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メタバース活用の機運高まる 鴻海、仮想展覧の新興企業と提携

台湾でメタバース(仮想空間)活用の機運が高まっている。EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手の鴻海精密工業は台湾のベンチャー企業と連携し、電気自動車(EV)の試作車発表にメタバースを活用。会場に足を運ばなくてもタブレット端末などを通じて、試作車の外観などを見えるようにした。専門家からは、大手とメタバースに強いベンチャー企業などによるこうした提携が、今後さらに重要になるとの見方が出ている。【安藤千晶】

XRスペースの全球業務行銷・営運副総経理の鄭礼スウ氏(左)とPartyOn産品経理の黄継養氏=3月、台北(NNA撮影)

XRスペースの全球業務行銷・営運副総経理の鄭礼スウ氏(左)とPartyOn産品経理の黄継養氏=3月、台北(NNA撮影)

「鴻海科技日にようこそ」「来場してくれてありがとう」。タブレット端末の画面を通じて中国語でこう呼びかけてくるのは、鴻海創業者、郭台銘氏のアバター(分身)だ。その隣には劉揚偉董事長のアバターもいる。

鴻海が昨年10月に台北市の南港展覧館で開いた開発技術の説明会「鴻海科技日」。リアルの会場だけでなく、メタバース事業を手がける台湾企業のXRスペースのバーチャル展覧プラットフォーム「GOXR」を活用し、バーチャルでも説明会を「開催」した。

スマートフォンかタブレットにGOXRのアプリをダウンロードすれば、時間や場所にとらわれず、バーチャルの説明会を体験できる。アプリ上には試作車の展示ルームなど複数の「空間」があり、ロビーでは郭氏が出迎えてくれるほか、劉董事長のアバターが説明会の内容や見どころなどを紹介してくれる。

XRスペースによると、両氏の過去のスピーチや記者会見で話した内容を機械学習させ、肉声を再現させたという。同社の担当者はアバターを通じて企業イメージを作り上げることなどにつながると説明する。

アプリの画面で試作車の展示ルームに進むと、リアルの会場で公開されたスポーツタイプ多目的車(SUV)とセダンのEV、EVバスの3モデルを360度から見ることが可能。開発プロセスなどを紹介した映像も視聴できる。EVの動力システムの展示で部品ごとに分解した様子も見られるのは仮想空間ならではと言える。

鴻海の担当者はXRスペースのメタバース運用について、「新型コロナウイルスの影響を受けて仮想空間での展示を決めた。同社と提携したのは(台湾のメタバース分野で)有名だと言えるため」とコメントした。

鴻海は今年2月、XRスペースと提携の覚書を締結したと発表した。第1段階として1,500万米ドル(約19億3,000万円)を投じ、XRスペースの株式9.09~9.68%を取得。経済日報によると、劉董事長はEVとメタバースに関連した事業を重視していると明らかにしている。

鴻海の創業者の郭台銘氏と劉揚偉董事長のアバター(XRスペース提供)

鴻海の創業者の郭台銘氏と劉揚偉董事長のアバター(XRスペース提供)

仮想空間の鴻海科技日ではアバターを操作して試作車などを見られる(XRスペース提供)

仮想空間の鴻海科技日ではアバターを操作して試作車などを見られる(XRスペース提供)

■コロナ拡大が契機に

XRスペースは2017年の設立。台湾スマートフォン大手、宏達国際電子(HTC)の元執行長の周永明氏が立ち上げた。GOXRのほかに、音楽・娯楽プラットフォーム「PartyOn」、仮想現実(VR)用のヘッドマウントディスプレーを手がける。

XRスペースの全球業務行銷・営運副総経理の鄭礼スウ氏(スウ=山かんむりに松)は、新型コロナウイルスのまん延後に展示会の延期や中止が相次ぎ、オンラインや遠隔サービスといった概念が定着したことが、メタバースが注目される契機となったと振り返る。

今後の目標は展示会や個人のアート作品の展示、企業の商品紹介など、企業や利用者がメタバースを通じた空間作りを気軽にできるようにすることだ。「世界的にメタバース(の投資)は始まったばかりで、これから市場を広げていけると考える。早ければ向こう3~5年でスマホを通じた新しい形の展示が成長するチャンスがあると思う」と期待を込めた。

台湾政府系研究機関、工業技術研究院(ITRI、工研院)産業科技国際策略発展所(産科国際所)のシニア研究員、林研詩氏によると、台湾では初期段階として商業、工業、医療などの分野でメタバースが活用されている。

林氏は今後の展望として「台湾は多くのベンチャー企業がメタバース分野の開発に取り組んでおり、大手企業とメタバースに強いベンチャーが提携し、産業システムをより完全なものにする重要性が高まっている」とコメントした。

<メモ>

PartyOnはカラオケやコンサートといった娯楽向けのプラットフォーム。ヘッドセットを装着すれば、アバターを操作して遠くにいる人と仮想空間に集まり、参加者同士で交流できるほか、カラオケなどを楽しむこともできる。

PartyOn産品経理の黄継養氏によると、XRスペースは現在、日本企業と提携に向けて話し合いを進めている。日本はアニメ、バーチャルユーチューバー(Vチューバー)、コンサート、芸術・クリエーティブといった市場が成熟しており、商機が大きいとの見方だ。


関連国・地域: 台湾
関連業種: 自動車・二輪車IT・通信サービスメディア・娯楽

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