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【有為転変】第115回 同性婚反対派の主張

オーストラリアで実施されている同性婚の是非を問う郵便投票は、20日時点で賛成派が約6割に達する勢いだ。反対派はやや盛り返しているとされるが、まだ投票していない層の4分の3が反対に回らなければひっくり返ることはない情勢だ。同性婚が実際に認められた場合、この国の社会はどう変わるのだろうか。あえて、劣勢である反対派の主張に耳を傾けてみたい。

シドニーの街を歩いていて驚かされるのは、市役所であるシドニー・カウンシルが、「イエスに投票しよう!」というフラッグを随所で掲げていることである。計260本のフラッグに、11万豪ドル(約1,000万円)の公的予算を計上したという。しかも苦情はこれまで23件しかない、というからまた驚く。

同性愛者への偏見がまだ根強い日本と比べ、オーストラリアは社会制度的にも、少数派である同性愛者が生活しやすい社会になっている。それもそのはず、オーストラリアでは2008年以来、85分野の法律で、同性愛者のカップルを差別しているとされた項目が廃止・改正されている。同性愛カップルは現時点で既に、税金や退職年金、国民医療保険などの面で、男女の夫婦と同様の権利が認められているわけだ。

■同性婚カップルの子ども

同性婚反対派の中で、前面に立つのはキリスト教などの宗教系団体である。彼らはこう主張する。「同性婚が認められると、反差別法に基づいて、学校などで同性婚が権利であり、一般的なことだという教育がなされるようになり、同性婚に反対する宗教系学校の伝統的教えが禁止されたり、学校自体が廃止の窮地に立たされる」――。

これは、既に同性婚を認めた先進国の例から、学校や生徒が同性婚に反対する意見を発言する機会が奪われる例が相次いでいることなどを懸念したものだ。

例えば同様の移民国であるカナダでは、キリスト教の教会や学校が同国歳入庁(CRA)から、総選挙期間中に同性婚反対の主張を続ける場合、税優遇措置を取り上げると警告を受けたという。このことが即ち、同性婚とは一見無関係に見える「宗教的自由」や「発言の自由」と関わっていることを示している。

カナダでは、同性婚が認められて10年以上がたつ。同国の国勢調査によると、事実婚を含めた同性カップルは全カップルの0.8%。オーストラリアとニュージーランドは共に約0.7%だ。

カナダでは、同性婚が認められるや、同性カップルがこぞって結婚登録に殺到しただろうと想像されるがそうではない。意外にも実際に結婚した同性カップルはそのうち30%に過ぎない。またこの10年間に約1万人の子どもが同性カップル家庭で育った。この傾向は、他の国でも同様だ。

カナダの女性権利団体「Real women of Canada」によると、同性婚カップルの関係が破綻するまでの期間が平均2~3年と非常に短く、子どもへの悪影響が懸念されているという。

また米テキサス大学による3,000人の子どもを対象にした調査では、同性カップルで育った子どもは、経済的困難で生活支援を受ける割合が異性カップルの子どもと比べ4倍も高くなり、失業率は3倍高いという結果が出た。さらに、子ども自身が同性愛などになる割合は4倍高く、保護者からの性的虐待被害を受けた確率は10倍高い、などという衝撃的な結果も出たという。

また同性婚の後は、一夫多妻や未成年者の結婚といった方向にまで権利追求が発展することへの懸念も出ている。それを一笑に付すことができないのは、実際にそうしたケースがあるためだ。

オランダは同性婚を合法化して以来15年間、非嫡出子の割合が毎年2%ずつ上昇している。09年に同性婚を認めたスウェーデンでは、裁判所が当時14歳のシリア人難民女性と親類男性との結婚を認めている。また、昨年認めたイタリアではイスラム系団体が「一夫多妻も国民の権利」として合法化するよう求めているという。

■「子どもには選ぶ権利がない」

レズビアン女性2人の「両親」に育てられた米国人女性のケイティ・ファウストさんは、世界でよく取り上げられる。彼女が15年2月、米連邦最高裁に対し、同性婚を認めないよう求める公開書簡を送っているためだ。

「同性の2人が子どもを育てようとする時、養子であれ離婚であれ、その子どもにとって親が奪われることには代わりがありません。同性の2人が、男女の両親の代わりになるというのは幻想です。現在私は夫を持ち、子どもを持つ母親になり、初めて男性と女性が奏でる家庭の重要性をしみじみ感じています。同性婚を認めるということは要するに、『子どもには異性の両親か同性の両親かを選ぶ権利はない』『子どもは大人の感情や欲求を満たすために存在する』と言っているようなものです」。

郵便投票は11月7日に締め切られ、15日午前11時半に結果が発表される。賛成が多数だった場合、ターンブル政権は同性婚を合法とする改正法案を今年末までに議会に提出する。そうでなくても、次期総選挙で野党労働党が政権を握った場合、100日以内に同性婚を合法化すると公約している。

(NNA豪州編集部・西原哲也)


関連国・地域: オーストラリア
関連業種: 社会・事件

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