米政府は26日、ミャンマーでの事業が違法になるリスクがあると企業に警告する勧告書を発表した。「世界の経済界は、クーデター以降の(国軍による)汚職や不正な金融活動、深刻な人権侵害を助長しないようにする責任がある」と指摘、企業側に厳しい姿勢を求めている。
米財務省が26日、同国の国務省や国土安全保障省、米国通商代表部などとともに声明を出した。
財務省は勧告で、2021年2月に国軍が起こしたクーデターで、ミャンマーの経済や事業環境は崩壊し、国の方向性が大きく変化したと指摘。国軍による資源の独占と透明性の欠如により汚職が横行しているとした。汚職や不正資金のリスクが最も懸念される事業体や部門として、国軍の統制下にある国営企業のほか、宝石・貴金属、不動産・建設分野、武器・軍事機器・軍事関連活動を挙げている。
国軍と関連のある事業やサプライチェーンに係わる可能性のある企業や個人が、適切なデューデリジェンス(資産査定)を実施せずにミャンマー国内で事業を行えば、重大なリスクを負うことになるとも警告。具体的には、米国の資金洗浄防止に関する法律や既に発動している制裁措置への違反など法的なリスク、財政リスク、企業の評判リスクがあると指摘した。
その上で、ミャンマー事業に携わる企業や金融機関に対しては、国軍の姿勢がもたらすリスクを再評価し、軽減するよう勧告した。
民主派の「挙国一致政府(NUG)」や人権団体は、ミャンマーで事業を行う企業の収益などが、国軍を間接的、直接的に利するとして批判している。今月に入っては、南部で天然ガス田開発を進めているフランスのトタルエナジーズ(旧トタル)が人権問題を理由に撤退を表明し、開発パートナーである米シェブロンも離脱に向けた検討に入った。
ロイター通信は、米政府の勧告はトタルエナジーズとシェブロンの投資引き揚げの動きを受け、出されたものだと報じている。
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