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【2017年の10大ニュース】矛盾が噴出した豪州

今年のオーストラリアは、政治や経済、社会が抱えるさまざまな矛盾が噴出した年だった。本来議員資格がない、二重国籍を持つ議員が次々に明らかになって政界が大混乱に陥ったり、資源大国にもかかわらず国内のエネルギー資源価格が高止まりし、電力価格が高騰して産業界が悲鳴を上げたり、外国人人材の活用を急速に縮小させようとビジネスビザの規制強化に着手したり。それらすべて、この国がこれまで改革を怠ってきた構造的矛盾だったと言えるだろう。
だが経済成長だけを見ると好調で、国内総生産(GDP)のプラス成長期間は世界最長を記録した。ただし、中国系投資に頼っていた不動産価格は頭打ちで、個人消費も低迷し、家計の債務割合も危険的水準にまで高まっているのを見ると、来年の経済見通しは楽観してもいられない。ターンブル首相率いる与党の支持率も、野党労働党を下回る状況が続いており、このままでは次に総選挙が行われた場合、労働党に政権を明け渡してもおかしくない状況だ。
一方ニュージーランド(NZ)は、総選挙で長年政権を担ってきた国民党が第一党となったものの、第2位の労働党とNZファースト党が連立を組んで組閣したことは世界を驚かせた。国内では、オークランドなど各地で進む大規模インフラ開発がめじろ押しであるほか、酪農家の信頼感も高まっており、経済見通しは良好だ。若いアーダーン首相の手綱さばきを不安視する向きはあるものの、来年の景気が悪化しない限り、無難なかじ取りが続くと思われる。