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《NNAフィリピン》20周年記念セミナー

NNAフィリピンは9月14日、現地法人の設立20周年を記念したセミナーをマニラ首都圏マカティ市で開いた。第1部ではエヌ・エヌ・エーの岩瀬彰社長が、ネット時代の情報戦略について解説。第2部ではアテネオ大学経済学部のシエリト・ハビト教授が、フィリピンの経済成長や懸念事項について講演した。セミナーには日系企業関係者を中心に約60人が参加した。

「ネット時代の情報戦略~いかに正しい情報を選択するか」

株式会社エヌ・エヌ・エー代表取締役社長 岩瀬彰

■過渡期のメディア

メディアは過渡期を迎え、激変の中にある。以前は新聞をはじめとするオールドメディアにフェイクニュースを打ち消す力があったが、英国や米国では深刻なほどにオールドメディアの信頼度が下がり、その結果フェイクニュースを信じ込んで行動に移してしまう例が起きている。「企業のフィルターを通ってきた情報は信用できる」という読者との関係が崩壊し、オールドメディアの常識は既に常識ではなくなった。

ネット時代の情報戦略について解説する岩瀬社長=9月14日、マニラ首都圏マカティ市(NNA撮影)

ネット時代の情報戦略について解説する岩瀬社長=9月14日、マニラ首都圏マカティ市(NNA撮影)

米国では会員制交流サイトのフェイスブックや検索サイト最大手のグーグルの世論への影響力が強く、情報を独占した状態にあることで、フェイクニュースが拡散する傾向にある。ニュースメディア業界(NMA)は今年7月、議会に対し規制を要求している。

■フェイクニュースの見分け方

いわゆる「まとめサイト」はネット世界における関心の順位を示しているだけで、信用度は低い。根拠の提示がないオピニオンに情報としての価値はない。元朝日新聞の記者で「AERA」編集部などにも在籍した烏賀陽弘道氏は、著書「フェイクニュースの見分け方」(新潮新書)で、発信者不明の情報は捨てて、主語が明示されていない文章は疑えと述べている。

またコロンビア大学ビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授は著書「選択の科学」(文藝春秋)で、ベストなものを一つだけ選ぶとき、選択肢の多さは便利でも魅力的でもなく、集中力を妨げるだけと指摘している。

選択が必要な時に知識は重要な役割を果たす。「ローマ法王がトランプ大統領を支持している」というフェイクニュースが流れた際も、世界的な宗教指導者が特定の政治家への支持を表明するはずかない、というリテラシーを持ち合わせていれば見分けられたはずだ。

■メディアの役割をもう一度考える

インターネットが生活に入ってくる前、われわれはメディアが恣意(しい)的に選んだ情報を享受していた。やがてネット社会になり、誰もが「情報の海から、好きな情報を選ぶことができる」というキャッチフレーズに魅力を感じていたが、現在ではその海にも巧妙なフェイクが混じり、情報の海は混沌(こんとん)としている。

メディアは読者が必要とする情報を的確に選択し、効果的に分類して提示する必要がある。NNAは今後も引き続き緊張感を持って、選択・分類・確認で事実を積み上げ、信頼が得られる報道を心がけていく。

「フィリピン経済の現状と展望」

アテネオ大学経済学部 シエリト・ハビト教授

貿易のゼロ関税化などによって、2003~05年にフィリピンの製造業は成長し、東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々へ製品を輸出できるようになった。輸出入は非常に好調といえる。

フィリピンの経済成長や懸念事項について説明するハビト教授=9月14日、マニラ首都圏マカティ市(NNA撮影)

フィリピンの経済成長や懸念事項について説明するハビト教授=9月14日、マニラ首都圏マカティ市(NNA撮影)

また観光インフラ経済区庁(TIEZA、旧フィリピン観光庁)のキャンペーンが人気を博した上、官民連携(PPP)による地方空港の改善や、リタイア世代向けの設備を整えた医療観光(メディカルツーリズム)も盛んで、観光業が潤っている。ASEANでのクルーズ船運航も好調を支えた。

製造業、観光業ともに良好な成長を続けており、国内総生産(GDP)も悪くはない。全体として成長が認められるが、農業の伸び率が一定にとどまるなど、改善できる余地はまだある。

成長ぶりを表す数値の一つとして、貧困者比率の変化が挙げられる。12年に25.2%だった比率は15年に21.6%まで下がっており、ここまでの下落は他に例を見ない。海外への出稼ぎ率が下がる一方、失業率が改善している点から、より多くの雇用が生み出されていることも分かる。

一方、今年1~3月の経済統計上の数値には芳しくない点も目立つ。3月の消費者物価指数(CPI、2006年=100)上昇率は3.4%で、16年の2~3倍で推移。前年同月比では28カ月来で最高を記録した。

GDP成長率は比較的高水準だが、今年は6.4%となり昨年の6.9%からスローダウンする見通し。農業や水産業が黒字化しても、全体を押し上げるには至っていない。

15年間にわたり黒字を記録していた経常収支が赤字となったことも注意すべき点だ。外貨の流出が進んでいる。

■スローダウンの背景

高いCPI上昇率が原因で家計の支出が伸び悩んでいる。インフラや公共事業向け支出も伸びが滞っている上、政府がインフラ事業の実施について一貫性のある政策を示していない。固定資産投資の17年第1四半期の伸び幅は縮小傾向にあり、農業への投資も伸びが見られない。各種インフラ不足が抱えるリスクは深刻だ。インターネットの速度が遅いのは周知の事実であり、交通渋滞の問題も根深い。

さらに内戦やドラッグ問題などを背景に、外国からの直接投資(FDI)が伸びていない。近年は大統領の発言に対する欧州連合(EU)や米国の反発もリスクとなった。子どもの3分の1が栄養不足や発育不良で、彼らが労働年齢に達しても生産性が上がらず「スイート・スポット」(生産年齢の比率が高く経済が最も成長するタイミングである人口動態)を迎えられない恐れもある。これらの懸念を払拭(ふっしょく)しなければいけない。

■諸外国とのつながり方と政府の課題

外交政策においては、特定の国だけではなくどの国・地域とも友好的に付き合うべき。現在は貿易全体ではASEANが、輸出に特定すれば日本が、それぞれ重要なパートナーとなっている。フィリピンへの直接投資が最も多いのは米国。日本は2番目だ。しかし現状の外交は、フィリピン経済への貢献が小さい中国とロシアに偏っている。

フィリピン経済は成長しているが、他国と比べればいまだ立ち遅れた点も多い。輸出額におけるベトナムとの差は1,000億米ドル近くまで拡大している。FDIもタイやマレーシア、ベトナムなどの周辺国と比べ規模の小ささは一目瞭然だ。

政府のタイトな規制が投資を阻んでいる。さらなる経済成長には、諸外国に門扉を開くことが必要だ。拡大が続くフィリピン内の貧富の格差を縮めるためにも、先見の明を養って政策を変えていく必要があるだろう。

事業をする中で妨げとなる法律は改正されなくてはならない。広大な市場でのシェア獲得を目指した競争では、日本をモデルに中小企業をさらに発展させていくことが必要不可欠である。

<関連URL>

https://www.nna.jp/corp_contents/seminar/

https://www.nna.jp/news/result/1662310


関連国・地域: フィリピン日本
関連業種: マクロ・統計・その他経済

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