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【アジアで会う】安丸宗作さん 武士代表取締役 第410回 和菓子で伝える伝統文化(インドネシア)

やすまる・しゅうさく 1980年10月、福岡県久留米市生まれ。九州大学工学部機械航空工学科を卒業。外資系コンサルティングファームで4年間の勤務後、日本の最新と伝統の技術を生かしたコンサルティング事業などを手がける武士(京都市)を起業した。インドネシアのバリ島で2017年に和菓子店「和がしの十色(といろ)」をオープン。18年から首都ジャカルタに和食テイクアウト店「おにぎり十色」を営業する。

ジャカルタの「おにぎり十色」店舗前で(NNA撮影)

ジャカルタの「おにぎり十色」店舗前で(NNA撮影)

バリ島有数の観光地クタ地区で営業する和菓子店で、オープン当時から根強い人気の看板商品がある。店から徒歩圏にあるクタビーチに沈む夕日を表現した「バリサンセット」と、スカイブルーの海面にきらめく波しぶきを描いた「ニューウエーブ!」。夕日を眺めながらバリコーヒーの香りに包まれつつ和菓子を味わう、ゆったりとした時間や、甘い水色のようかんに海水をイメージしてほんの少し塩味をきかせ、「いい波が来た!」と心躍らせるサーファーの気持ちを表現した。

和菓子を通じて日本の文化を伝えたい、「和」を生かした豊かなライフスタイルを提案したい、という思いから海外進出を決めた。進出先をバリ島に決める前には、欧米、中国、ベトナム、タイ、フィリピンなど数々の国を回った。

決め手となった一つが、バリ島はヒンズー教をはじめとする文化が奥深いこと。バリ・ヒンズーの総本山ブサキ寺院を擁する神聖なアグン山や、地元の祭や伝統行事、季節をモチーフにした和菓子をつくることができると考えた。大事にしていることが「和菓子の名前やモチーフにストーリーを表現できること」。冒頭の和菓子二つには、そんな思いが込められている。

■素材のこだわり随所に

日本でも和菓子店は、神社や寺といった法人客の固定客を確保した上で小売りも手がけることがあるが、バリ島の店舗もレストランやホテル向けが主流だ。バリ出店の翌年に進出したジャカルタでは和菓子ではなく、おにぎりや総菜、弁当を販売している。

ジャカルタでは和菓子の販売に向けて準備をしていた際に新型コロナウイルス禍に見舞われた。常時の販売は先送りになったが、不定期におはぎや水信玄餅を受注生産で売り始め、9月初旬にはくず粉を使ったあんこ入り抹茶味や、フルーツ味のアイスキャンディーを発売した。

四季がない常夏のジャカルタで、和菓子のテーマになるような季節感を表現できるのだろうか? そう尋ねてみると「四季はないが雨期と乾期の変化はある。独立記念日や、イスラム教の断食月(ラマダン)など、季節の雰囲気を描ける題材はいくらでもある」のだという。

素材にはこだわっている。あんこは京都の製餡所に発注、おはぎには、水に浸し蒸したもち米を干して粗めにひいた「道明寺粉」だけを使う。おにぎりの「のり」も厳選している。「毎日食べて元気になれる食事を届けたい」との考えから、その日に販売する数量だけ作って売り切る。

和がしの十色の看板商品「ニューウエーブ!」(左)と「バリサンセット」(本人提供)

和がしの十色の看板商品「ニューウエーブ!」(左)と「バリサンセット」(本人提供)

■日本の良さを「逆輸入」

人口が多く、インドネシアは巨大市場を抱えるという点だけでなく、多様な文化を持つ日本とどことなく似ていると感じている。

若い人々が成長を支えるインドネシアをはじめ海外で良さが認められた日本発のもの、はやっているもの、発展したものを日本に「逆輸入」して、日本の若者たちにその良さをあらためて認識してもらうことで、日本の発展につなげられないかと考える。日本の伝統文化、「和」の世界が、限られた人の趣味や教養だけにとどまってしまうのは、非常にもったいないとの考えから「武士」を設立した。

まずは「食」という観点から、インドネシアで新しいライフスタイルを提案し、そこから得られた経験や知見を日本へ伝えたい。インドネシアでの事業を軌道に乗せた安丸さんの視線の先には、そんな強い思いがある。(インドネシア編集部・山本麻紀子)


関連国・地域: インドネシア日本
関連業種: 食品・飲料サービス

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