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【識者に聞く】「新排ガス規制、自動車分野の投資拡大に期待」ほか

NNAが日々伝えるアジアのニュース。読者の関心が高かった5カ国・地域のトピックについて、識者が分析・解説した。

<Topic1>

南方航空、広州―メキシコ線が就航

(NNA POWER ASIA 2017年4月14日付、中国・メキシコ)

中国・広州市に拠点を置く航空大手の中国南方航空は4月10日、カナダ・バンクーバーを経由して、広州とメキシコ市を結ぶ国際路線を就航した。同便は中国の民間航空会社として初めてのメキシコ線となるとともに、広州で唯一の中南米路線となる。中国メディアによると、初フライトは10日に広州を出発し、11日夜にメキシコ市に到着した。運航は週3便で、往路は月曜、木曜、土曜、復路は火曜、金曜、日曜となっている。飛行時間は約19時間で、南方航空の国際路線の中では現在最も長い。

広州から出発する便の最低価格は4,800人民元(約7万6,000円)、その他の国内都市から出発し、広州で乗り換えをする場合の最低価格は3,000元となっている。

<視点>

中畑貴雄 なかはた・たかお

日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部米州課 課長代理(中南米)。1998年にジェトロ入会。一貫して中南米の事業と調査に関り、2006年~12年までメキシコ事務所で調査担当ディレクター。12年から現職。メキシコ関連の講演や寄稿実績が豊富。著書に『メキシコ経済の基礎知識』(10年、14年)などがある。

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メキシコとアジアを結ぶ航空路線の新設や増便が相次いでいる。全日本空輸は2月15日に成田~メキシコ市間の路線を就航した。メキシコのフラッグキャリア、アエロメヒコは3月2日から成田便をそれまでの週5便から1日1便に増やしたほか、5月27日からは韓国ソウル便も就航する予定だ。

背景にはメキシコを訪れるビジネス客の増加がある。自動車産業を中心とする日本メーカーの進出ラッシュに続き、起亜自動車の工場建設にけん引された韓国系部品メーカーの進出も相次いだ。中国の自動車メーカーでは、安徽江淮汽車(JAC)が2017年後半から現地での組み立てを開始すると発表したほか、長城汽車が工場建設を検討中だと報じられた。

16年のメキシコへの空路入国者は日本人が10年前の2倍弱の13万2,976人、中国人が10.3倍の12万3,735人、韓国人が2.9倍の9万2,193人に達した。米トランプ政権の通商政策によりメキシコに悲観的な報道が多い中でも傾向は変わらず、17年1~2月の日本からの渡航者は前年同期比9.3%、中国からは17.4%それぞれ増えた。

メキシコ~アジア間の直行便はアジアへ向かうメキシコ以外の国の旅行者による利用も見込まれる。米国を経由する場合、トランプ政権下でビザの発給審査の厳格化が想定されるためだ。

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<Topic2>

新排ガス規制、自動車分野の投資拡大に期待

(NNA POWER ASIA 2017年4月7日付、インドネシア)

インドネシア自動車製造業者協会(ガイキンド)は、政府が四輪以上のガソリン車とディーゼル車に対し欧州排ガス規制「ユーロ4」の導入を決定したことを受け、自動車分野の投資が拡大するとの見方を示した。

現地報道によると、ガイキンドのリズワン副会長は、技術的にはすべての自動車メーカーがユーロ4適合車の生産が可能であり、人材の確保もできているものの、インドネシアに生産設備を導入するのに追加投資が必要になると説明。ただし、追加投資は事前調査に時間を要するほか、自動車各社は前年度末に本年度の事業計画を決定済みであることから、すぐに追加投資を行う企業は少ないとの見方を示した。

<視点>

塙賢治 はなわ・けんじ

日本政策投資銀行 東海支店次長。2002年に入行後、政策企画部、企業金融第1部、産業調査部などを経て17年より現職。自動車セクター担当歴10年超。素材や一般機械など製造業全般も担当する。

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自動車にかかる環境規制は、大気汚染対策にかかる排ガス(CO=一酸化炭素、NOx=窒素酸化物、PM=粒子状物質など)規制、地球温暖化対策にかかる燃費・CO2(二酸化炭素)規制などがある。近年は新興国でも大都市圏を中心に大気汚染が深刻化しており、このまま放置すれば国民の健康被害につながるため、各国政府は排ガス規制などを強化していると思われる。

東南アジアではタイが先行した。環境対応車を生産するメーカーへの優遇措置としてエコカー政策を導入、第1期(2007年)はユーロ4(欧州排ガス規制)、第2期(13年)はユーロ5を規格要件にしていた。

一方、インドネシアは相対的に対策が遅れ、低価格の環境対応車政策「ローコスト・グリーンカー(LCGC)政策」(13年)でも排ガス規格要件を定めていなかったが、今般、ユーロ4の段階的導入を決定したようだ。狙いは国内販売車と輸出車のグレード統一とみられる。排ガス削減にはコモンレール式燃料噴射装置、EGR(排気再循環)、DPF(微粒子捕集フィルター)、NOx還元触媒などのさまざまな技術を導入することが必要になる。今後はインドネシア国内販売車も海外仕様に合わせたクルマにしていくという意思表示なのだろう。

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<Topic3>

新法成立で通関簡素化、事業環境の向上期待

(NNA POWER ASIA 2017年4月12日付、タイ)

タイ政府の地方振興策「プラチャーラット」で官民共同事業部門のトップを務めるカン議長は、改正関税法が近く発効することに伴い、世界銀行の事業環境ランキングでタイの順位が上昇するとの期待を示した。4月10日付バンコクポストが報じた。

カン議長は「関税法を国際水準に見合うものに改正するため、官民で協力して取り組んできた」と強調。改正法では通関後の監査対象期間を従来の10年から5年に短縮するなどの簡素化が規定されており、世銀が毎年発表する「ビジネス環境の現状」報告書でタイの順位を押し上げる要因になるとの見方を示した。

<視点>

山本肇 やまもと・はじめ

野村総合研究所タイの製造業チームの自動車製造業シニアコンサルタントとして、タイ及び周辺国(ベトナム、ミャンマー、マレーシア、インドネシア等)の自動車関連の調査・コンサルティングプロジェクトに従事。2006年にタイのサシン経営大学院で企業幹部向け経営学修士課程(EMBA)を取得。市場調査会社勤務などを経て14年から現職。

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タイ政府が関税法改正法案を可決した。ポイントとなるのは、通関後の監査対象期間を従来の10年から5年に短縮することで、進出企業の潜在的なビジネスリスクが軽減されることだ。関税法では、過少申告に対して差額の2倍をペナルティーとして支払うため、遡及(そきゅう)期間が長ければ追徴金額が法外に吊り上げられるリスクがある。また日系企業からは、関税担当官により関税分類の解釈が異なることがよく指摘されており、こうした不透明な関税制度もリスクにつながる。

法改正の背景となっているのは、こうした投資リスクを引き下げ、外国投資の伸び悩みを打開することにある。労賃の上昇や労働力不足、国内市場の低迷などから、従来タイが優位性を持っていた自動車などの分野で投資が周辺国にシフトしているためだ。政府は、労働集約型から知識・技術集約度の高い産業分野に新たな投資を誘致するための施策を掲げているが、国際的なハイテク企業の誘致には関税制度の近代化が求められる。

ただ、タイの投資環境を引き上げるためには、法制度面だけでなく、当局担当者の判断の恣意(しい)性や透明性を改善するためのヒト・組織の抜本的な改革が欠かせず、今後の政府の取り組みが注目される。

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<Topic4>

エリクソン、5G技術開発で印工科大と連携

(NNA POWER ASIA 2017年4月3日付、インド)

スウェーデンの通信機器大手エリクソンは、第5世代(5G)の移動通信システムの開発でインド工科大学(IIT)デリー校と連携する方針だ。3月30日に覚書を交わした。PTI通信などが伝えた。

合意に基づき、エリクソンはテスト環境を含めた「中核的な研究拠点」をIITデリー校に設置する。一方の同校は、通信技術全般について、インドでの応用の可能性を探るという。テストの第一段階は、今年後半に開始される見通し。エリクソンはまた、連携の目的に「(政府が推進する)『デジタル・インディア』の加速化と業界全体の発展の後押し」の2点を挙げており、研究成果は新興企業を含めた国内の通信業界と一定程度共有されるとみられる。

<視点>

田村和輝 たむら・かずてる

1991年滋賀県生まれ。フリーランスで活動。アジアや大洋州の携帯電話事業を中心として海外における通信業界の取材・現地調査・記事執筆を手掛ける。東アジアと東南アジアはすべての国と地域で現地調査を実施し、北朝鮮や東ティモールなど日本人渡航者が少ない国の事情にも明るい。

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通信機器ベンダーは5Gの商用化に向けて世界各地の通信事業者、メーカー、その他の有力な各種研究開発機関などと連携を強化しており、エリクソンとIITデリー校の連携はその一環と考えられる。

エリクソンが5Gのテストベッドを含めた研究開発拠点をIITデリー校に設置することは、同社がインドを重視する姿勢の表れだ。インドの携帯電話市場は顧客数で世界2位の規模を誇る。米アップルなど主要な端末メーカーがインド事業を強化することからも分かるが、市場規模や経済成長率などの観点から魅力度が高い。通信機器ベンダーとしてもプレゼンスを高めておきたい市場であり、エリクソンは積極的に投資してくると予測できる。

技術力と信頼性の高い同社がインドに研究開発拠点を設けることで、5Gの実証実験など研究開発を高い水準で早期に進められるほか、高度な技術者の育成にもつながり、インドにおける通信業界の底上げが期待できることは確かだ。

インドでは厳しさを極める競争環境下で通信事業者の大再編が進み、端末メーカーの競争も激化している。ノキアがインドの通信事業者と5Gで連携するなど、受注に向けた通信機器ベンダーの争いも激しくなる見込みだ。

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<Topic5>

「台湾独立」支持率が10年で最低、出版社調査

(NNA POWER ASIA 2017年3月31日付、台湾)

台湾の大手出版社、遠見天下文化出版の世論調査部門が3月に行った最新の調査で、「台湾独立に賛成」と答えた人の割合が10年来で最低の23.4%に低下したことが分かった。中でも、20~29歳の年齢層で独立志向が薄れつつあるようだ。

調査は「台湾独立に賛成」「まず現状維持の後に検討」「永遠に現状維持」「(中国との)統一に賛成」の4つの選択肢を提示した。

中国との「サービス貿易協定」批准に反対し、立法院(国会)議場を占拠した「ヒマワリ学生運動」が行われた14年の調査では、「台湾独立に賛成」とした回答者の割合は28.5%だったが、今年3月の調査では同年比で5.1ポイント(p)低下した。「まず現状維持の後に検討」は16年9月の前回比で6.4p低い34.1%、「永遠に現状維持」を支持する人は4.6p高い20.2%だった。

20~29歳の回答者で「独立に賛成」と答えた人の割合は、16年3月の調査では36.8%だったが、同年9月では30.4%、今回は23.4%と下落傾向が鮮明に。「永遠に現状維持」は、16年3月調査が13.0%、同年9月が14.1%、今回が14.0%と安定推移している。「まず現状維持の後に検討」は、16年3月が35.8%、同年9月が46.7%、今回は45.0%で、全体の平均値を大きく上回っている。

<視点>

佐藤幸人 さとう・ゆきひと

日本貿易振興機構アジア経済研究所・新領域研究センター長。神戸大学大学院経済学研究科博士。1963年東京生まれ。1986年に東京大学経済学部を卒業し、アジア経済研究所に入所。2014年7月から現職。

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アンケート調査は難しい。回答者の間で質問への理解が異なるかもしれないからだ。

このニュースの重要な点は、台湾独立に対する支持が14年のヒマワリ学生運動の時から減少していることと、その一方で「永遠に現状維持」への支持が増えていることだ。また、20代の若者でも、独立支持が大幅に減少するとともに、「まず現状維持の後に検討」を選択する人が増えているという。しかし、独立や現状維持は14年と17年で同じ意味を持つのだろうか。

若者の多くは元々の独立派と違い、「台湾の現状は既に独立していて、不満が無いわけではないがそれでよい」と考えている。馬英九前政権は、その現状を変えようとしているとみられて反発を受けたのだ。当時、「独立を支持する」とは「現状を積極的に維持する」ことだったと考えられる。

これに対し、独立派の民進党政権に交代した今では、独立は現状維持以上の意味を持ち得る。若者をはじめ多くの人はそれを望んでいない。独立への支持が減り、現状維持が増えるのは自然だ。台湾の多くの人の今の考え方は14年と変わっていないと考えられる。変わったのは政治であり、その文脈の中で独立や現状維持の意味を持たれたのではないだろうか。

※特集「識者に聞く」は、アジア経済を観るNNAの新媒体「NNAカンパサール」2017年5月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。毎月1回掲載。


関連国・地域: 日本
関連業種: マクロ・統計・その他経済

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