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グリーン電力証書、進む普及 東南アでもCO2削減の選択肢に

タイで「脱炭素」が官民共通の課題となる中、国内ではグリーン電力証書の制度整備や活用が進んでいる。企業は証書を取得することで、自社で再生可能エネルギーを利用した発電設備を持っていなくても、二酸化炭素(CO2)削減が証明されるなど、利点は大きい。東南アジア各国でも活用が進んでおり、企業活動を進める上で同制度が重要性を増していく可能性がある。

タイ国トヨタ自動車(TMT)は2020年10月、タイで初めて再生可能エネルギー証書を取得した。スパタナポン副首相兼エネルギー相(右)が、TMTのニンナート会長(左)に記念トロフィーを手渡した=タイ・バンコク(NNA撮影)

タイ国トヨタ自動車(TMT)は2020年10月、タイで初めて再生可能エネルギー証書を取得した。スパタナポン副首相兼エネルギー相(右)が、TMTのニンナート会長(左)に記念トロフィーを手渡した=タイ・バンコク(NNA撮影)

タイ政府は2019年、37年までの電力開発計画(PDP)を承認した。電源構成比率のうち、天然ガスを53%、石炭を12%、再生可能エネルギーを20%などに引き上げる目標を掲げた。今年8月には、CO2排出量を65~70年に実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を達成することを目指す計画の大枠を承認した。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、タイの電源に占める再生可能エネルギーの比率は、現在10%。太陽光発電は計画の半分ほど建設されているほか、風力発電は計画の20%程度が建設されているという。水力発電は建設計画には含まれていない。周辺国との比較では、インドネシアの再生可能エネの比率は10%、ベトナムとシンガポールが5%、マレーシアが2%、フィリピンが14%となっている。

「脱炭素」の潮流にあって東南アジア各国が活用を進めているのが、グリーン電力証書だ。グリーン電力証書は「再生可能エネルギー証書(REC)」とも呼ばれ、再生可能エネにより発電された電力を調達したことを証明する。再生エネで発電された電力の付加価値を証券化したもので、購入すると再生エネを使用しているとみなされる仕組み。通常の電力より高額となるが、上乗せされた付加価値の分の対価は、再生エネの発電事業者に支払われ、再投資につながることが期待される。企業は再生エネ証書を取得することで、自社で再生可能エネルギーを利用した発電設備を持っていなくても、CO2削減が証明される。

■タイではトヨタが取得第1号

東南アジアではインドネシアやフィリピン、タイ、マレーシア、シンガポールで国際基準の証書が発行されており、ベトナムも制度開始に向けた準備を進めている。タイでは20年からタイ発電公団(EGAT)が管轄しており、同年4月にタイ国トヨタ自動車(TMT)が国内で初めて調達した。TMTのほかにもタイ国営石油PTTがRECを取得したとされ、一部の大企業を中心に普及が始まっている。

複数ある再生エネ証書のうち、タイではオランダの非政府組織(NGO)「I―RECスタンダード・ファンデーション」が世界的に認証を進めている「I―REC」を導入している。三菱UFJリサーチ&コンサルティングのタイ現地法人の池上一希社長は「東南アジアでは、シンガポールやベトナムなど域内の主要国もI―REC規格を導入している」と説明する。欧米での規格は発電方法について追跡システムの構築が義務付けられているのに対し、I―RECでは同様の義務はない点が大きな違いとなる。

タイでの再生エネ証書の購入窓口はEGATだが、「20年11月にPTTの傘下企業がREC販売のワンストップサービスを開始するなど、証書の導入に関するコンサルティングを手掛ける企業もある」(池上氏)。

■タイ企業のESG、高い国際的評価

タイ政府は今年1月、経済成長と環境対策を同時に進める「BCG(バイオ・循環型・グリーン)経済」を21~26年の国家目標として取り組む方針を発表した。国連が30年までに定めた持続可能な開発目標(SDGs)は国策として位置付けられており、大企業を中心に民間の関心も高い。

格付け大手スタンダード&プアーズ(S&P)が環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点も含めて企業を評価する報告書「サステナビリティーイヤーブック」の21年度版では、タイ企業11社が最高評価の「グローバル・ゴールド・クラス」に選出された。ゴールドに次ぐ「シルバー」と「ブロンズ」を合わせた選出数は世界で280社あり、このうちタイ企業は29社だった。

タイでゴールドに選出された企業数は、米国の9社や日本の6社を上回り、世界最多。池上氏は「11社のうち5社は石油産業で、そのほかにも鉱業や建材メーカーなど、環境負荷が大きい業界から選出されており、SDGsに積極的に取り組んでいる」とし、「タイ企業はベトナムやインドネシアなど、海外での投資分散を進めているため、国際競争力を維持するためにもSDGsへの取り組みは無視できないものになっている」と指摘する。PTTは先に、インドネシアで開発予定だった鉱山事業から撤退の表明をするなど、再生可能エネルギーへの転換が世界的な潮流となる中、事業のポートフォリオ組み替えに着手している。

金融業界による関連サービスも、整備が進む。タイの20年のESG債発行残高は864億バーツ(約2,960億円)。「バンコク銀行やアユタヤ銀行などが先行しこの分野への取り組みがなされており、ESGを推進する企業を積極的に支えている」(同)。タイ政府は炭素税など環境に起因する税金や、各種のインセンティブを検討しており、SDGsに取り組むメリットが大きくなっている。

※関連記事:東南アの環境政策とグリーン電力証書制度(表)


関連国・地域: タイベトナムマレーシアシンガポールインドネシアフィリピン日本
関連業種: 電機電力・ガス・水道

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