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【アジアで会う】山内牧子さん 「アムリタガーデン」オーナー 第342回 古民家カフェがつなぐ人の縁(タイ)

やまうち・まきこ 北海道恵庭市出身。北海道教育大学養護教諭養成課程修了後、札幌市内の広告代理店に就職。25歳で独立し、中小企業の経営・販売促進を支援する事業を始める。仕事で札幌市と東京を飛び回る多忙な日々が続いた結果、体調を崩してしまい事業をやめることを決断。アロマテラピーや薬膳料理、ヨガなど心身のいやしにつながることを学び始める。タイ人の夫、6歳の息子、犬3匹と暮らす。

山内さんは、タイ北部の古都チェンマイでカフェ「アムリタガーデン」を経営している。古民家を改装した店で、オーガニック食材を使った健康的な食事が人気だ。山内さんがチェンマイを初めて訪れたのは2008年。25歳で始めた事業をあきらめた後、心身のいやしに関心を持ち、特にヨガ哲学に傾倒した。インドや米ニューヨークなどで学びを深める中、ヨガの学びの延長として瞑想(めいそう)を実践するために訪れたのがチェンマイの寺だった。1カ月にわたる瞑想を通じて「フラットな自分と生き方を見つけた」という。そのまま帰国することなく、チェンマイでの暮らしを始めた。

■夫と二人三脚で古民家カフェを開業

やがてタイ人男性と結婚。独立心が旺盛な山内さんは、チェンマイで「人が集まれる居心地の良い場所」を作りたいと考えた。最初はどのようなビジネスをするかは決めていなかったが、4年ほどかけて素朴でぬくもりを感じられる古民家を見つけた。山内さん自身は当時、ヨガに関係するビジネスを始めたかったが、バリスタになりたいという夫の希望に従い、古民家を改装したカフェを開くことにした。

当初は、コーヒーのみの店だったが、客の希望に応える形で変化してきた。まず始めたのがマンゴーチーズケーキの提供だ。チェンマイ郊外のカフェが販売する隠れた人気スイーツを新メニューとして仕入れた。甘さは控えめで甘みと酸味の絶妙なバランスがたちまち好評を得た。さらに軽食の提供を希望する声に応えて、玄米菜食のメニューを始めた。当時のチェンマイには、街中で粗食が食べられる場所がなく、豪華な食事ではなく玄米とみそ汁のような素朴な食事ができるカフェにしたいと考えたという。

■コロナ禍でつながりの大切さ再認識

アムリタガーデンはカフェのほかに宿泊施設も運営しているが、外国人観光客の激減により、現在はいずれも営業休止中。国際線の運航が再開し、海外からの旅行者が回復するまでしばし充電中だ。

ロックダウン(都市封鎖)で多くの時間を自宅で過ごす中、「これまで無我夢中で走り続けてきて、周りの人々に感謝の気持ちを表すことを後回しにしてきたことに気付いた」と話す。「感謝や人とのつながり、縁についてしみじみと考える時間だった」という。そこでこれまで世話になった人々に感謝の手紙や手作りのパーソナルケア商品などを贈ったりした。もともと「研究が好きな性質」という山内さん。コロナ禍で疲弊している人々にどのようなものが喜ばれるか深く考えたという。

また、タイ国内の友人・知人、タイが好きなのに来ることのできない日本人、チェンマイの雑貨の作り手などをつなぐ「the チェンマイマーケット」というオンライン企画も始めた。以前からあった店のホームページにカート機能を追加し、国際決済や世界中に発送できる設定などを行った。ここでも自宅での有り余る時間に取り組んだことが奏功し、利用者がより使いやすいホームページに仕上がったと笑う。オンライン販売では、チェンマイで100年以上の伝統を持つワロロット市場などで売られている雑貨や、北部のストリートチルドレン育成支援団体の手作りの品をメインに取り扱っている。

観光客の激減でカフェなどの営業が立ち行かない現在、「通信販売事業が新たな道を拓いてくれている」と感慨深げだ。

■「マイペンライ」な生き方に魅せられて

アムリタはサンスクリット語で「甘露水」の意味だそう。「アムリタは生命の源であり、家族や祖先、自然、文化などさまざまな想いを込めて、これからも皆さんの近くの存在であり続けたい」(山内さん)。アムリタガーデンで提供する食事は、無添加でできるだけシンプル、かつ毎日でも食べられるものが中心。そうした考え方は山内さんのビジネスモデルにも通じる。「アムリタガーデンは今後、ビーガン(完全採食主義者)カフェではなく、『人と人との縁をつなぐスペース』となっていくのかもしれない」と山内さん。「そう考えるとワクワクがとまらない」と期待に胸を膨らませる。

最後にタイの魅力について尋ねると、「『マイペンライ(タイ語で大丈夫、問題ないの意)』の精神のおおらかなところ」を第一に挙げた。特にチェンマイは「都会と自然(田舎)」「近代と昔(レトロ)」が共存している感じが魅力という。休日は郊外に自然を求めてドライブしたり、日本の中古品を扱う店めぐりなどをして、日本では得られなかったスローライフを満喫している。(タイ版編集・須賀毅)


関連国・地域: 韓国タイ日本
関連業種: サービス観光社会・事件

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