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【アジアに行くならこれを読め!】『上海狂想曲』

■『上海狂想曲』

高崎隆治 著 文藝春秋

2006年8月発行 750円+税

戦時下のジャーナリズムを研究する著者によると、1931年の満州事変から45年の太平洋戦争の終結までとする「十五年戦争」という言葉は、誤解を招く言い方だという。「なぜなら、人は太平洋戦争下のように、十五年間一日の休みもなく戦争がつづいていたと思ってしまうから」(引用)だ。満州事変があったものの、戦前の日本人はその中国の国際都市、上海には大きな夢を抱き、日本内地で人びとの耳を奪った流行歌には上海をテーマにしたものも多かった。

本書は、そんな30年代半ばから日中が全面戦争に突入する37年までの上海の街や、上海を訪れた特派員作家らを、当時の文献を基にリアルに描く。前半に登場するバンド(外灘)や南京路(現在の南京東路)などのにぎやかな街の様子は、現在の上海をほうふつさせる。しかし、北京郊外で盧溝橋事件が発生すると、上海にもにわかにきな臭い雰囲気が漂い始め、「日本租界」のあった虹口一帯は戦地と化していく。

「上海という名を聞くたびに、いささかの痛みと哀しみと、そしてなつかしさが日本人の心の中をよぎるのはなぜだろうか」と著者は問いかける。上海は今も日本人にとって身近な都市だが、戦前生まれの著者が語る郷愁を含んだ上海観はかえって新鮮だ。

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「スパイに気をつけよ」というビラは虹口のいたるところに貼られていた(本書より)

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<著者紹介>

高崎隆治(たかさき・りゅうじ)

1925年、横浜市生まれ。戦時史研究家。法政大学文学部卒。在学中に学徒兵として戦争を体験する。2008年、ジャーナリズム研究の分野で第14回横浜文学賞を受賞。主な著書に『戦争文学通信』『従軍作家里村欣三の謎』『戦場の女流作家たち』『雑誌メディアの戦争責任』など。13年逝去。

<目次 のぞき見>

南京路の“銀ブラ”

一つのデマが消え、つぎのデマが生まれる

同じ電報を四通も打つ

「瞬間的な戦争嫌悪」

橋の下の屍体

※このウェブサイトの書評特集「アジアに行くならこれを読め!」は、アジアを横断的かつ深く掘り下げる、NNA倶楽部の会員向け月刊会報「アジア通」2017年1月号<http://www.nna.jp/lite/>から転載しています。毎月1回掲載。


関連国・地域: 日本
関連業種: 社会・事件

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