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「爆買い」に透けて見える中国人の悩み:ジャーナリストの中島恵氏に聞く

春節(旧正月)の休暇を利用して日本にやってきた中国人が、高級家電から日用品までを大量に買い求める「爆買い」が話題になった。豊かになった中国人の旺盛な消費行動という側面ばかりが注目されたが、4月に刊行された『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』(中公新書ラクレ)によると、そこには世界2位の経済大国になりながら自国の暮らしに満足できていない中国人の不安が隠されているという。同書の著者で20年以上にわたり中国事情を追いかけているフリージャーナリストの中島恵氏に聞いた。

書名こそ「爆買い」で人気商品となった温水洗浄便座から借用したが、ウケを狙ってトレンドに合わせたわけではなく、むしろ長年の取材で見えてきたことを、今回の消費行動を解説する形で書いた。「トレンドの方が偶然、こちらに合わせてくれた」。

中島氏によると、中国人が日本で温水洗浄便座や日用品を買い求めるのは、暮らしが豊かになり、生活の細やかな部分にも気を配る余裕ができたから。それと同時に、今なお自国の製品を信用できていない表れでもあるという。

国内総生産(GDP)では日本を追い抜いた中国だが、サービスをはじめソフト面に目を転じると日本とはまだ大きな格差がある。だから中国人の間から「同じ中国製でも、日本で買えば信頼できる」という言葉が飛び出す。

サービス面の違いだけではない。日本では当たり前のことが、中国では時に命がけとなることも多い。例えば厳格な戸籍制度。北京で、結婚する前からマンションを買う地方出身の女性に出会った。「将来、子どもに北京戸籍を取らせるため」という。住む場所を自由に選べる日本人が戸籍を意識することはめったにないが、中国人にとっては、戸籍が進学や就職、結婚など人生の大事を決めるのだ。

日本人にとっては、時に濃密すぎるように見える中国人の人間関係も、「システムが整っておらず、誰かに頼らないと対処できないことが多いため」(中島氏)。システムや法律が整い、人間関係に依存しなくても解決手段のある日本とは、そもそも社会の構造が違うのだ。

一方で、同書では中国の変化も見据える。共働きが一般的な中国では子育てを親に委ねる女性が多いが、経済的に余裕ができて子育てに専念する女性も増えてきた。さらには結婚しない若者も増え、日本と同じく未婚化・晩婚化が進む可能性もあるという。中国人だから、日本人だから、という違いではなく、システムが変われば人も変わっていくのだ。

どんな背景があるにせよ、中国人が日本を旅行し、買い物を楽しんでくれるのは日中関係にとってチャンスと見ている。日本に来て、テレビなどで見るステレオタイプな日本人とは違うことが分かった中国人は多い。「思い込みではなく、まずはお互いが置かれている環境の違いから認識することが大切」だと訴えている。

<プロフィル>

なかじま・けい 1967年、山梨県生まれ。中学校の頃、さだまさし監督のドキュメンタリー映画「長江」を見て、中国に関心を持つ。新聞記者を経て、香港中文大学に留学。96年からフリージャーナリストとして活動。新著『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』は、中国人の日本観をテーマとしたものとしては3冊目となる。

<全国>


関連国・地域: 中国-全国日本
関連業種: 小売り・卸売り観光メディア・娯楽社会・事件

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