2025年のタイは、3月のミャンマー大地震、5月以降のカンボジアとの国境紛争とそれが発端となったペートンタン政権からアヌティン政権への交代、11月の南部大洪水といった国を揺るがす出来事が次々と起きた。その結果、25年の経済成長率は年初に見込まれていた2.8%から下方修正され2%程度に減速するとみられている。トランプ米政権の「相互関税」の税率が当初の36%から19%に引き下げられたことや、関税発動前の駆け込み輸出で一時的に経済が押し上げられたことは好材料だった。しかし、対米輸出は需要の先食いによる反動減が既に一部の品目で始まっただけでなく、12月27日に停戦合意したカンボジアとの国境紛争が再び激化すれば停戦を仲介してきたトランプ氏が関税の引き上げを持ち出す可能性もある。紛争・災害・政局の三重苦が引き起こした先行きの不透明感や来年の低成長予測を払拭できるかどうかは、アヌティン首相が早期の下院解散に打って出たことで来年2月に実施される総選挙の行方次第となりそうだ。