新型コロナウイルス禍で大きく伸びた市場の一つが「エドテック（ＩＴを活用した教育サービス）」だ。教育熱が高いと言われるベトナムでも、厳格なロックダウン（…

ベトナム

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新型コロナ流行に伴うロックダウン期間中は国内ほぼ全ての学校で対面授業が禁止になり、オンライン授業に移行した。子どもや親が、否が応でもオンライン教育に触れざるを得ない状況が生まれたことは、エドテック企業にとって強い追い風になった。
ベトナムでは今年から対面授業が相次ぎ再開した。しかし、日系教育関係者によると、一部生徒からは「オンライン教育のほうが楽で便利」という声も聞かれるという。
ベトナムを中心にオンライン教育事業を手掛ける「マナビー（Manabie、本社シンガポール）」の創業者で最高経営責任者（ＣＥＯ）の本間拓也氏は「オンライン教育を一回経験してみることで、案外悪くないと感じる人が多かったのではないか」と分析。塾など民間の教育現場ではデジタル・オンライン化がさらに進んでいくとの見方を示した。
同社はコロナ禍が始まった2020年からベトナム事業を開始したが、オンライン学習アプリの利用者は当初想定よりも伸びが早かった。現在のアプリ登録者数は50万人余り、このうち有料サービスの利用者数は１万人余りとなっている。
■地場エドテック続々、投資が集中
韓国系投資ファンド、ネクストランスよると、21年のベトナムのオンライン教育の市場規模は20億8,000万米ドル（約2,843億円）で、23年には30億米ドルに拡大する見込みだ。19～23年までの年平均成長率は20.2％と見込まれている。
エドテック新興企業への新規投資も伸びており、21年には11社が計１億840万米ドルを調達し、同分野での過去最高額を更新した。新興企業への分野別投資割合でも、フィンテック（ＩＴを活用した金融サービス）、電子商取引（ＥＣ）に次いで、エドテックへの投資が３番目に多かった。市場拡大に対する投資家の期待は固い。
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昨年では、小学校から高校までの外国語教室や教育技術ソリューション事業などを手掛ける「Ｅクエスト教育グループ」が１億米ドル、オンライン教育の「コーダースクール（CoderSchool）」が260万米ドル、「クレバイ（Clevai）」が210万米ドル――などの資金調達に成功した。
急速に伸びているベトナムのオンライン教育市場について、本間氏は「４～５年前ぐらいに中国で、３～４年前にインドで、２～３年前にインドネシアで起こったことが、今ベトナムで起きている」と指摘する。子どもの数が多く、経済市場自体が伸びている国では、優秀な人材がエドテック企業を立ち上げて、そこに資金が集まるというこれまで他国で見られてきた現象だという。
■オンラインだけの限界、変わる優位性
オンライン教育の浸透が進み、新興各社の競争が過熱する中で共通して起こっている課題が、「『ただのオンライン』だけでは限界がある」という点だ。オンライン教育を手掛ける多くの企業は初期段階として一般的に、授業の動画コンテンツを作成するなどしてアクセスを広げることに注力してきた。
しかし、「少し前はオンラインで授業動画を見てもらえれば儲かる時代だったが、今はそれだけでは不十分になった」と本間氏は言う。オンライン教育の浸透が進む中で、ただ授業動画を配信するだけにはとどまらない、リアル（オフライン）と同等の教育の質が求められるようになっており、「競争の優位性はオンラインとリアルの融合に移っていくだろう」との見方を示した。
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マナビーは、南部ホーチミン市で５カ所の自社運営塾も手掛けており、計1,000人以上が通っている。１つの教室で行われている授業を他教室でも配信する、快適な学習環境を整えた自習室を用意して生徒には自前のスマートフォンなどで授業を受けてもらうといった、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド授業を展開する。授業のライブ配信や自習室での予習・復習の時間を設けるといった学習のペースメーキングも行うことで質を高め、他社と差別化を図っている。
オンライン教育がさらに伸びるのは間違いないが、「価値を高めるためにはリアルの教室は絶対に必要になる」と、両方を組み合わせる重要性を強調。今後はマナビーの教育システムやオペレーションモデルを確立させて、塾を運営している地場企業とフランチャイズ（ＦＣ）契約を結んで、足場を広げることを視野に入れている。

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