バーク農相はこのほど、昨年10月に公表された有機栽培(オーガニック)の全国規格「AS6000」の下で認証の統一を図る考えを示した。このため、統一規格の策定・管理を行う政府認定機関スタンダード・オーストラリア(SA)に3万3,000豪ドルの予算を新たに振り向ける。ただ、現状では自己責任となっているオーガニックの表示に、どこまで拘束力を持たせることができるか疑問が残る。
バーク農相は「唯一の全国的なオーガニック基準の採用は、信頼性を飛躍的に高めることにつながる」として、生産者や認証者、小売業者などオーガニックの関連業界に全国基準の採用を呼びかけた。SAを引き続き支援することで、業界内の認証統一や規格の内容更新を促進するとしている。
AS6000は「オーガニック」または「バイオダイナミック」と表示する農業生産者や食品製造業者などに対して、人工肥料や化学薬品を使用しない農業生産の方法などについて細かい基準を示したもの。それまで輸出食品向けには豪検疫検査局(AQIS)が定めた統一規格があったが、全国基準の制定はこれが初めてだった。
豪州でも食の安全性や健康に対する意識の高まりを背景に、オーガニック食品の消費が拡大している。例えばシドニーの小売店で販売されているトマト。オーガニックと非オーガニックの価格を比較すると、2~3倍もの開きがあるが、富裕層を中心に一定の需要がある。
ただ、露天市や小規模な青果店などでは認証の根拠が明らかにあいまいなケースも少なくない。偽装表示そのものは連邦取引慣行法に違反する行為であり、豪消費者競争委員会(ACCC)の審査対象となる。裁判でもAS6000の規定は有効な証拠として採用されるものの、その表示は生産者や製造業者の自己責任に委ねられている。
また、国内には既に、生産者団体バイオロジカル・ファーマーズ・オーストラリア(BFA)が認定するオーストラリアン・オーガニック・スタンダード(BFA)など、様々な規格が共存。AS6000はそれらを廃止して置き換えるのではなく、補完するという位置付けだ。こうしたことから、政府や業界は不正に対してこれといった有効な対策を打ち出せていない。【7月16日付NNA豪州農業ニュースより】
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