• 印刷する

《新規赴任者のためのベトナム法律セミナー》 「ベトナム法」基本ポイント

NNAベトナムは17日、ホーチミン市で「新規赴任者のためのベトナム法律セミナー」と題したセミナーを開催した。登壇した長島・大野・常松法律事務所ホーチミン・オフィス代表の中川幹久弁護士は、労働法を中心に、ベトナム法の基本を、事例を紹介しながら解説した。セミナーの後半では、NNAベトナムの小堀栄之編集長兼社長が、ベトナム経済の最近の動向について語った。

登壇した中川弁護士=17日、ホーチミン市

登壇した中川弁護士=17日、ホーチミン市

■ベトナムの特徴が出やすい労務関係

よくある労務問題の1つ目の事例として、引き抜き行為問題が挙げられる。

ベトナム共産党は憲法で「ベトナム労働者階級の前衛」とされており、社会主義国家であるため労働者保護に厚く、職業選択の自由が日本よりも徹底されている。それゆえ競合他社への移籍をしない旨の事前の合意は、有効性が否定される可能性がある。次善の策として、労働法上認められている研修契約や、秘密保持契約を締結しておくことが考えられる。

研修契約については、労働法62条に従い、所定の事項を規定して書面で作成した上、当該従業員と締結することになる。かかる事項としては「研修後に当該企業で働く必要がある期間」「研修費を返還しなければならない義務(があること)」が挙げられる。同条では、当該従業員が合意された期間内に会社を辞めた場合、有効な領収書による裏付けがある研修に要した一定の費用については返還請求が可能としている。また、労働者が直接、技術的・営業的秘密に関連する業務に従事する場合には、秘密を保持するための契約を労働者と協議の上、書面で締結でき、労働者の契約違反があった場合の補償についても規定できると労働法で定められている。

2つ目の事例として、キックバックの問題が挙げられる。

キックバック行為に対しては、懲戒処分を科すことを考える日系企業は多いと考えられるが、懲戒処分を科すにあたってはさまざまな点に注意が必要だ。懲戒処分に当たっては、罰金・減給を科す行為は禁止されている他、基本的に就業規則に違反行為として規定されていない行為に対して懲戒処分を科すことはできない。一方、労働法上懲戒解雇事由は限定されているため、懲戒解雇事由の一つとして同法上認められている「雇用者の知的財産権の侵害または雇用者の財産、もしくは利益に重大な損害または損失を与える行為、もしくは特に重大な損害または損失を与える恐れのある行為について有罪となった場合」の一つの例示としてキックバック行為も含めて定めておく試みも考えられる。

また、懲戒処分の手続きとして、雇用者には服務規律違反についての立証責任があるので、証拠収集も必要だ。

3つ目の事例としては、能力不足と解雇の問題が挙げられる。解雇事由は限定されており、「労働契約上の義務不履行を繰り返す場合」として解雇する場合には、具体的にいかなる義務不履行があるのかを主張できるよう、労働契約に詳細な職務内容や職務レベルを規定しておくことが重要である。ただ、近年の政令で、労働契約上の義務不履行に当たるかどうかを評価する基準は、社内規定において具体的に定めなければならないこととされたが、どのような内容であれば評価基準として必要十分なのか定かではなく、基準としての有効性の確認には不安が残る。また労働紛争となった場合、ベトナム労働裁判所における訴訟手続の問題点や、公平性への不安、判決内容の予測可能性が乏しいという問題も指摘されている。

上記のようなリスクを回避するためには、次善の策として、有期契約の活用、試用期間の設定や雇用契約期間による調整が考えられる。

■労働許可証の基本ポイント

労働法第170条では、基本的にベトナム人に務まらない業務に限り外国人の就労を認めることとしている。国内の雇用については、あくまでベトナム人を優先するというのが、外国人の就労に対する本質的な発想である。

管理職、専門家、技術者というカテゴリーで外国人の就労を認めており、それぞれのカテゴリーごとに異なる要件を課している。

人民委員会委員長の同意書が労働許可証取得のファーストステップである。前提として、外国人雇用の必要性についての報告・説明書の提出(外国人を雇用する日の少なくとも30日前までに提出)が必要である。取得には通常、半月から1カ月程度かかる。かかる同意書の取得後、労働許可証の取得申請手続きを行うことになる。

■外国企業による投資法制の最新実務

2015年7月1日に投資法が改正された。旧法では、外国投資家によるベトナム国内での投資において、業種を問わず投資証明書(IC)の取得が必要とされていたが、現行法では、会社を設立する際に投資登録証明書(IRC)取得後、企業登録証(ERC)を取得するという2段構成に変わった。

ベトナム政府は外国企業が投資をしやすくするための改正であると説明しているが、実際には手続きが煩雑で複雑化したのではないかと批判する声も多い。

それに対する改善策として、17年4月18日成立、同年6月15日施行の通達第二号で、外国投資家の投資登録および事業登録の両手続の対応について、連携メカニズムを規定するガイドラインが定められる。2段構成による手続きの煩雑さの緩和と、IRC・ERC当局間のやり取りで重複が避けられるようになるかどうかが期待されている。

旧法では明確に規定されていなかった、既存の100%ローカル企業の買収に必要な許認可について、現行法では一定の場合にM&A登録が必要とされることが規定され、IRCの取得は不要とされている。しかし、実際はM&A登録に加えIRCの取得も要求される場合が多い。

■消費市場としてのベトナム

都市部の所得と中間層が拡大し、1人当たり国内総生産(GDP)は国全体で2,050米ドル(約22万8,200円)、ホーチミン市においては5,200米ドルを超えている。

2020年には富裕層が全体の1.7%、中間層が48%まで増えると予測されており、共に10年比で1.9倍になる。

特に20代の女性に加え、30代前半の夫婦の購買力が拡大している。

韓国系企業は先占を目指し、1992年から繊維系企業、2000年から電機・電子系企業、00年末からは消費系企業が相次ぎ進出している。リスクを恐れない、短期間での意思決定が特徴といえる。グループで進出して競争力を高め合っており、ロッテグループやCJグループが1カ所に集積してプレゼンスを発揮している。

日系企業ではイオン、ミニストップ、ファミリーマート、高島屋といった小売業の進出が著しい。特にイオンは日系のプラットフォームになっている。

日系は安心・安全・清潔が強み。物産展の開催やアンテナショップの開設もあり、コンビニでもジャパンフェアが催される。

飲食市場も活況で、15年時点で店舗数は11万店、売上高は300兆ドン(約1兆4,700億円)に上る。20年までに店舗数14万店、売上高400兆ドン超えが見込まれており、非常に有望である。

■日系外食市場の最新動向

外食チェーン大手のゴールデンゲートは鍋料理「キチキチ」や焼き肉「GoGi House」など多ブランドを武器に事業を展開。日本ブランドにも関心が集まる中、フランチャイズ(FC)で「大阪王将」も経営している。現在の15ブランド190店を、20ブランド500店まで増やす目標を掲げている。

日系企業は価格以外で勝負する動きが目立ち、南部に8店を展開する丸亀製麺は、オープンキッチンに加えトッピングを選べるエンターテインメント性で人気が高い。

ベトナム発の外食ベンチャーstardining(スターダイニング)は超高級すし店で差別化を図り、地場系とは異なる「別解」を示している。

--

セミナーは19日にもハノイのタンロン工業団地で開催され、講師として長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス代表の澤山啓伍弁護士と小堀編集長兼社長が登壇した。


関連国・地域: ベトナム日本
関連業種: マクロ・統計・その他経済雇用・労務

その他記事

すべての文頭を開く

自動車ショーの出展数が倍増 現地生産モデルが台頭、中国車も(02/24)

イオン、ネット配送を本格化 多忙な現代人の需要取り込み(02/24)

【書籍ランキング】2月6日~2月12日(02/24)

東南アIT業界への投資活況 1億ドル企業ひしめく、多様化へ(02/24)

(表)各国・地域の新型肺炎感染者数(23日正午) イタリアで2人の死者、強まる日本への警戒(02/24)

新型肺炎が花見シーズン直撃 訪日台湾人、過去15年で最少か(02/24)

ホンダ、四輪工場閉鎖 3月下旬、生産体制見直しで(02/24)

30年に新車生産147万台目標 自動車政策発表、優遇は明記せず(02/24)

トヨタが地方展開、ハイラックス生産にらみ(02/24)

ダイセイグループが事業拡大 運営統合、コンテナ飲食店も開業(02/24)

すべての文頭を開く

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン