この時期になると、ある青年のことを思い出す。短期契約の労働者として食品工場を転々としていた彼。毎年11月に入ると、クリスマスに向けて生産を拡大する食肉加工工場に勤務していた。最低賃金に重労働、不規則なシフト――。水仕事と加熱機器の熱で手を傷めながらも弱音一つ吐かず、妻と幼い子どもたちのために働き続けていた。
今年もまた同じ食肉加工工場で働いているのだろうかと思っていたところ、1通の電子メールが届いた。添付された写真には、白銀の世界で微笑む彼の姿があった。近年フィリピン人労働者の受け入れを拡大しているカナダのマニトバ州で就労機会を得たという。
「いつか海外に出て、家族に楽をさせてあげたい」。彼が常々口にしていた夢は、クリスマスを前に実現した。遠い地でも寒さに負けず、家族のことを思いながら黙々と仕事に励んでいることだろう。(香)
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