格的なタイへの赴任が決定した。

ただ、3年の任期を終えて帰国すると、「企業の歯車として働くことに違和感を覚えた」。タイでまだやり残したことがある。90年代の初め、周囲の反対を押し切って退職した。

独立後、晴れてタイで工業団地の販売事業などを開始するも、世の中は甘くはない。事業の失敗、交通事故などの不遇が重なり、夢は簡単に破れた。その後、オーナーと親交のあったフコクに再就職し、タイの合弁会社に派遣された。ここから本格的な経営人生が始まった。

■搾取構造から参画型経営へ

90年代のタイは、まさに自動車産業の興隆期。80年代に10万台を推移していた生産台数は、90年以降、60万台まで拡大した。急速な生産拡張に伴い、自動車部品の新工場を稼働した翌年、あのアジア通貨危機が襲った。

バーツの価値は2分の1以下、仕事量は4分の1に減った一方、材料費は2倍、支払い金利は4倍に膨らんだ。現法社長として、従業員を大幅に削減するなど、痛みを伴う改革が求められた。「方針なんてなくて、やりながらどうしていくかの毎日。真っ暗の中を先が見えずに進んでいった」

そんな中で、注力したのは組織やルールの作り直し。それまでタイの製造現場で一般的だった労働の搾取構造から、朝会や日報などのコミュニケーションを取り入れ、従業員参画型の日本的な経営にシフトした。内部の結束が強まった頃には、市場も徐々に回復。経済危機から7年経ち、過去最高の売上高、純利益を計上した。

■1,000人が反旗翻す

ここでやることはやった。潔く身を引いた後、製薬会社という、思いも寄らぬ所から経営の立て直しを頼まれた。市場状況や製造工程も分からない。「やってみなければ分からないと、怖い物知らずで始めた」

広貫堂が目指していたのは、国内の売り上げが減少する中で生き残りをかけた海外展開。自分に与えられた時間は長くはない。相次いで海外拠点を立ち上げ、タイを含む6カ国・地域の現地法人の代表を兼任。心身ともに酷使した。資金や人材が乏しい企業が成長するには、外部の力を借りる必要がある。経営改革を開始してから2年目。大企業から資本と商品、人を注入してもらうことが決まった。

これで次の段階に進めるといった矢先。従業員1,000人が反旗を翻した。「企業文化を変えるには、まず自己否定をしなければならない」。保守層の反発は根強く、志半ばで地位を追われることとなった。

■「自分は思い上がっていた」

このままでは終われない。これまで経験した日本企業が抱える経営の問題を支援するために、3Rコンサルタンシーを立ち上げた。現在はコンサル業務のほか、自らがオーナーを務める大の樹や、整体、ITなど多様な業種に投資。高齢化が進行するタイで、来年からリハビリを専門とした新事業を計画するなど、挑戦心はとどまることを知らない。

ただ、経営に対する思いはここに来て変わり始めた。「(人生の)上昇気流にいた時は、少し思い上がっていた。自分は成功者で、言っていることは正しいと。でも、それは会社や、いろいろなものから守られていただけ。もっと相手と膝を詰めて、相手の気持ちが分かるような対応をしなきゃいけなかった」

これまでの経営人生を振り返り、いまが一番辛いという。ただ、自省をする日々の中、あつれきのあった人々への「復しゅう心」はいつしか消え去った。いま、3Rに込める意味は、「リクリエーション(作り直し)、リハビリテーション(復帰)、リラックス(くつろぎ)」に変わっている。(タイ版編集・安成志津香)


関連国・地域: タイ日本
関連業種: 社会・事件

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