アジアで学ぶ日本人の小中学生の多くが、現地の日本人学校に通っている。前回(1月24日付)の寄稿で、表にまとめた分類でいえばB(非英語圏で日本人学校に通っている、現地語、英語力は会話レベル)に当たる。今回は、NNA読者としても関心が高いであろうBの進路を分析する。
▽例:中国、韓国、タイ、インドネシア、ベトナムなどの日本人学校に通学している小学生、中学生
▽身に付けている学力:日本語で学年相当の日本語力と学力が備わっている。
▽英語力:会話レベル
▽現地語:生活会話レベル
■定番進路
帰国後に国公私立小学校・中学校に入学し、英語力は基礎から学び、現地語は帰国後に忘却する。
駐在していた国・地域の現地語と体験を強みにする進学先も検討できる。関東国際高校は、中国語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語などのコースがある。筑波大学附属坂戸高等学校は、インドネシア語、桜美林高校は、韓国語と中国語、洗足学園中学校は、中国語、渋谷教育学園幕張中学校は中国語を選択できる。
■新しい進路
東京中華学校、横浜中華学校も日本人の受け入れをしている。中華学国は、年度により日本人を受け入れる枠が変わるため、駐在中に入学担当に帰国後の入学希望を相談した方が良い。
難易度はやや高いが、インターナショナルスクールの一部は英語・日本語・中国語のトリリンガルを導入している。英語力があれば、中国語を学べるインターナショナルスクールも検討に入れたい。
東京キャピタルインターナショナルスクール(2022年開校予定)、ハロウ安比校(22年開校予定)、ラグビー日本校(23年開校予定)、マルバーンカレッジ(23年開校予定)などがトリリンガルのスクール計画を進めている。
非英語圏の駐在国・地域からの帰国生が現地語を得意として伸ばすと言語の背景にある文化の比較ができる。その違いから課題を発見し、解決していく思考を伸ばす学びを選ぶことができる。
国内外を旅しながらSDGs的な地域課題を発見するインフィニティ国際学院(中等部、高等部)は、帰国生にとって駐在国・地域と日本の地域を比較する力と課題解決力と実践力の育成が特徴だ。
N高、S高も帰国生が在籍しており、海外の日本人学校から帰国した生徒が連携している。
■帰国生入試
国立、公立、私立の中学校・高校受験は、帰国生枠を受験できる。非英語圏の日本人学校に在籍していた場合、英語圏の現地校、インターナショナルスクールより不利である。そのため、ほぼ一般受験と同じ量と時間の受験対策が必要になる。
■難度が高いケース
学年相当の英語力がない状態で帰国後にインターナショナルスクールに入学する場合、入学後に子供の英語力が不足し困るケースが多い。
次の駐在が予想され、現地に日本人学校があるかどうか分からない場合は、英語力を高めてインターナショナルスクールを選べるように準備することも必要だ。
■帰国後のケア
小中学生として過ごすアジアの数年間は、人格形成の時期と重なる。ここで感じた文化や道徳感に、帰国後も触れていくことで、子供が自分の中にアジアの多様な価値観があることに気付けるようにしたい。
中国、台湾、韓国は、道教・儒教の国・地域である。旧正月などを日本の中華街で体験し、多様な文化が混在していることを実感させたい。
タイ、インドネシア、ベトナムの行事文化は、大使館が定期的にイベントを開催しており(新型コロナウイルス感染拡大の影響はあるものの)、食や雑貨などを通じて現地の体験を思い出せる。
アジアで身に着けた文化や価値観は自分の個性であり、多様性をすでに経験して持っていることが強みだと親子で認識することで、反抗期の波も穏やかになる。
次回は、Cの事例を分析する。
<筆者プロフィル>
国際教育評論家:村田学
米国カリフォルニア州トーランス生まれ。幼稚園までアメリカで過ごし、小学生になる前に帰国。千葉、埼玉、東京と関東周辺で育つ。英語を忘れた帰国生として日本の小中高を公立校で学び、大学で会計学を学ぶ。専門学校の事務などを経て、インターナショナルスクール専門メディアのインターナショナルスクールタイムズを創刊。その後、プリスクール経営、国際バカロレア候補校の幼小中のインターナショナルスクールを経営。国際バカロレアの教員研修を修了。現在、教育評論家として活動している。
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