11月下旬に横浜・関内のホールで、約2時間のコンサートが開かれた。主催と出演者は大陸系の中華学校である横浜山手中華学校の卒業生たちで、日本の音楽大学でクラシックを学んだ華僑が中心だ。
出演者は26人で、年齢層は現役学生の20歳代から80歳代まで。西洋、日本、中国の楽曲を、ピアノやバイオリンの演奏、独唱、合唱で披露する。それぞれが学んだクラシックのほか、自分たちのルーツのある中国の歌曲に親しんでもらうのが目的だ。
会場には、学校の同窓生やその家族、友人など約200人が訪れた。
コンサートは1998年からほぼ毎年開かれ、今年で18回目。本来は、山手中華学校の創立100周年を記念した行事だったが、定例化した。
初回から出演し続け、現在は同校の中学部で音楽を教える女性の羅順英さんは、「私は、自分の祖母にあたる世代の女性たちに恩返しがしたかった」と話す。
1952年、人災により学校は分裂に追い込まれ、生徒たちは多数の同胞の家に分散して授業を受けていた時期があった。「今の山手中華学校があるのは、当時の中華街の女性が子供たちを守ってくれたから。中国の昔の曲で、そのおばあちゃんたちに懐かしんでもらいたかった」
その「おばあちゃん世代」の多くは既に亡くなってしまったが、コンサートはいつの間にか、世代を超えた卒業生や在校生の交流の場としてすっかり定着している。「コンサートの開催や運営はなかなか大変だけど、まもなく創立120周年も迎えるので、それに見合うようさらに頑張っていきたい」と羅さんは笑った。
※このウェブサイトの新特集「Aのある風景」は、アジアを横断的かつ深く掘り下げる、NNA倶楽部の会員向け月刊会報「アジア通」2016年12月号<http://www.nna.jp/lite/>から転載しています。毎月1回掲載。
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