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【アジアで会う】松岡康夫さん JPM農園ゼネラルマネジャー:第15回 命救った「奇跡の木」を栽培(フィリピン)

まつおか・やすお 1947年、神戸市生まれ。高校を卒業後、上京し、広告代理店に就職。36歳の時に都内で自ら広告代理店を立ち上げた。1989年にフィリピン出身のジーナラ夫人と結婚。2006年にマニラ首都圏に移住し、09年にジャパン―フィリピン・マルンガイ・エコファーム(JPM農園)を設立した。大のボクシング好きで、フィリピン人選手のマネジャーになり、来日を支援した経験を持つ。休日には19歳、14歳になる娘たちのために和食を作ることもある。

マニラ首都圏から車で1時間半ほど南下した南部タガログ地方ラグナ州。松岡さんがジーナラ夫人と共に運営するJPM農園は、ココナツの木が生い茂る山の中にある。面積12ヘクタールの同農園では、フィリピンの「国菜(ナショナル・ベジタブル)」に認定されている熱帯樹木モリンガ(比名マルンガイ、和名ワサビノキ)やパパイヤなどを栽培している。モリンガの作付面積は7ヘクタール以上で、約2万2,500本が植えられている。植樹から8カ月後に成人のへその高さまで幹を切り、初めて葉を刈り取る。乾期の2~5月は育ちが悪くなるが、毎月1本当たり約1キログラムの葉が収穫できる。

「モリンガは自然災害などで倒れても、根が土の中にある限り再生し、太陽に向かって伸びていく。生命力がとても強い植物なんですよ」――。農園に植えられたモリンガの生育具合を見ながら、こう説明する松岡さん。ビタミンやミネラル、必須アミノ酸などの栄養素を豊富に含むモリンガは「奇跡の木」とも呼ばれ、フィリピンではティノーラ(鶏肉のスープ)などの具材として食されている。フィリピンのほか、インドやアフリカ、南米などに生育する熱帯地方特有の植物だ。

■移住直後に肝硬変を発症

少年時代は野球に明け暮れ、健康を自負していた松岡さん。しかし、06年に異変が起きた。長年住んでいた東京を離れ、マニラ首都圏で家族と共に新生活を始めようとしていた矢先のことだった。

頬がこけ、全身に湿疹が広がり、現地の病院で受診したところ、重度の肝硬変と診断された。日本に帰国し、複数の病院で検査を受けるも、結果は同じ。フィリピンに戻り、近所に住む友人に事情を話したところ、彼が小さな葉と種子を持って自宅にやって来た。それがモリンガとの出会いだった。

モリンガを摂取するよう勧められるも、「こんな葉や種子が効くわけないだろうと思っていた」と当時を振り返る。だが、半信半疑で葉を乾燥させて作ったお茶と種子を食し続けたところ、見る見る体調が改善していった。後に夫人から聞いたところによると、フィリピンの医師から余命2~3年と宣告を受けていたという。

「関心を持ったことは徹底的に探求しなければ気が済まない性格」という松岡さん。モリンガの効用について知りたい――。探究心に火がついた。日本に住む知人らに協力を得て、独自に調査と研究を重ねた。その結果、血圧降下や内臓疾患の改善などに効果があることが分かり、07年に現在のJPM農園で栽培を開始した。

■「日の目を見る日が来る」

11年に農園内にモリンガの加工工場を開設。フルタイムの従業員15人を雇い、手作業でお茶やふりかけ、カプセルなどを生産している。日本にはフレークを輸出し、国内で殺菌・粉砕したパウダーを健康食品メーカーなどに販売するほか、OEM(相手先ブランドによる生産)も手掛けている。このほか、米国とドイツにも輸出しており、今年1月にドイツのベルリンで開催された世界最大級の食品・農業・園芸の国際見本市(International Green Week)に出展して以来、欧州からの問い合わせも増えているという。「モリンガは日本ではあまり知られていないが、日の目を見る日が来ると信じている」――。日本国内での商品化を促進するため、12年にフィリピン科学技術省の協力の下、4カ月にわたる急性経口毒性試験(LD50テスト)を受け、安全性を証明した。

週に3日は必ず農園に足を運び、種子油やキノコの菌床としての利用が見込まれる種子の殻、幹についての研究を進めている。夫人を発起人として立ち上げたフィリピン・モリンガリング財団(MPFI)のメンバーとして、モリンガの栽培を通じた農業の振興や雇用創出に向けても活動。松岡さんのモリンガに対する探究心と思いが燃え尽きることはない。(フィリピン編集部・本田香織)


関連国・地域: フィリピン日本米国欧州
関連業種: 農林・水産マクロ・統計・その他経済

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